食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
201327044A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究
課題番号
H24-食品-指定-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤羽 学(奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部皮膚科)
  • 岩本 幸英(九州大学 大学院医学研究院整形外科学分野)
  • 上松 聖典(長崎大学病院 眼科)
  • 宇谷 厚志(長崎大学 医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野 )
  • 内 博史(九州大学病院 油症ダイオキシン研究診療センター)
  • 江崎 幹宏(九州大学 大学院医学研究院病態機能内科学分野)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 月森 清巳(福岡市立こども病院・感染症センター 産科)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
  • 徳永 章二(九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 中西 洋一(九州大学 大学院医学研究院呼吸器内科学分野)
  • 林 信太郎(九州大学 大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 平田 輝昭(福岡県保健環境研究所)
  • 山田 英之(九州大学 大学院薬学研究院分子衛生薬学専攻分野)
  • 吉冨 泉(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科口腔腫瘍治療学分野)
  • 吉村 健清(福岡女子大学 国際文理学部食・健康学科)
  • 吉村 俊朗(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科リハビリテーション科学講座)
  • 吉村 惠(熊本保健科学大学 大学院保健科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
169,124,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 松本主之(平成25年4月1日~平成25年8月31日)→江崎幹宏(平成25年9月1日~平成26年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
油症患者に残存する症状を把握し、ダイオキシン類が生体に及ぼす慢性の影響、その排泄法、症状緩和法を開発する。
研究方法
生体内でのダイオキシン類濃度の推移、油症患者の症状、検診検査項目との関連性について解析・検討を行い、これらの化学物質が油症の症状形成にいかに寄与したかを確認する。また、体内に残存するダイオキシン類の改良測定方法・排泄方法や、様々な症状を緩和する方法について開発するために、ダイオキシン類の患者生体内での半減期、代謝動態に対する解析や、基礎的研究も継続する。
結果と考察
2013年度に新たに認定された4名、同居家族認定者と認定された67名(そのうち1名は既認定患者)を含めると、2014年3月末における全認定患者数は2,255名となった。近年の傾向と同様、患者の高齢化とともに油症特有の症状に、加齢に伴う症状が加わる傾向にあった。
油症患者における骨密度・自己抗体・血中Surfactant Protein( SP)・サイトカインなどについてダイオキシン類濃度との相関を検討した。骨密度では複数の異性体においてダイオキシン類濃度との間に正の関連を認めた。自己抗体では抗SS-B/La抗体は血中PCB高濃度油症患者のみに認められ低濃度患者ではみられなかった。SPではSP-D濃度と咳嗽、喀痰といった症状、またSP-A濃度と一部のダイオキシン類の濃度に有意な関連が認められた。サイトカインでは油症患者血清中でIL-26の減少がみられた。ダイオキシン類の継世代影響を検討するために、次世代のアレルギー性疾患発症について検討した。認定患者から出生した児では一般健常人と比較して気管支喘息有病率が高く、逆にアレルギー性鼻炎有病率は低い傾向にあった。高濃度の母体ダイオキシン類曝露では児のアレルギー性鼻炎の発症リスクは低下する可能性が示された。Arylhydrocarbon Receptor (AhR)遺伝子多型とダイオキシン類の半減期との関係、油症患者健康実態調査の症状との関係を解析した。SNP(一塩基多型)と半減期の関係ではT/T型は人数が少なく状況が確認できなかった。C/C型とC/T型間の比較では、C/T型の患者の方が半減期が長かった。この半減期の差がSNPよるものかは今後の検討が必要である。SNPと疾患の関係では、T/T型の女性の年齢分布が男性や他の遺伝子型と異なっていた。さらにT/T型の女性では重篤な疾患の人数が少なかった。T/T型の女性の年齢分布が異なるのは既に死亡しているのではないかと推測された。基礎的研究では、ダイオキシンが大腸上皮細胞に与える影響についての研究としてヒト結腸癌由来細胞株HCT-116ならびにMUTYH関連ポリポーシスモデルを用いてcelecoxibと2,5-dimethyl-celecoxib の腫瘍抑制効果を検討した。両薬剤はWnt/βカテニン系を介した細胞増殖抑制とアポトーシス亢進により腫瘍抑制効果を発揮した。さらにMUTYH関連ポリポーシスモデルにおいて腫瘍数ならびに腫瘍径が抑制された。PCB101代謝に関与する新たなチトクロムP450分子種の解明ではPCB101の3’位水酸化において、ラットCYP2B1だけではなくラットCYP3A1も強く関与することが明らかになった。TCDDによる leukotriene (LT) B4蓄積の毒性学的意義の検討では、TCDD曝露により肝臓でLTB4増加ならびに LTC4 減少が示唆され、LTB4 の増加は20 倍程度と推測された。さらにLTB4作用のマーカーである myeloperoxidase(MPO)活性が TCDD 曝露により有意に増加し、LTB4の肝への蓄積を支持した。またLTB4 持続注入により、肝MPO活性がTCDD曝露時と同程度にまで増加し、肝において LTB4作用が生じていることが確認された。しかしTCDDにおいて認められる肝肥大、胸腺萎縮ならびに体重増加抑制はLTB4処理では出現しなかった。これらの毒性指標で見る限りLTB4はその発現決定因子ではないことが示唆された。ダイオキシン長期投与による末梢神経伝導速度に対する作用の解析では、ダイオキシンを単回投与したラットのAβ線維では伝導速度の有意な低下が見られた。この低下は長期投与を行ったラットと有意な差は見られなかった。AδおよびC線維の伝導速度についての比較では有意差は見られなかった。
結論
2013年度は検診により新たに4名が油症患者と認定された。継続的に油症患者の臨床症状を把握しダイオキシン濃度との関連を分析・評価、また基礎実験でダイオキシンが生体に及ぼす影響・作用機序を研究することにより、総合的にダイオキシン類(短期・長期)曝露による影響の解明、また新しい治療薬の発見・開発につながると考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
208,701,000円
(2)補助金確定額
208,703,527円
差引額 [(1)-(2)]
-2,527円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 49,621,860円
人件費・謝金 24,447,063円
旅費 2,783,102円
その他 90,274,502円
間接経費 39,577,000円
合計 206,703,527円

備考

備考
支出が減額となった理由について)
理由:当初の予定より支出を抑えることができたため。
・複数回開催の研究班会議をメール会議で対応することができたため、
 旅費、その他(通信運搬費、会場借料、印刷費)の支出を抑えることができた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-