化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発

文献情報

文献番号
201329018A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発
課題番号
H24-化学-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 北野 宏明(特定非営利活動法人 システム・バイオロジー研究機構)
  • 北嶋 聡( 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 )
  • 相崎 健一( 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
41,467,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質による生体影響の分子メカニズムに依拠した毒性評価手法の迅速化、高度化、及びその実用の為のインフォマティクス開発を目的とする。
即ち、先行研究にて構築済みの延べ5.8億遺伝子情報からなる高精度トキシコゲノミクスデータベースと単回暴露時の毒性ネットワーク解析技術を基盤に、これらを維持・拡充しつつ、反復暴露のネットワーク解析、及び、その予測評価技術を開発する。ここにインフォマティクス専門家によるシステムトキシコロジーの概念を導入し、網羅的毒性予測評価システムの機能強化と精度向上を図る。
研究方法
我々が開発したPercellome絶対量化法(BMC Genomics. 7, 64, 2006 / 特許441507 / 細胞1個当たりのmRNAコピー数として発現値を得る方法)を用いた予備検討により、化学物質の反復暴露に対する生体反応は、毎回の投与の度に、①その都度の変化を示す「過渡反応」と、②回を重ねるに連れて発現値の基線(ベースライン)が徐々に移動する「基線反応」の二つの成分から構成され、単回暴露影響を単純に積算して予測する変化とは異なることが明らかとなった。
詳細解析のために、過渡反応と基線反応の関連性を観測できる新型反復暴露実験セット(1、2、4日間の反復暴露を行い、各々最終投与から2、4、8、24時間後に単回暴露と同様の網羅的遺伝子解析を行う)を、国立医薬品食品衛生研究所の「動物実験の適正な実施に関する規程」に則り、飼育環境の照明時間等を厳密に管理して実施した。採取した組織サンプルから、Percellome法を適用したマイクロアレイ解析により、絶対量化されたトランスクリプトームデータを得た。マウス胎児をモデルとした遺伝子発現ネットワークの描出研究も並行した。
研究に用いる主なアルゴリズムは、Percellomeやシステムバイオロジーに基づいて開発し、独自の解析プログラムに実装して研究に供した。
結果と考察
反復暴露については、H24年度の四塩化炭素に加え、今年度はバルプロ酸ナトリウムの新型反復暴露実験を実施した結果、過渡反応と基線反応の分離、及び、両反応の連関性、即ち過渡反応が増加する場合には基線反応も増加、減少する場合には基線反応も減少する、という四塩化炭素と共通の基本現象を確認しつつ、バルプロ酸ナトリウム固有の所見を得た。また多くの遺伝子については、2日間暴露の時点で基線変動が完成することが明らかとなった(例外あり)。
胎児発生過程における遺伝子発現ネットワークの網羅的解析研究として、今年度は、一階微分及び二階微分により発現変動起点及び発現ピークの時点を同定する技術を開発し、Shh遺伝子シグナルネットワークをモデルに、発生過程のマスター遺伝子である可能性の高い遺伝子を網羅的に抽出する技術開発を進めた。
データ解析手法の開発研究として、今年度は各班員のデータ解析の効率と精度の向上を優先してH26年度予定の計画を実施し、3次元グラフ表示データからの候補遺伝子抽出プログラムRSortの自動抽出精度を向上させると共に、線グラフ表示データからの候補遺伝子抽出アルゴリズムを開発した。
システムトキシコロジー解析基盤の研究開発としては、遺伝子発現ネットワーク推定では、実際の網羅的トランスクリプトームデータを用いて最適化を進めた。遺伝子クラスター解析手法に関しては、実装プログラムの、研究用ソフトウエア国際共通プラットフォームGarudaへの対応を進めている。さらにPercellome DB対応のGarudaガジェットプログラムを作成・改良するなど、その国際的普及活動を行った。Garuda Platformは、国際的に非常に高い評価を得ており、普及は予想以上に順調に進んでいる。
結論
新型反復暴露解析で見いだした、過渡反応成分と基線反応成分の基本的な関連性は、生物学的・毒性学的に新規性が高く、この機序を明らかにすることは、反復毒性の分子毒性学的理解の促進、及び、単回暴露実験データベースからの反復毒性予測法の開発にあたり重要である。来年度は、クロフィブレートについて同様の実験・解析を実施する。
胎児発生過程における遺伝子発現ネットワークの網羅的解析については発現変動起点及び発現ピークの時点に着目する微分解析手法の開発を進めた。今後、実際の解析における網羅的の獲得と、信頼性と効率の向上を目指す。
Percellome用解析ソフトウエアの開発研究では、H24年度の異種データ統合技術と今年度の抽出技術の汎用化により、多様なデータを統合して取り扱う基盤を整えた。
システムトキシコロジー解析基盤の研究開発では、諸アルゴリズムの性能向上や機能拡張も順調に推移した。今後、これらのソフトウエアの具体的な適用例を作り、普及に務める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-03-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201329018Z