WHOのチェックリストを用いた日本版「手術安全簡易評価システム」の開発と適応に関する研究

文献情報

文献番号
201325039A
報告書区分
総括
研究課題名
WHOのチェックリストを用いた日本版「手術安全簡易評価システム」の開発と適応に関する研究
課題番号
H25-医療-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 相馬 孝博(公益財団法人日本心臓血圧研究振興附属榊原記念病院)
  • 古家 仁(奈良県立医科大学附属病院)
  • 菊地 京子(東邦大学医療センター大橋病院)
  • 富永 隆治(九州大学大学院医学研究院循環器外科学)
  • 松浦 博(静岡県立大学経営情報学部)
  • 池田 哲夫(静岡県立大学経営情報学部)
  • 鈴木 明 (浜松医科大学医学部附属病院医療安全管理室)
  • 高橋 英夫(名古屋大学医学系研究科)
  • 鳥谷部 真一(渋木 真一)(新潟大学危機管理本部危機管理室)
  • 藤澤 由和(静岡県立大学経営情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 WHOにより手術安全に関するガイドラインの公表がなされ、関心が高まる一方で、依然として手術関連の重大な事故は発生しており、課題は単なるガイドラインから、評価の運用が問題となっている。さらに手術の安全性向上は、量的にもその深刻さにおいても最重要課題であると言えるが、より具体的かつ実践的な対策を行うための基盤が必要である。
 これまで研究代表者を中心にMie-NOTSS-Easy-Assessment-System(MENAS)を開発し、その内容が我が国に適合的なものであることはもとより、簡便性や永続性を加味した評価システムの構築を検討してきた。
 そこで本研究は、こした知見に基づいて、手術安全チェックリストを簡易かつ効果的に実施しうるシステムを構築し、その利用に際して実践的なものであることを目指して、世界的にその利用が急速に広まりつつあるWHOの手術安全チェックリスト(Surgical Safety Checklist)を基盤に、我が国において適合的かつ簡便な手術安全評価システムを構築し、その普及を全国的に促すことを目的とした。
研究方法
 「周術期のノンテクニカルスキルを中心とした医師の振る舞いについて、簡便性・永続性を担保しながら、評価するシステムを開発すること」、「WHO SSCの導入が医師の振る舞いに与える影響を評価すること」、そして、「本システムによって、WHO SSCの遵守状況の評価が可能か否かを検証すること」を当該年度における検討事項とし、まず、MENASの評価項目について、研究分担者を中心に検討をおこなった。ついで、実施施設として、①WHO SSCが導入されている施設、②WHO SSCの導入前後で比較検討が可能な施設、③WHO SSCが導入されていない施設を選定し、MENASによる評価を実施した。
 また、当該課題の論理的側面および実際の課題に関して、海外における当該課題に関する文献の収集と分析、および当該領域における専門家らへのヒヤリングなどを実施した。
結果と考察
 WHO SSCの導入済施設では、自己紹介は既に定着した手順となっているが、導入前施設ではほとんど行われておらず、WHO SSC導入に際して、遵守率等を評価する指標となりうる。またノンテクニカルスキルの評価に相当する項目である、入室時の振る舞い、術中の振る舞い、術後のあいさつのすべての項目においてWHO SSCの導入により有意に好ましい振る舞いが増加している。
 術前のブリーフィング、術後のデブリーフィングは周術期の患者安全対策として有効であり、ノンテクニカルスキルの評価指標として、適切であると考えられた。ただし、評価指標としての汎用性、永続性については、デブリーフィングについて評価は困難なことが多いという評価者の意見には留意が必要である。またデブリーフィングはわが国の周術期の患者安全対策として最も定着していない行為の一つであるとことも評価の難しさと関係している可能性を指摘しうる。
 術中の振る舞いについてはほとんどが好ましい振る舞いであるが、逆に最も未熟なノンテクニカルスキルである破壊行為の検出するための指標として有効である。
結論
 本研究における結論として、入室時の振る舞い、術中の振る舞い、術後のあいさつといったこれらの項目はWHO SSC において直接関係している内容ではないのであるが、WHO SSC の導入による間接的な効果でノンテクニカルスキルも向上したと考えられる。また、術前に自己紹介を行うことによって、チーム全体のコミュニケーションがよくなったとの声も聞かれた。
 手術安全チェックリストを簡易かつ効果的に実施しうるシステムとして、MENAS を開発した。本システムが周術期のノンテクニカルスキルの評価指標、あるいは、WHO SSC の遵守状況の評価としておおむね有用であると考えられるが、更なるデータを集積し、検討を重ねていくことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201325039Z