地域保健事業におけるソーシャルキャピタルの活用に関する研究

文献情報

文献番号
201330013A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健事業におけるソーシャルキャピタルの活用に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 陽二(日本大学 法学部)
  • 角野 文彦(滋賀県健康医療福祉部)
  • 川崎 千恵(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 高尾 総司(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 澤岡 詩野(ダイヤ高齢社会研究財団)
  • 和 秀俊(田園調布学園大学 人間福祉学部)
  • 広松 恭子(渋谷区保健所)
  • 深谷 太郎(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 野中 久美子(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 倉岡 正高(東京都健康長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,374,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ソーシャルキャピタル(以下、SCと表記)と健康との関連についての研究成果を地域保健事業にどのように還元・活用できるのか、或いはSCを醸成する方法論とは何かが明確でないため、地域保健実務者には事業とSCの関連が理解されにくい。そこで、本研究では、これらの方法論を明確にし、具体的なSCの活用方法を提示することを目的とする。更に、本研究班は2か年計画であり、最終年度(2014年度)には学術的評価に基づき事業実施に必要な要件を示したマニュアルを作成することを到達点と考えている。
本年度(2013年度)はその基礎資料の収集と分析および総括を行うこととした。具体的には、地域のSC醸成や健康・福祉の向上に寄与していると思われる優良事例を収集し、その事業の実施に不可欠な要素や手順を検討することである。
研究方法
初年度はまず、専門家による検討委員会にて「SCを活用した地域保健事業・市民活動」の枠組みを設定した。この枠組みでは、SCを広義にとらえ、コミュニティ構成員のデータから、ミクロ、メゾ、マクロの3段階で、コミュニティにおけるSCの多様性を示すモデルのプロトタイプを提示した。このモデルは、SCからみたコミュニティの構成員の特性(ミクロレベル)、それを反映したコミュニティの特性(メゾレベル)、また社会全体への寛容度(マクロレベル)を、全国平均などのベンチマークとの比較に基づいて可視化できるものである。
次に、この枠組みを基に、横浜市や滋賀県等、合計5つの自治体保健師、福祉保健担当者等を対象に、優良事例について質問紙調査(一次調査)と、当該事例の主催者を対象にインタビュー調査(二次調査)を実施した。
結果と考察
質問紙調査(一次調査)の結果、多数の回答が得られた横浜市(469事例)と、滋賀県(64事例)について、地域ごとに分析したところ、1)活動範囲が広いほどメンバーや関わる人・団体が増加している、2)活動箇所が多いほど関わる人・団体が増加していることが共通の傾向として確認された。その他の項目では、横浜市と滋賀県で異なる関連性が認められ、例えば横浜市では、メンバーの年齢層が多様であるほど様々な地域資源を活用している、活動継続年数が長くなるほど、活動に対する地域住民の信頼が高くなっていること等が明らかとなった。一方、滋賀県では活動範囲が広くても、活動に対する地域住民の信頼は高くはならず、地域住民同士の信頼・互酬性の醸成にも貢献していないという結果であった。こうした結果の相違には、保健師が関わっている事例か否かによるところが大きいと考えられる。
また、一次調査で上位に位置づけられた優良事例は、相対的に構造的SCの得点が高いという特徴が認められた。この特徴は、インタビュー調査でも確認され、優良事例では組織体制や役割、責任などが明確であった。以上のことからも、構造的SCは、活動の強化や維持において重要であることが指摘できる。一方、認知的SCは、第三者による評価が難しく、実務者がより客観的に活動を評価できる基準と方法を検証する必要がある。
結論
SCの地域比較についてはコミュニティの構成員の特性(ミクロレベル)、それを反映したコミュニティの特性(メゾレベル)、また社会全体への寛容度(マクロレベル)を、全国平均などのベンチマークとの比較に基づいて可視化できる。構造的なSCは、住民による地域保健活動の強化や維持において重要である。一方、認知的SCは、保健師などの第三者による評価が難しく、実務者がより客観的に活動を評価できる基準と方法を検証する必要があることがわかった。これらをふまえ、実務者による活動の強化や支援方法を提示することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201330013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,150,000円
(2)補助金確定額
8,136,750円
差引額 [(1)-(2)]
13,250円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,192,593円
人件費・謝金 3,988,594円
旅費 406,300円
その他 773,263円
間接経費 1,776,000円
合計 8,136,750円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-06-23
更新日
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