システマティックレビューを活用した診療ガイドラインの作成と臨床現場におけるEBM普及促進に向けた基盤整備

文献情報

文献番号
201325053A
報告書区分
総括
研究課題名
システマティックレビューを活用した診療ガイドラインの作成と臨床現場におけるEBM普及促進に向けた基盤整備
課題番号
H24-医療-指定-051
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科 健康情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学大学院工学系研究科)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学理工学術院)
  • 水流 聡子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内のEBM、診療ガイドラインは導入期を過ぎ、社会的認知が高まりつつあるが、診療ガイドラインの一層の普及・適正利用の推進に向けて解決すべき新たな課題も数多く生じている。2011年には米国医学研究所(IOM)が診療ガイドラインの新たな定義として、「システマティックレビューに基づく推奨」であることを明示したが、国内では診療ガイドラインとシステマティックレビューの連携は十分ではない。国内の状況を踏まえつつ、世界的な方向性に齟齬の無いガイドライン作成・普及の方法を確立する必要がある。本課題の成果は厚生労働省委託事業による公益財団法人医療機能評価機構Mindsにも積極的に提供し、連携して国内のEBM/診療ガイドライン普及・推進に取り組む。
研究方法
課題に応じて文献研究、疫学研究、ワークショップ等の方法を適用する。EBMを用いた診療ガイドラインの作成・利用は国内外で一般化しつつある。その伝統的な役割は臨床家・患者の意思決定支援であるが、医療の社会的信頼の再生に向け、診療ガイドラインの新しい役割、可能性を探る意義は大きい。本研究は診療ガイドライン、EBMの視点から、今日の医療の諸課題を明確化し、今後の医療施策の方向性を提示する。全体を2年計画として、診療ガイドラインに関連する横断的課題を申請者が包括的に取り扱うと共に、各分担研究者が連携しつつ、それぞれの専門的課題に取り組む。研究終了時に、公開フォーラムを開催して、成果還元と、今後に向けた意見交換の場を設定する。
結果と考察
近年診療ガイドライン、システマティックレビューの作成方法として注目されているGRADEシステムを検討し、同システムがEBM的に精緻であるが発展途上で今後も変化する可能性のあること、適切な使用には十分な臨床疫学・EBMの知識が求められることから、国内での診療ガイドライン作成への導入には人的資源の面で慎重な検討を要すること、まずコクラン共同計画等を通してシステマティックレビューを理解・実施できる人材育成が各臨床領域で必要となることを指摘した。日本神経学会、日本消化器病学会、日本内視鏡外科学会等の診療ガイドライン策定に継続して専門的助言を行ない、作成を支援した。既存診療ガイドラインと質指標(Quality Indicator:QI)のデータベースを活用し、修正デルファイ法によって心臓リハビリテーションと院内助産のQIを開発(各13指標と25指標)し、その成果を2013年8月International Guideline Network Conference (San Francisco, USA)で報告。PCAS(患者状態適応型パス)と診療ガイドラインの連携モデル、エビデンス診療ギャップのデータ蓄積と診療ガイドライン開発者への情報還元を連環させる「診療ガイドライン改善プロセスモデル」を提示し、モデル医療機関で試行を進めた。法律的課題では診療ガイドラインが言及された裁判の事例検討を進めた。費用対効果分析の政策決定に貢献することの有用性と限界を検討し、レビューと費用対効果分析の第三者機関による拠点形成、医療技術評価としての位置づけ、レビューチームによる疫学データの整理・提供とモデル構築チームとの連携という技術的・組織ガバナンス的な工夫の必要を示した。本研究班の活動は適宜、公益財団法人日本医療機能評価機構Minds(厚生労働省委託事業)と連携した。公開フォーラムを2014年1月11日に開催、2013年9月28日、PCAPS研究会シンポジウム「PCAPSの実装と臨床分析」を開催した。日本医療機能評価機構Mindsの各種委員として本研究班の成果の提供に努め、Minds診療ガイドライン作成ワークショップ(2013年8月3日)にチューターとして協力した。各学会(消化器病、神経、内視鏡外科、睡眠歯科、矯正歯科、関節リウマチ、未熟児新生児、緩和医療、画像診断、統合医療、臨床栄養、耳科、小児内分泌、抗癌化学療法に伴う腎障害のガイドライン作成委員会、日本歯科医学会ガイドライン収載ライブラリー部会等)で臨床家への情報提供、ガイドライン外部評価を実施した。
結論
本研究班で取り組んだ課題は、多様な領域で進められている診療ガイドラインのすべてに共通し、その基盤を成す。社会的な視点で医療の質向上を目指す後続の研究や診療ガイドライン作成に、今後、幅広く応用できるものである。EBM・診療ガイドラインを巡る国内外の動向は変化が著しい。コクランレビュー・GRADE法の認知の広がり、費用対効果分析の扱い、診療データベースの発展、医療者の生涯教育・プロフェッショナリズム教育の必要性など、継続して取り組むべき課題が明らかにされた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325053B
