文献情報
文献番号
201324159A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床症状を伴う前頭縫合早期癒合症の病因・病態と診断・治療に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-難治等(難)-指定-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮嶋 雅一(順天堂大学 医学部脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
- 柿谷 正期(立正大学 心理学部)
- 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学)
- 下地 一彰(順天堂大学 医学部脳神経外科)
- 下地 武義(順天堂大学 医学部脳神経外科)
- 富永 大介(琉球大学 教育学部)
- 樋之津 史郎(岡山大学病院 新医療研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
前頭縫合の早期縫合で生じる軽度三角頭蓋は、一般的には形態異常による臨床症状は発現しないと考えられているが、下地らは頭蓋形成術を行った後、臨床症状に改善を認めた症例を数多く報告している。この症例の持つ臨床症状は主に前頭葉機能不全によるものと捉えられ、頭蓋形成術により、この発達障害を改善することで患児本人のみならず、患児の家族に対する心理的、経済的負担を軽減する可能性がある。しかしこれまで報告された症例の有効性の評価は、客観的指標を用いた第3者による評価では無く、また診断基準も曖昧であった。その為、頭蓋形成術の有効性の評価と診断基準を明確にする目的で、軽度三角頭蓋症例に対する頭蓋形成術の有効性を前方視的多施設共同研究により評価を行った。
研究方法
単施設による先行研究;対象は、触診にて前額部から前頭正中部に骨性隆起を認め、頭部CTにて前頭縫合早期癒合を確認できる症例で、年齢は2歳から5歳の28例(男;26、女;3)である。本年度は術前と術後6ヶ月でのDQの変化と術中の頭蓋内圧との関係を検討した。
前方視的多施設共同研究;統一プロトコールを作成し、 2012年10月1日より症例の登録を開始した。その後プロトコールに従い術前に2回の臨床心理士による客観的評価を行い、共通の手術手技による減圧的頭蓋形成術を施行、術後3か月と6か月に評価を行った。評価項目は1、新版K式発達検査 2、国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査 3、日本語版CBCL (Child Behavior Checklist) 4、広汎性発達障害日本自閉症協会評定度(Pervasive Developmental Disorders Autism Society Japan Rating Scale: PARS)5、母親の養育態度を用いた。主要エンドポイントは、術後6か月DQの改善と精神運動発達の改善で、副次エンドポイントは、重篤な有害事象の発生である。
前方視的多施設共同研究;統一プロトコールを作成し、 2012年10月1日より症例の登録を開始した。その後プロトコールに従い術前に2回の臨床心理士による客観的評価を行い、共通の手術手技による減圧的頭蓋形成術を施行、術後3か月と6か月に評価を行った。評価項目は1、新版K式発達検査 2、国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査 3、日本語版CBCL (Child Behavior Checklist) 4、広汎性発達障害日本自閉症協会評定度(Pervasive Developmental Disorders Autism Society Japan Rating Scale: PARS)5、母親の養育態度を用いた。主要エンドポイントは、術後6か月DQの改善と精神運動発達の改善で、副次エンドポイントは、重篤な有害事象の発生である。
結果と考察
単施設による先行研究;術前と比較して術後6ヶ月にDQが改善した郡と改善しなかった郡に分けて検討すると、術中の頭蓋内圧が15mmHg以上と未満ではDQの改善に有意差は認めなかった。すなわち術中の頭蓋内圧のみでは、術後の臨床症状の改善を予見できなかった。
