CBRNE事態における公衆衛生対応に関する研究

文献情報

文献番号
201330024A
報告書区分
総括
研究課題名
CBRNE事態における公衆衛生対応に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大友 康裕(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 救急災害分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部・救命救急センター)
  • 明石 真言(独立行政法人放射線医学総合研究所)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所)
  • 黒木 由美子(財団法人日本中毒情報センターつくば中毒110番)
  • 本間 正人(鳥取大学医学部救急災害医学)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院救命救急センター)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 井上 潤一(山梨県立中央病院救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班はCBRNE事態に対する急性期医療に関して実効性ある体制整備に寄与することを目的とする。
現在のわが国におけるCBRNE事態対応に関して、新たな未解決の課題が残る。テロ現場において個人防護・ゾーンニング・除染を実施すると、病院への搬送開始は、発生後1時間以上となる。地下鉄サリン事件では社会復帰となった症例の救命すら困難な現状である。とうてい国民の理解を得ることはできない。解決法はテロ現場から早期に医療を開始することである。しかしテロ現場における早期医療開始には、次のような課題がある。
1. 現場派遣特殊医療チームの体制整備が求められる。DMATは現状ではテロ現場へは出動しない。
2.消防および警察の現場対応体制が、十分整備されているとは言えない。その結果、消防・警察の対応にアドオンされるべき現場派遣医療チームの対応体制について整理することができない。
 本研究班では、CBRNE事態に対する既存の災害対策の枠組みや手法を踏まえ、現状の活動計画における問題点を明らかにし、オペレーション・リサーチの手法を取り入れ、定量的な評価を行い、その結果を基に、各機関における対応体制の最適化を目指す。
研究方法
3ヵ年計画の実施にあたり、各研究分担者の担当を以下の通り割り当てた。
尚、本研究は、実際の症例を扱うことも患者データを解析することも実施していないため、倫理面に関して配慮を要する研究には該当しない。
(1)救急医療機関のCBRNEテロ・災害対応における課題抽出と具体的解決策の提示(小井土雄一研究分担者)
(2) CBRNE-DMAT体制整備に向けた研究(大友康裕研究代表者、阿南英明研究分担者)
 「CBRNE-DMAT現場活動マニュアル」を踏まえ、CBRNE -DMATの要請方法、補償、資機材整備、研修の実施に関して、整理し、提言として発信する。
(3) CBRNEテロ発生時、現関係機関の連携における医療のあり方(森野一真研究分担者)
・地方公共団体・保健所等;地方公共団体等の行政レベルでの対応は、未だ原因物質毎の縦割り対応のままである。テロ発生時の地方公共団体の対応のあり方に関して、研究班で検討し、提言として発信する。
(4)爆発物によるテロ(Eテロ)に対する医療のあり方(井上潤一研究分担者)
  テロの手段として最も蓋然性が高い爆発物によるテロ(Eテロ)に対する医療対応に関して、わが国ではこれまで十分な研究が行われていない。爆発物テロ発生地域における医療対応のあり方に関して、研究班で検討し、提言として発信する。
(5)化学テロにおける中毒情報センターと災害・救急医療体制の連携 (黒木由美子研究分担者)
(5) 緊急被ばく医療体制と災害・救急医療体制の連携(明石真言研究分担者)
 感染症医療体制と災害・救急医療体制の連携 (砂川富正研究分担者)
結果と考察
CBRNEテロ/災害に対して救急医療機関での原因物質の種類によらない共通の対応体制を開発してきた。平成25年は、以下の成果をあげた。(1)幅広く関係機関が机上でシミュレーション訓練をするMCLSの概念を発展させ、CBRNE災害に特化した「MCLS-CBRNEコース」を開発した。
(2)ボストンマラソン爆弾テロへの対応の詳細を調査し、わが国の救急医療機関における爆弾テロ対応体制のあり方について研究した。
(3) CBRNEテロ発生時、現関係機関の連携における医療のあり方について国民保護共同実動訓練からその課題を抽出した。
(4)「NBCテロ・災害対応研修会(医政局指導課主催)」受講生へのアンケート調査結果をまとめた。
(5)福島の事故対応におけるDMAT活動の検証、Nuclear Radiological Disaster Casualty Management (NRDCM) Workgroupでの議論、参加者に行われたアンケートの分析から、NRテロ研修の方向性を模索した。
(6)生物テロ対応を中心とした感染症、救急、災害に関する研修に感染症サーベイランスのもたらす広義の重要性等新しい知見追加した。
(7) 地域における特殊災害(CBRNE)事案対応について検討し、普遍的な課題を抽出した。
結論
東京オリンピック開催に向けて、爆弾テロを中心とする各種CBRNEテロへの医療体制整備は、喫緊の最重要課題である。当研究班では、引き続き実効性のある体制整備に向けて研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201330024Z