献血推進のための効果的な広報戦略等の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201328015A
報告書区分
総括
研究課題名
献血推進のための効果的な広報戦略等の開発に関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋田 定伯(長崎大学病院 形成外科)
  • 西田 一雄(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 井上 慎吾(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 政策科学分野)
  • 田辺 善仁(株式会社エフエム大阪 )
  • 田中 純子(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国は少子高齢化による人口動態、疾病構造の変化など治療における輸血液の需要は一段と高まる傾向にある。将来の献血についての議論が今後も必要であり、そのためにも献血者の必要数(量)の将来予測は重要である。本研究の第一目的は必要な血液製剤の量、献血者数の将来予測を行うことである。また、本研究では多岐にわたる献血推進施策から主なものを抽出し、アンケート調査あるいは献血数(量)の推移との関連を調査し、施策の効果の検証を行うことを第二の研究目的とする。
研究方法
初年度は多岐にわたる施策を調査し、次年度は必要なアンケート調査、献血数(量)との関連を分析する。また若者の献血離れの現状と原因についても検討を継続する。最終年度に結果を総合的に解析する。本研究班は次の6研究分担で構成した。1)保健学科学生及び献血バスの献血ドナーを対象にアンケート調査を実施した。2)種々のメディアを活用した戦略的広報や音楽イベントを用いた若年層向け献血推進方策の評価を行った。3)全国学生献血推進代表者会議等で献血思想の普及啓発も行い意識向上を図った。4)献血ルームでのイベントや、ラジオ番組出演者による街頭でアンケート調査を行った。5)日本赤十字社の全国統一コンピュータシステムから、都道府県間の献血者移動の実態をMPI(移動選好指数)などを使って明らかにした。6)献血者数(量)の将来推計数理モデルを開発し将来予測を行い、次に人口動態推計データから必要な血液製剤の量、数の将来予測を行った。研究代表者は研究の総括を行った。
結果と考察
1)献血普及活動への参加希望が多く、献血を敬遠する学生数、献血未経験者数の減少など、献血の意識の高まりと行動への反映が見られている。さらに、現行の献血に対する意識、行動様式、意見等を検討し、認知度、理解度の変遷の公開開示とともに効果的な献血広報戦略の開発が必要であると推察された。2)「LOVE in Actionプロジェクト」について、献血者の実績、ラジオによる献血啓発への反応であるリスナーメッセージの投稿数及びイベント会場で実施しているアンケート調査から、若年層を中心に一定の効果があるものと推測された。3)学生が発信する側になって、意識向上、献血の正しい知識の習得し、発信方法の工夫につながり、学生が中心となった献血啓発活動の成果は大きい。今後学生からの情報発信等の応用研修にも繋げていけるものと考える。4)アンケート調査では献血に対し前向きの姿勢がうかがわれたが、献血をしない理由として「きっかけがない」等といったプリミティブな問題があった。若者の共通の文化である音楽を通じ、また、アーティストを通じて継続性のある真の献血推進のムーブメントが広がることを期待し、現代におけるコミュニケーションの重要ツールであるインターネットやSNSでの拡散の在り方を考察する。5)東京都、愛知県、大阪府の周辺県では大都市部に移動して献血をおこなっていた。MPIでみれば予想値の最大50余りの献血者が移動していた。電鉄などの交通手段の充実が大きく寄与しているために都道府県境を越えた大きな移動が生じていると考えられる。特に、東京都に近い自治体は、50%程度の献血者が東京都で献血を行っていることがわかった。このようなところは献血推進の単位も広域化していく必要があろう。6)20、30歳代は献血行動が習慣化していない集団であることが明らかになった。推定献血本数は3~4年後に増加から減少に転じていたが、血液製剤供給のための必要献血本数は常に増加していた。これには少子高齢化により献血可能年齢人口の減少、血液製剤使用患者の増加が大きいが、20、30歳代の献血行動が習慣化していないことも大きな要因であると考えられ、この年代を40、50歳代のように習慣化させることが血液製剤の安定供給に有効であると考えられた。
結論
6つの分担研究それぞれで概ね当初の目標を達成できた。献血推計研究では、献血者数の将来予測数理モデルを開発し、今後、本予測モデルの検証と、今後、将来必要な献血量の推計を行う。献血推進施策の評価は、今年度、アンケート調査やインターネットでの調査結果の解析などを行ったが、検証対象の検討など、今後、さらなる検討が必要と考える。最終的には、これまでに実施された主な献血推進の施策について、その有効性を検証し、最終年度には3年間の研究成果を踏まえ、特に、若年層の献血推進を図るための具体策の提言に繋げたいと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328015Z