事業場におけるメンタルヘルス対策を促進させるリスクアセスメント手法の研究 

文献情報

文献番号
201326018A
報告書区分
総括
研究課題名
事業場におけるメンタルヘルス対策を促進させるリスクアセスメント手法の研究 
課題番号
H25-労働-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原谷 隆史((独)労働安全衛生総合研究所)
  • 堤 明純(北里大学 医学部)
  • 吉川 徹(労働科学研究所 国際協力センター)
  • 島津 明人(東京大学 医学系研究科)
  • 小田切 優子(東京医科大学)
  • 錦戸 典子(東海大学 健康科学部)
  • 五十嵐 千代(東京工科大学 医療保健学部)
  • 森口次郎(一般財団法人京都工場保健会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、事業場における職業性ストレスのリスクアセスメントと改善の手法について、①事業場規模や業種等に対応した実効性のある複数のモデル枠組みを開発し、②中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクアセスメントおよび対策のためのツールおよびマニュアルを開発し、③モデル事業を実施し、職業性ストレスのリスクアセスメントの実施可能性、有効性、残された課題を明らかにし、④事業場における職業性ストレスのリスクアセスメント手法の普及・支援方策をまとめ提案することである。
研究方法
本年度は、①国内外における先行研究および報告書を文献的に検討し、中小規模事業場における対策のあり方を抽出した。また、類似の手法の応用が開始されている海外事例(英国、カナダ、オランダ)を調査するとともに、関連するWHOの主要資料を翻訳した。さらに、ポジティブ職場の視点からみた職業性ストレスのリスクアセスメントのあり方について海外情報、国内事例の収集を行った。その他、経営者、労働組合、専門職からなる関係者会議を開催し、討議を行った。②現行および新職業性ストレス簡易調査票の項目を見直し、より簡便で実効性のあるリスクアセスメントツールの開発を進めた。また職場巡視や視察において利用可能なリスクアセスメントツールの開発に着手した。職場環境改善ツールを見直し、現行の職場環境改善のヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)などのツールのほかに、簡易で利用しやすいツール開発の可能性を検討した。③京都市の中小規模事業場を対象に事前調査を行い、モデル事業実施の準備を行った。④職場メンタルヘルス対策の全体をPDCA型により実施する標準プログラムを開発するための検討を行った。
結果と考察
1. 国内外の文献を収集し、中小企業へのメンタルヘルスリスクアセスメントの応用可能性について検討した。海外事例として、自主改善型の英国、法規制型のオランダ、非政府組織による推進を行うカナダの先進事例について担当者を訪問または電話面接により情報収集しまとめたほか、カナダおよびWHOの資料を翻訳した。国内では、京都市の中小規模事業所の見学とヒアリング、東京都主催のメンタルヘルス対策シンポジウムへの参加を通じて、職場の強みを見い出し伸ばすための概念モデルと手法について資料を得た。中小規模事業場の現状を知る事業者、労働組合、専門職、研究者によるステークホルダー会議を開催し意見交換を行って認識を共有した。
2.化学物質管理や腰痛対策等のリスクアセスメントツールを参考にして、新職業性ストレス簡易調査票の項目をチェック項目にした職場のストレス対策用のリスクアセスメントツールの雛形を作成し、ステークホルダー会議でツールの改良点に関する助言を得た。また、新職業性ストレス簡易調査票とともに抑うつ症状などを測定している調査を用いて、実際の新職業性ストレス簡易調査票の回答データに基づいた項目分析を行い、修正を行ってリスクアセスメントチャートの雛形を作成した。その他、新しい改善ツールとして、①現場での意見交換を容易にする良好事例集、②提案方式のアクションリストと良い点・改善点シート(同時活用)、③改善計画シート(提案のまとめとその実施フォロー)の3点セットを開発した。
3.京都市の従業員50人未満規模の3つの事業場にて経営層にヒアリング調査を実施し、メンタルヘルスをはじめとする健康管理の現状把握を行った。これらの事業場の選定過程で職業性ストレスのリスクアセスメント手法のモデル事業の対象事業場候補も選考した。また、来年度からモデル事業場として依頼する東京都大田区内の事業場選定をおこなうとともに、好事例と思われる事業場に対し質的研究を開始した。
4.PRIMA-EFにもとづく職場の心理社会的リスク要因の改善と「労働者の心の健康の保持・増進のための指針」との間には多くの共通点があり、職場の心理社会的要因の改善よりもより広い視点の対策も取り入れてゆくこと、指針に基づく活動をよりPDCAに基づく活動となるよう普及・推進してゆくことの重要性が明らかになった。

結論
国内外の文献レビュー、専門家へのヒアリング、事業場の見学、ステークホルダー会議を通じて、中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策のあり方について、有用な情報が得られた。また、中小規模事業場でも適応可能な職業性ストレスのリスクアセスメントおよび対策のためのツールの原版が開発された。これらのツールを使用したモデル事業を実施するための事前調査が行われ、モデル事業の候補事業場が選定された。職場のメンタルヘルス対策の全体をPDCA型による実施するための情報が収集され、標準プログラムを開発するための準備が整った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201326018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,088,226円
人件費・謝金 195,180円
旅費 1,005,298円
その他 798,180円
間接経費 920,000円
合計 4,006,884円

備考

備考
銀行利息 106円、自己資金 6,778円をあてた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-