革新的医薬品の開発環境整備を目指したレギュラトリーサイエンス研究

文献情報

文献番号
201328041A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的医薬品の開発環境整備を目指したレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H24-医薬-指定-031
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 加藤くみ子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 石井明子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 井上貴雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 内田恵理子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
37,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国で臨床応用が試みられつつある革新的医薬品製剤を中心に,以下の研究を行った: ①医療応用を迅速に進める上で必要な規制ガイドライン案や評価法をリスト化する; ②キーとなると考えられる評価手法を開発・標準化する;③必要に応じて規制ガイドライン等の作成,評価法策定を行う.
研究方法
各対象医薬品について開発における課題についてまとめるとともに、重要課題を解決するための検討を課題に応じて行う。
結果と考察
今年度は以下の成果を得た.
(1)ナノDDS製剤: ①ブロック共重合体ミセルやリポソーム製剤のin vivoにおけるタンパク質,細胞との相互作用に関する評価法について調査,考察し,「ブロック共重合体ミセル医薬品の開発に関する厚生労働省/欧州医薬品庁共同リフレクションペーパー」の解説論文に反映させた;②,ナノDDS製剤の臨床上の有効性及び安全性に影響するナノDDS製剤と血中タンパク質との相互作用の評価手法として,ナノDDS製剤の血液適合性試験(補体系活性化試験),赤血球との相互作用(溶血性試験),及び血漿成分への影響(血液凝固試験)について,リポソーム製剤を対象に最適化,確立した.
(2)改変タンパク質製剤(改変型抗体医薬品): 改変タンパク質製剤について非臨床試験から臨床試験への安全かつ迅速な移行のための環境整備のための研究を行い,①改変型医薬品の分子設計について,薬理作用・体内動態・免疫原性・製剤化・製造工程を考慮して,留意すべき事項をまとめた; ②Fcγ受容体結合親和性プロファイリングに適した表面プラズモン共鳴(SPR)解析法を構築するとともに,改変型抗体医薬品の非臨床評価において課題となるFcγ受容体結合親和性の種差を解析した.
(3)核酸医薬品: 核酸医薬品の安全性確保において,最も懸念されるオフターゲット効果(標的mRNAと類似した配列を持つ遺伝子の発現が抑制される現象)の発現評価法の確立や判断基準の設定を最終目的に,①複数のタイプが存在するアンチセンス医薬品について調査研究を行い,それぞれのアンチセンス医薬品に対してオフターゲット効果の評価法を提案した;②さらに,Kynamro の上市で注目を集めているGapmer型アンチセンスに関して,マイクロアレイを用いてオフターゲット効果の誘導を検証した.
(4)タンパク質性医薬品等の安定性: タンパク質性医薬品の安定性に影響を及ぼすと考えられる有効成分分子の高次構造の揺らぎを評価する手法(タンパク質のβ緩和時間等を指標にした)として,13C-NMR緩和時間の可能性について引き続き検討し,タンパク質の安定性がカルボニル炭素の13C-NMR緩和時間によって評価できる可能性を示唆する結果を得た.
(5)遺伝子治療用医薬品: ①染色体組込型ベクターについて,安全性上のリスクの要因とリスク低減化のために考慮すべき事項,非臨床で実施すべき染色体への組込試験や挿入変異のリスク評価法,臨床試験でのモニタリング法の課題をまとめた; ②遺伝子治療用ウイルスベクターの重要品質特性である比活性の評価について検討し,デジタルPCRを用いたウイルスゲノム定量法の有用性を示した; ③レトロウイルスベクターの細胞外での残存性を検討し,感染条件によっては理論値よりも多くのベクターが遺伝子導入細胞懸濁液に残存する可能性を示した.
結論
今年度得られた成果は最終年度の研究等に下記の通り活用される.
(1) ナノDDS製剤: ①本研究に基づき,日欧共同医薬品規制文書 “ブロック共重合体ミセル医薬品に関する国際共同リフレクション・ペーパー”の補足解説文書を作成,公表した; ②ナノDDS製剤と血中タンパク質との相互作用で検討した試験法は,リポソーム製剤の評価における標準的試験法として活用する.
(2) 改変タンパク質製剤(改変型抗体医薬品): ①本研究に基づき,改変型抗体医薬品の分子設計に関する総説を作成,公表した; ②Fcγ受容体結合親和性の種差に関する解析結果等に基づき,改変型抗体医薬品の非臨床評価における留意点をまとめる.
(3) 核酸医薬品: 本研究に基づき,核酸医薬品の開発動向をまとめ,発表するとともに,核酸医薬品の開発にあたって配慮すべきポイントの中で安全性評価における最重要課題である“オフターゲット効果評価法”を提案した.今後検証を行い評価法開発を完成させる.
(4) タンパク質性医薬品等の安定性: 本研究成果は、カルボニル炭素の13C-NMR緩和時間からタンパク質性医薬品の安定性を予測することが可能であることが示され,今後の試験法の開発・確立に結びつく.
(5) 遺伝子治療用医薬品: 本研究成果を,現在実施中の遺伝子治療関連指針の見直しや今後作成を予定している遺伝子治療の個別課題に関するリフレクションペーパーの作成等に活用する.

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,540,000円
(2)補助金確定額
37,540,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,772,629円
人件費・謝金 10,821,096円
旅費 1,268,688円
その他 6,687,716円
間接経費 0円
合計 37,550,129円

備考

備考
最終請求書の請求額と研究費残高に相違が出た為、自己負担にて129円を補填した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-