前方視的多施設共同研究;2012年10月より2013年12月までに、発達障害を伴う軽度三角頭蓋が疑われる15例の患児が登録された。そのうち手術が終了し、術後6か月の発達検査が終了した患児は8 例で、未だ統計学的解析が可能な症例数には達していない。そこで、本年度は個々の症例について個別に検討した。術後6ヶ月にDQの改善を認めた例は、術前の頭部単純撮影で最大眼窩外側の幅/最大頭蓋冠の幅の比が0.6未満で、前頭部横径と比較して頭頂後頭部横径の拡張を認め、形態的に三角形を呈していた。一方DQの改善を認めなかった例は、術前の頭部単純撮影で最大眼窩外側の幅/最大頭蓋冠の幅の比が0.6以上と頭頂後頭部横径の拡張は認めず、形態的にも楕円形を呈していた。また、DQの改善を認めた例は、術中の頭蓋内圧は15mmHg以上であった。DQの改善が認められなかった例では、術中頭蓋内圧が15mmHg未満であった。
従来、軽度三角頭蓋の症例には臨床症状の発現は稀であるとされてきたが、言語発達遅滞、多動や自閉傾向などの臨床症状を持つ患児が多く存在し、頭蓋形成術で症状の軽減が計られると報告されている。更に、軽度三角頭蓋患児の90%以上に術中の頭蓋内圧測定で頭蓋内圧亢進を認め、この病態の臨床症状の発現には、前頭蓋の狭小化による前頭葉の絞扼に関連すると考えられる。自閉症スペクトラムを例にとると、患児の脳の容積は、正常児の脳容積と比較すると、大きいことが報告されている。更に、自閉症スペクトラムでは前頭葉弁蓋部の血流低下と成人期の症例では、この部位の皮質容積の減少(萎縮)が報告されている。三角頭蓋で最も脳が絞扼を受ける部位は前頭葉の弁蓋部であり、三角頭蓋が前頭葉の発達に負の影響を及ぼしている可能性が示唆される。以上のことから、前頭葉の絞扼の解除を目的とする減圧的頭蓋形成は、前頭葉の発達によりよい環境を提供することになると予想される。
前方視的多施設共同研究;2012年10月より2013年12月までに、発達障害を伴う軽度三角頭蓋が疑われる15例の患児が登録された。そのうち手術が終了し、術後6か月の発達検査が終了した患児は8 例で、未だ統計学的解析が可能な症例数には達していない。そこで、本年度は個々の症例について個別に検討した。術後6ヶ月にDQの改善を認めた例は、術前の頭部単純撮影で最大眼窩外側の幅/最大頭蓋冠の幅の比が0.6未満で、前頭部横径と比較して頭頂後頭部横径の拡張を認め、形態的に三角形を呈していた。一方DQの改善を認めなかった例は、術前の頭部単純撮影で最大眼窩外側の幅/最大頭蓋冠の幅の比が0.6以上と頭頂後頭部横径の拡張は認めず、形態的にも楕円形を呈していた。また、DQの改善を認めた例は、術中の頭蓋内圧は15mmHg以上であった。DQの改善が認められなかった例では、術中頭蓋内圧が15mmHg未満であった。
従来、軽度三角頭蓋の症例には臨床症状の発現は稀であるとされてきたが、言語発達遅滞、多動や自閉傾向などの臨床症状を持つ患児が多く存在し、頭蓋形成術で症状の軽減が計られると報告されている。更に、軽度三角頭蓋患児の90%以上に術中の頭蓋内圧測定で頭蓋内圧亢進を認め、この病態の臨床症状の発現には、前頭蓋の狭小化による前頭葉の絞扼に関連すると考えられる。自閉症スペクトラムを例にとると、患児の脳の容積は、正常児の脳容積と比較すると、大きいことが報告されている。更に、自閉症スペクトラムでは前頭葉弁蓋部の血流低下と成人期の症例では、この部位の皮質容積の減少(萎縮)が報告されている。三角頭蓋で最も脳が絞扼を受ける部位は前頭葉の弁蓋部であり、三角頭蓋が前頭葉の発達に負の影響を及ぼしている可能性が示唆される。以上のことから、前頭葉の絞扼の解除を目的とする減圧的頭蓋形成は、前頭葉の発達によりよい環境を提供することになると予想される。
結論
先行研究では、短期的には減圧的頭蓋形成術後に、患児の精神運動発達が改善する事が明らかになった。しかし、自然歴との比較が無いため、手術の有効性につての結論は未だ出ていない。前向き多施設共同研究のプロトコールの適格基準のみでは、手術により改善する例としない例が混在していた。手術有効例を選択する為には、形態学的基準及び頭蓋内圧や頭蓋内コンプライアンンスなどの生理学的基準を、診断基準に加える必要があると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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