エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
201330021A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
  • 舘田一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
  • 鷲崎久美子(東邦大学医学部皮膚科学講座)
  • 古川福実(和歌山県立医科大学皮膚科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,734,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エステティックにおける施術には,消費者ニーズの高まりとともに普及している。一方で,エステティックには法的な規制がなく,実態が十分に把握されていないため,衛生管理や施術に関係する健康被害が懸念される。そこで本研究は,エステティックに関し①施設の衛生管理の状況や施術者の手洗い調査をし,衛生管理,指導方法を提案する。②健康被害の実態や施術の内容を把握する。③施術の安全性に関する検証を行い,健康被害を予防する対策を提案することなどを目的に実施していく。
研究方法
A施設の衛生管理の徹底について
1 施設の衛生環境実態調査:都内近郊の21施設を訪問し,施術室や水回り設備等をふき取り法による細菌培養検査を行った。また,施設にの技術者の手洗い前後をハンドスタンプにて採取した。
2 衛生管理実態調査:エステティック施設に,衛生管理の状態についてアンケート調査を行った。
3 施術前後の技術者の手の状況:顔面のマッサージ前後の技術者のハンドスタンプを採取した。
Bエステティックサービスによる健康被害の実態把握及び原因の究明
1 医療機関への調査:日本美容皮膚科学会会員医師にアンケートを配布して,エステティックで健康被害を受けた患者の症例を収集した。
2 相談事例:国民生活センターに全国から寄せられる消費者相談のうち,「エステティック」に分類されている健康被害の詳細情報を収集した。
3 植物由来の香料成分の皮膚刺激性の検証:アロマオイルを化粧品と混合して施術に使用するケースがあることから,その皮膚刺激性を48時間閉塞パッチテストにより検証した。
結果と考察
A施設の衛生管理の徹底について
1 施設の衛生環境実態調査:今回の調査では,院内感染などで弱毒菌であるのに問題となるような,市中型MRSA ,多剤耐性緑膿菌,アシネトバクターなどを中心にサロン環境から検出されるかどうかの検査を行った。21施設から計170か所のふき取りを行った結果,主として水回り設備から薬剤感性の黄色ブドウ球菌,緑膿菌,アシネトバクターは検出されるものの,当該の薬剤耐性菌による施設の汚染は見られなかった。技術者の手指細菌検査では,1施設の技術者からの手指から市中型MRSAが検出されたが、当該菌は検出されなかった。当該菌による汚染ではないが,市販手指消毒剤による消毒後手指であるにもかかわらず大量の菌で汚染されている例も見受けられた。この原因として手指消毒剤の劣化である可能性が考えられた。
2 衛生管理実態調査:アンケートの結果,必要な衛生管理21項目の実施は,17項目以上(80%以上)実施している施設は36%だった。また,手洗いの状況については,出勤時等外からサロン内に入るときに,手洗い消毒を行っている施設は約4割,手洗いのみで手指の消毒を行っていない施設が約4割だった。また,施術前は,78%が手洗い消毒を行っていた。
Bエステティックサービスによる健康被害の実態把握及び原因の究明
1 医療機関へのアンケート調査:331件から有効な回答があり,エステティックによる健康被害の診療経験があったのは148件(45%),症例は324件収集できた。この324件の所見は,熱傷115件(35%),皮膚障害109件(34%)であり,熱傷の原因は,施術用機器(79%)が多く,皮膚障害の原因は,化粧品(44%)が多かった。
2 相談事例:2012年度に国民生活センターに寄せられた消費者相談のうち「エステティック」の危害相談事例610件について集計を行った。その結果,美顔エステ246件,脱毛エステ152件,痩身エステ118件だった。危害の内容では,皮膚障害が278件,熱傷が108件だった。
3 植物由来の香料成分の皮膚刺激性の検証:アロマテラピーは,植物の香りや様々な働きを借りて,健康増進や美容に役立てていこうとする自然療法で本邦ではエステティックにおいて積極的に実施されている。今回の研究は,エステティックに使用される植物由来の香料成分10種について希釈濃度1%と5%でパッチテストを行った結果,すべて「刺激性が低い」に分類された。
結論
衛生管理については,来年度は顧客の皮膚に直接触れる手指や機器の衛生管理(消毒剤の管理を含む)についてエステティックの作業工程に合わせて最適な方法を検討する。また,外部から施設内に細菌類を持ち込まないことを徹底するために,顧客向けの感染症予防対策を啓発する資料を作成する。健康被害の実態把握及び原因の究明は,今年度に引き続き施術で使用されている化粧品の皮膚刺激性を調査するとともに,皮膚常在菌のバランスや皮膚バリア機能がマッサージにより損なわれていないかについて調査を行う。また,機器については熱傷の被害が多くみられたサービスを中心に安全に施術が提供される方法を検討する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201330021Z