食品添加物等の遺伝毒性発がんリスク評価法に関する研究

文献情報

文献番号
201327022A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等の遺伝毒性発がんリスク評価法に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 續 輝久(九州大学大学院 医学研究院生体制御学講座)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部 )
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部 )
  • 増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部 )
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝毒性物質の作用には一般に閾値がないとされており、どのように微量であってもヒトに対してリスクを示すと考えられている。このため遺伝毒性を示す発がん物質にはADI が設定されず、行政上の規制が困難となる。本研究では、遺伝毒性陽性と判定された化学物質の発がんリスクを適切に評価することを目的とし、陽性反応を定量的に評価するための手法の開発と、陽性反応における閾値の発生機序の解明を目指す。
研究方法
文献調査:Hernandez(2011)の報告に基づきデータを収集、精査した。データを検索し、用量反応試験の選択基準と、用量反応試験の選択基準の設定、遺伝毒性BMD10値とがん原性BMD10値の比較に関する統計処理を行った。CPDB、NTPデータベースから芳香族アミンに関する発がん性とAmes試験の結果のデータを抽出した。OECDのReview Paper(2009) をもとに、TG試験データベースに追加した。また、2008年~2012年に厚生労働省が委託試験等で行ったTG試験データも追加した。
実験調査:4分子の8-oxodG付加体を含むターゲティングベクターは、荒川らの方法に従って作製した。ターゲティングベクターをトランスフェクションし、DNA付加体がゲノム内に入った細胞クローンを回収し、シーケンスを行い、その突然変異誘発スペクトルおよび頻度を決定した。臭素酸カリウム(0.05~0.15%溶液)を6~8週齢の野生型およびMutyh遺伝子欠損マウスに飲水投与した。4週間投与後、腸管からDNAを抽出し、突然変異解析を行った。グリシドール処理したラットのヘモグロビンサンプルのLC-MS/MSによるプロテオーム解析を行った。
結果と考察
遺伝毒性試験結果を定量的リスク評価に利用可能かどうかを検討するため、がん原性BMD10値とTG試験BMD10値比較したところ、正の相関が認められた。がん原性データがない化学物質の発がんリスクの評価にも、TG試験で得られたBMD10からの外挿が可能かもしれない。8-oxodGの変異原性は分子数に依存した変異頻度を示したが、必ずしも一時関数的増加は示さなかった。このことは8-oxodGの変異原性には閾値は存在しないが、効率的な修復により突然変異が抑制されることを示している。Mutyh遺伝子マウスへ臭素酸カリウムを投与する発がん実験系は、遺伝毒性に対する閾値形成機構について検討する上で有用な試験系であると考えられる。また、Mutyh遺伝子産物は酸化剤の遺伝毒性に関する「事実上の閾値」形成に貢献していると示唆される。ヒトに対して発がん性を示す28化合物について、Ames試験の比活性値と、TD50値の相関を調べたところ、高い相関性が得られた。一方、例外的なメカニズムを検出するシステムを検討する必要がある。既存のTG試験データが存在する128の発がん性物質、23の非発がん物質、68の発がん性未知物質についてデータベースに追加した。TG試験の判定と発がん性の有無の一致率は72.2%であり、他のin vivo試験と比較して高かった。TG試験は発がんのリスク評価に有用と判断される。LC-MSを用いた網羅的タンパクアダクトーム解析により、ラットヘモグロビンにおける新規のグリシドールアダクトとして、125番目のシステイン残基のアダクトを検出した。アルキル化剤の遺伝毒性の予測因子としての利用に期待が持たれる。
結論
本研究では遺伝毒性試験データをヒト発がんリスク評価に利用するために、遺伝毒性の量的反応性を考慮した手法の開発を目指す。エームス試験の比活性値と、TD50値には高い相関性が認められた。TG試験の判定と発がん性の有無の一致率は72.2%であり、発がんのリスク評価に有用と判断された。また、がん原性BMD10値とTG試験BMD10値には正の相関が認められた。がん原性データがない化学物質の発がんリスクの評価にも、TG試験で得られたBMD10から発がんリスク評価が可能かもしれない。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327022Z