ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201328039A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-029
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 遊佐 敬介(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 橋井 則貴(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 前田 洋助(熊本大学 生命科学研究部)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 生田 和良(大阪大学 微生物病研究所)
  • 萩原 克郎(酪農学園大学 獣医学群)
  • 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 吉倉 廣(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
37,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年,細胞組織加工製品や革新的バイオ医薬品などの開発・臨床研究が推進されている.同時に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が公布され,細胞組織加工製品に関する法的な整備も進んでいる.しかし,細胞組織加工製品や革新的バイオ医薬品の研究成果の早期実用化に向けて,さらに整備すべき課題も少なくない.その中でもウイルス等感染性因子の安全性確保は最優先課題の一つである.ウイルス,細菌,マイコプラズマ,真菌,異常型プリオン等の感染性因子による細胞組織加工製品やバイオ医薬品汚染が起きると,国民の健康を著しく損ねる危険性がある.本研究では,細胞組織加工製品及びバイオ医薬品の開発,治験,承認申請・審査,適正使用の環境整備を目的として次の5つの課題,(1)細胞組織加工製品のウイルス安全性評価,(2)バイオ医薬品のウイルス安全性評価,(3)プリオン安全性評価,(4)細胞組織加工製品に適用可能な無菌試験法,マイコプラズマ否定試験法及びエンドトキシン試験法の開発及び標準化,並びに(5)ウシ等由来原料に係る基準の見直し,を行う.
研究方法
(1)では,細胞組織加工製品におけるウイルス感染リスク要因を考慮しながら,文献調査,臨床検体の分析,感染性実験等のデータに基づくリスク評価を行い,リスク対応策としての検出方法,及び製造管理方法等をまとめる.(2)では,これまでに蓄積された知識・データ・技術を基に,製薬業界等とともにウイルスクリアランス ケーススタディを実施し,推奨されるモデルウイルスとその組み合わせの提示,ウイルスクリアランス目標値の考察,及びスケール変更時の外挿性妥当性評価とウイルスクリアランス試験手順の作成を行う. (3)では,国際動向調査,及びin vivo, in vitro高感度異常プリオン検出法の開発を行い,調査結果及び高感度検出法により得られたデータに基づき,現在の異常プリオン評価基準を科学的見地から検証する.(4)では,マイコプラズマ否定試験について,細胞組織加工製品の特性を踏まえた試験法に関する考え方を整理し,細胞組織加工製品に適用可能な試験法について検討する.また,細胞組織加工製品の安全性確保のための出荷判定試験として実施可能な無菌試験法について検討する.さらに,細胞組織加工製品にエンドトキシン試験をどのように適用していくべきか検討する.(5)では,国際獣疫事務局において,日本・米国等が新たに伝達性海綿状脳症の「無視できるリスク国」に指定されたことを踏まえ,医薬品等原料規制のあり方を検討する.
結果と考察
(1)では,妊娠可能性のある女性が患者の場合,胎児等への感染リスクが高いとの報告があるウイルスについて,感染率・垂直伝播率・有病率・死亡率を文献調査した.また,4種類のヒトウイルスを取り上げ,スパイク試験法の確立を目指した.これに加えて,iPS細胞のRNAウイルス感染性を検討した.さらに,モデル細胞を用いて,細胞表面ウイルス受容体のスクリーニング法の開発を行った.(2)では,バイオ医薬品製造過程でのウイルス迷入の防止等を考察するため,ワクチンにブタサーコウイルスが迷入した事例における製造業者及び規制当局の対応について調査した.(3)では,マウス正常型プリオン(PrPC)を強発現するRK13mol細胞株を用いて,感染価測定法の確立を試みた.また,FDAのリスク評価や英国健康保護庁のデータなどを調査し,現時点でのvCJDや異常型プリオンのリスク評価の現状を明らかにした.(4)では,マイコプラズマ否定試験について,細胞組織加工製品に対して現実的に適用可能な試験法を検討した.また,安全性確保のための出荷判定試験として実施可能な無菌試験法についても検討した.さらに,多様な細胞組織加工製品が開発中であることを考慮し,製品の特性に応じて,どのようにエンドトキシン試験を実施するべきかについても考察した.(5)では,日本等が伝達性海綿状脳症の「無視できるリスク国」に指定されたことを踏まえ,規制のあり方を検討した.
結論
細胞組織加工製品のウイルス安全性に関して,特に胎児及びiPS細胞等の感染リスクを分析するとともにウイルス検出法を検討した.バイオ医薬品のウイルス安全性評価,プリオン安全性評価,細胞組織加工製品に適用可能な無菌試験法・マイコプラズマ否定試験法・エンドトキシン試験法の開発及び標準化,並びにウシ等由来原料に係る基準の見直しも行った.これらの結果は相互に役立つものであり,最終年度のリスクマネジメントプロセスの例示に向けて,今後も計画通りに研究を進める予定である.

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328039Z