災害時における医療チームと関係機関との連携に関する研究

文献情報

文献番号
201330022A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における医療チームと関係機関との連携に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 憲彦(航空自衛隊 航空医学実験隊)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学)
  • 井上 潤一(山梨県立中央病院)
  • 定光 大海(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院)
  • 本間 正人(鳥取大学医学部)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 石原 哲(白鬚橋病院)
  • 高橋 毅(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,510,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、災害医療体制構築における課題に対し、対応のガイドライン、マニュアル等を提示することを目的とする。日本の災害医療体制は、阪神淡路大震災(以下1.17)の教訓に基づき大きく進歩した。しかし、東日本大震災(以下3.11)においては、1.17と医療ニーズが全く違ったこともあり、新たな課題が多く生まれた。3.11以降の災害医療の方向性は、「災害時における医療体制の充実強化について」(平成24年3月21日 厚生労働省医政局長通知 医政発0321第2号)において、9項目の目標として提示されている。本研究班の目的は、これらの目標の具現化に貢献し、災害医療体制をより一層強化することである。
研究方法
3.11において、新たに生まれた下記の課題を検討した。本邦初めて広域医療搬送が行れ、その結果、地域医療搬送における指揮調整系統、SCUの柔軟な運用が課題として挙げられた。また、南海トラフや首都直下の新たな想定が提示され、政府の広域医療搬送の具体的な計画を更新する必要が生じている。そこで、本研究では、新たな想定に基づいた広域医療搬送の具体的な計画を策定する際の基礎資料を整理すると共に、SCU、広域医療搬送、ドクヘリを含めた地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアルを提示する。EMISは災害拠点病院ではある程度機能したが、その他の病院の情報収集にばらつきが生じた。また、DMAT管理についても実践からいくつかの課題が提示された。そこでこれらの課題を踏まえ、EMISのあり方を検討する。医療のロジスティックに係わる様々な問題が提示された。そこで、DMATロジスティックチームのあり方、中長期的な医療のロジスティックのあり方について検討する。急性期から亜急性期への医療チームの引継ぎにおけるギャップが問題となった。亜急性期までの調整あり方、関係組織の連携の具体的な手法を開発する。その他、標準災害診療記録、トリアージタッグ、DMAT隊員管理に関しても検討した。
結果と考察
地域医療搬送については、地域医療搬送に活用可能なリソース(ドクヘリ、消防・自衛隊ヘリ、救急車、民間車両など)の即応性や医療搬送に充当できるか否かの制度的根拠、アクセス先(要請手順)を整理した。広域医療搬送については、各都道府県におけるSCU指定状況、協力医療機関、SCU資機材の整備状況についてアンケート調査を実施した。情報システムについては、有床診療所も含めた被災状況の入力項目の見直しとクラウド化を視点にいれた全病院のシステム登録への提言、避難所での救護活動などDMATに続く医療救護班の活動を支援するための活動状況入力項目の検討を行った。ロジスティクスについては、政府総合防災訓練やDMAT地方ブロック訓練において、衛星・無線を用いた通信網の確保、民間会社・自衛隊等と連携した移動・搬送手段の確保、高速道路SAを活用したロジスティックステーションの設置について検証し、その有効性を明らかとした。トリアージ手法については、STARTの循環の評価方法を変更した。一方、現行標準トリアージタッグの課題は、固有のIDの欠如、記載情報の管理・運用であり、デザインも含め検討中である。DMAT隊員については、隊員登録された7783人のうち、勤務先がDMAT指定医療機関以外になった為に災害時に出動できない人員が513(7.4%)人いることが分かった。こうした人材を活用する方法を提示した。関係機関連携の研究については、日本赤十字社は、3.11の検証から日赤の医療救護活動について都道府県(行政)医師会などの機関との円滑な連携・調整を行うために日赤災害医療コーデイネーター(チーム)を設置、日本医師会(JMAT)は研修、携行医薬品等の標準化、また、国立病院機構は初動医療班を設置されたことが報告された。情報整理ツールについては、3学会合同委員会と共に標準災害診療記録(案)を試作し大規模訓練で検証した。また、3学会を通じ広く意見を聴取した。
結論
本研究班は、今年度が3年計画の初年度であるため、本年度はそれぞれの分担研究領域の実態調査及び課題抽出が行われた。次年度はこれら課題の対応策を提示する。最終的には、SCU、広域医療搬送、ドクヘリを含めた地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアルを提示することにより、南海トラフや首都直下の広域医療搬送の具体的な計画更新に貢献する。EMISに関しては、今回のバージョンアップにより災害時の医療展開のコーディネートをより理想的に運ぶことが可能となるが、今後EMISで共有すべき情報量が多大となる中、可視化含め、より使い勝手の良い仕様に改変していく計画である。ロジスティクスに関しては、ロジステーション構想具現化のためのガイドラインを作成し、協定・合同訓練を行う。その他、トリアージタッグの改訂、災害カルテの標準化等を目指す。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201330022Z