先天性腎尿路異常を中心とした小児慢性腎臓病の自然史の解明と早期診断・腎不全進行抑制の治療法の確立

文献情報

文献番号
201324133A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性腎尿路異常を中心とした小児慢性腎臓病の自然史の解明と早期診断・腎不全進行抑制の治療法の確立
課題番号
H25-難治等(難)-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石倉 健司(東京都立小児総合医療センター 腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 雅敬(東京都立小児総合医療センター )
  • 上村 治(あいち小児保健医療総合センター 腎臓科)
  • 大橋 靖雄(東京大学医学系研究科 公共健康医学専攻生物統計学分野)
  • 服部 元史(東京女子医科大学医学部 腎臓小児科)
  • 田中 亮二郎(兵庫県立こども病院 腎臓内科)
  • 中西 浩一(和歌山県立医科大学 小児科)
  • 伊藤 秀一(国立成育医療研究センター 腎臓・リウマチ・膠原病科)
  • 中井 秀郎(自治医科大学 小児泌尿器科)
  • 濱崎 祐子(東邦大学医学部 小児腎臓学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,これまでに確立した小児CKDのコホートを用いて前向きの追跡調査を継続し,小児CKDの中長期の予後(末期腎不全への進行および生命予後)を明らかにすることである.さらに,小児CKDの適切な診断がなされることを目的に,小児腎臓科医のみならず広く小児医療に携わる医師を対象にした,[小児慢性腎臓病(小児CKD)診断時の腎機能評価の手引き](以下腎機能評価の手引き)を作成する.
研究方法
小児CKDコホートの追跡調査は,年次調査を行い小児CKD患者の末期腎不全への進行を明らかにし,さらに原疾患がCAKUTである患者の泌尿器科的合併症について情報を収集する.
また,小児腎臓病学会の小児CKD対策委員会(以下CKD対策委員会)がこれまで確立した,本邦の血清クレアチニン(Cr),シスタチンC,β2ミクログロブリン(β2MG)の基準値や,我々日本小児CKD研究グループが確立したスクリーニングのための小児CKDステージ判定表と,CrやシスタチンCに基づくGFRの推算式を利用して腎機能障害を診断する,腎機能評価の手引きを作成する.腎機能評価の手引き作成は,小児科学会,小児泌尿器科学会,小児腎臓病学会の協力のもとに行い,小児腎臓病の専門家のみならず広く小児科診療に携わる医師を対象に周知する.
結果と考察
結果:年次調査の結果,コホート確立時(2010年4月)のステージに基づきリスク分類し,ステージ3,ステージ4,ステージ5の3年腎生存率はそれぞれ90.8%,48.9%,10.4%であった.また447人のコホート中278人がCAKUTであり,その中の112人にVURを合併していた.原疾患がCAKUTである278人の腎生存率を,VURの有無で比較すると,ステージ3で,VUR(+)94.2%,VUR(-)95.7%,ステージ4で,VUR(+)55.6%,VUR(-)46.5%,ステージ5で,VUR(+)25%,VUR(-)0%であり,各ステージともVURの有無で差が無かった(ログランク検定).
小児科学会,小児泌尿器科学会,小児腎臓病学会の協力のもと腎機能評価の手引きを作成した.腎機能評価の手引きは, Cr,シスタチンC,β2MGを組み合わせた腎機能評価のアルゴリズムを中心とし,腎臓専門医以外にも広く普及することを目指す構成とした.現在各学会と調整し,上記3学会の学術集会で配布するとともに,各学会のホームページでもダウンロード可能となる予定である.
考察:CAKUTを中心とする小児CKDの3年腎生存率を明らかにした.ステージ4の3年腎生存率が約50%であり,ステージ4以上の小児CKDは急速に末期腎不全に進行する疾患であることが明らかになった.一方CAKUT患者のVUR合併率は高いが,VURの有無で末期腎不全進行に差が無かった.しかし本コホート研究は,ステージ3以上のCKDを対象としており,より早期ではCKD進行に差がある可能性は否定できず,今後の検討を要する.
腎機能評価の手引きは,広く腎臓専門医以外への普及を目指しており,より早期の小児CKD診断に結びつくことが期待される.
結論
アジア圏で唯一となる小児CKD患者から構成されるコホートにより,3年のフォローアップデータを収集し,腎予後(末期腎不全への進行)を明らかにした.また腎機能評価の手引きが,今後小児CKDの早期診断と適切な介入に結びつくことが期待される. 

公開日・更新日

公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30

行政効果報告

文献番号
201324133C

収支報告書

文献番号
201324133Z