報告書区分
総合
研究課題名
システマティックレビューを活用した診療ガイドラインの作成と臨床現場におけるEBM普及促進に向けた基盤整備
課題番号
H24-医療-指定-051
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科 健康情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学大学院工学系研究科)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学理工学術院)
  • 水流 聡子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内のEBM、診療ガイドラインは導入期を過ぎ、社会的認知が高まりつつあるが、診療ガイドラインの一層の普及・適正利用の推進に向けて解決すべき新たな課題も数多く生じている。2011年には米国医学研究所(IOM)が診療ガイドラインの新たな定義として、「システマティックレビューに基づく推奨」であることを明示したが、国内では診療ガイドラインとシステマティックレビューの連携は十分ではない。国内の状況を踏まえつつ、世界的な方向性に齟齬の無いガイドライン作成・普及の方法を確立する必要がある。本課題の成果は厚生労働省委託事業による公益財団法人医療機能評価機構Mindsにも積極的に提供し、連携して国内のEBM/診療ガイドライン普及・推進に取り組む。
研究方法
課題に応じて文献研究、疫学研究、ワークショップ等の方法を適用する。EBMを用いた診療ガイドラインの作成・利用は国内外で一般化しつつある。その伝統的な役割は臨床家・患者の意思決定支援であるが、医療の社会的信頼の再生に向け、診療ガイドラインの新しい役割、可能性を探る意義は大きい。本研究は診療ガイドライン、EBMの視点から、今日の医療の諸課題を明確化し、今後の医療施策の方向性を提示する。全体を2年計画として、診療ガイドラインに関連する横断的課題を申請者が包括的に取り扱うと共に、各分担研究者が連携しつつ、それぞれの専門的課題に取り組む。研究終了時に、公開フォーラムを開催して、成果還元と、今後に向けた意見交換の場を設定する。
結果と考察
コクラン共同計画の資源を活用したシステマティックレビューのセミナーを実施(2012年8月に日本疫学会と共催)。小児科領域・代替医療領域のシステマティックレビューに取り組んだ。GRADE法を検討し、同法がEBM的に精緻であるが発展途上で今後も変化する可能性のあること、適切な使用には十分な臨床疫学・EBMの知識が求められることから、国内での診療ガイドライン作成への導入には人的資源の面で慎重な検討を要すること、まずコクラン共同計画等を通してシステマティックレビューを理解・実施できる人材育成が各臨床領域で必要となることを指摘した。日本神経学会、日本消化器病学会、日本内視鏡外科学会等の診療ガイドライン策定に継続して専門的助言を行ない、作成を支援した。修正デルファイ法によって心臓リハビリテーションと院内助産の質指標(Quality Indicator:QI)を開発(各13指標と25指標)し、その成果を2013年8月International Guideline Network Conference (San Francisco, USA)で報告。PCAS(患者状態適応型パス)と診療ガイドラインの連携を進める「診療ガイドライン改善プロセスモデル」を提示し、モデル医療機関で試行を進めた。レセプトデータベースを用いて慢性肝障害における肝癌スクリーニング検査の実施状況を検討。診療ガイドラインが言及された裁判の事例検討を進めた。費用対効果分析の政策決定に貢献することの有用性と限界を検討し、第三者機関による拠点形成、医療技術評価としての位置づけ、レビューチームによる疫学データの整理・提供とモデル構築チームとの連携という技術的・組織ガバナンス的な工夫の必要を示した。本研究班の活動は適宜、公益財団法人日本医療機能評価機構Mindsと連携した。公開フォーラムを2013年2月24日、2014年1月11日に開催、PCAPS研究会と協力して2012年9月22日、2013年3月2日、2013年9月28日、PCAPS研究会シンポジウム「PCAPSの実装と臨床分析」を開催した。
結論
本課題では世界的動向の中で日本の現状と課題を捉え、医療の質や安全、社会における信頼構築、医療資源の適正配置などの重要な政策的課題に応えるために、診療ガイドラインを巡る諸課題に取り組んだ。以下にその主な成果を挙げる
・診療ガイドライン作成方法の展望とGRADE法の検討、各学会でのシステマティックレビューを行える人材育成の必要性 ・QI開発のためのエビデンスレビューと総意形成手法の統合(修正デルファイ法)・エビデンス診療ギャップの定量的評価法としてのレセプトデータベースの活用 ・患者状態適応型パス(PCAPS)との連携による「診療ガイドライン改善プロセスモデル」を提示 ・費用対効果分析の保健医療政策の意思決定に貢献することの有用性と限界の提示 ・診療ガイドラインを巡る法律的解釈の課題 
社会的な視点で医療の質向上を目指す後続の研究や診療ガイドライン作成に、本課題の成果は幅広く応用できることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325053C

収支報告書

文献番号
201325053Z