文献情報
文献番号
201324131A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の消化管機能障害に関する周産期背景因子の疫学調査研究
課題番号
H25-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 宏臣(兵庫医科大学 医学部 外科学 小児外科)
研究分担者(所属機関)
- 田口 智章(九州大学大学院 医学研究院 小児外科学分野)
- 漆原 直人(静岡県立こども病院 小児外科)
- 早川 昌弘(名古屋大学医学部付属病院 総合周産期母子医療センター 新生児部門)
- 横井 暁子(兵庫県立こども病院 小児外科)
- 武 浩志(神奈川県立こども医療センター 外科)
- 白石 淳(大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
- 藤永 英志(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科)
- 大橋 研介(日本大学医学部付属板橋病院 小児外科)
- 大藤 さとこ(大阪市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
【研究目的】極低出生体重児の壊死性腸炎(NEC)、胎便関連性腸閉塞(MRI)、特発性腸穿孔(FIP)、胎便性腹膜炎(MP)などの消化管機能異常は児の生命予後、長期予後に多大な影響を及ぼす。これら4疾患に関連した周産期背景因子を解析することにより、各疾患の発症危険因子を明らかにすることを目的とした。
研究方法
【研究方法】NICUならびに小児外科を擁する国内主要11施設で、2003年1月から2012年12月までの過去10年間に極低出生体重児(出生体重1500g以下)に発生した消化管機能障害である4疾患(NEC、FIP、MRI、MP)に対して開腹手術を施行した症例を対象とした。母体の関連因子ならびに児の関連因子を診療録よりデータを後方視的に収集した。各症例について、在胎期間と出生体重を合わせた2例の消化管機能障害非手術例を対照群として、症例対照研究を行った。データ解析にあたっては、症例と対照における各要因の分布を比較(特性比較)して、特性比較で差を認めた要因について、conditional logistic regression modelによりオッズ比(OR)および95%信頼区間(95% CI)を算出した。以上の解析を全対象症例 vs. matched controlのみならず、NEC、FIP、MRI、MPをそれぞれ対象として同様の解析を行うことで、疾患ごとの発症危険因子を検討した。なお連続変数の集計データは平均±標準偏差(SD)で表し、p<0.05を統計学的有意差ありとした。
結果と考察
【結果】国内10施設から登録を得た症例150例、対照 293例の合計443例のデータを解析対象とした。対象症例の疾患内訳は、NEC 44例、MRI 42例、FIP 47例、MP 9例、その他 8例であった。疾患群と対照群の在胎期間は、それぞれ26.7±2.5週、26.5±2.6週、出生体重は790±256g、794±257gであり、マッチング変数とした在胎期間および出生体重は両群間で差はみとめなかった。疾患全体の発症危険因子として、院外出生OR=2.74(1.43-5.24)、双胎OR=2.38(1.44-3.93)、母体ステロイド投与OR= 0.53(0.33-0.87)、性別(女児)OR= 0.64(0.42-0.96)、サーファクタント投与OR= 3.51(1.70-7.23)、胎便排泄遅延OR= 2.34(1.46-3.76)、経腸栄養(母乳)OR= 0.14(0.07-0.30)などとの関連がみられた。疾患別危険因子として、NECで双胎、男児、RDS、サーファクタント投与、動脈管開存、FIPで院外出生、MRIで母体ステロイド非投与、前期破水、サーファクタント投与、胎便排泄遅延、などの因子が明らかとなった。
【考察】今回の研究では、消化管機能障害の発症に関連がみられた因子として、出生前母体因子(院外出生↑、双胎↑、ステロイド投与↓)、出生から発症までの因子(女児↓、サーファクタント投与↑、胎便排泄遅延↑、グリセリン浣腸↓、経腸栄養↓、Probiotics投与↓、消化管出血の既往↑、交換輸血↑)などとの関連性が明らかとなった。院外出生、双胎、サーファクタント投与例、胎便排泄遅延、交換輸血施行例はハイリスク群として慎重なフォローが必要である。一方、母体へのステロイド投与、グリセリン浣腸、経腸栄養(母乳)、Probiotics投与は発症リスクを減らす可能性があり、予防法の確立につながると考えられた。疾患別の検討ではNEC、FIP、MRIでそれぞれ異なった発症危険因子が明らかとなり、それぞれが異なった病態であることが明らかになった。この結果より、疾患別のハイリスク群の設定や予防法の確立が期待できる。
今後手術所見や穿孔部の病理組織所見、予後との関連因子、さらには疾患ごとの詳細な解析を行ってゆく方針である。これらの検討を加えることにより、疾患別の発症関連因子や病態、予後に関する因子がよりいっそう明らかとなり、各疾患の診療ガイドラインの作成、診断基準の確立が期待できる。
【考察】今回の研究では、消化管機能障害の発症に関連がみられた因子として、出生前母体因子(院外出生↑、双胎↑、ステロイド投与↓)、出生から発症までの因子(女児↓、サーファクタント投与↑、胎便排泄遅延↑、グリセリン浣腸↓、経腸栄養↓、Probiotics投与↓、消化管出血の既往↑、交換輸血↑)などとの関連性が明らかとなった。院外出生、双胎、サーファクタント投与例、胎便排泄遅延、交換輸血施行例はハイリスク群として慎重なフォローが必要である。一方、母体へのステロイド投与、グリセリン浣腸、経腸栄養(母乳)、Probiotics投与は発症リスクを減らす可能性があり、予防法の確立につながると考えられた。疾患別の検討ではNEC、FIP、MRIでそれぞれ異なった発症危険因子が明らかとなり、それぞれが異なった病態であることが明らかになった。この結果より、疾患別のハイリスク群の設定や予防法の確立が期待できる。
今後手術所見や穿孔部の病理組織所見、予後との関連因子、さらには疾患ごとの詳細な解析を行ってゆく方針である。これらの検討を加えることにより、疾患別の発症関連因子や病態、予後に関する因子がよりいっそう明らかとなり、各疾患の診療ガイドラインの作成、診断基準の確立が期待できる。
結論
【結論】消化管機能障害の発症に関連がみられた因子は、母体の関連因子(院外出生↑、双胎↑、母体ステロイド投与↓)、児の関連因子(女児↓、サーファクタント投与↑、胎便排泄遅延↑、経腸栄養(母乳)↓)であった。疾患別発症危険因子は、NEC:双胎、男児、母体へのステロイド未投与、RDS、サーファクタント投与、動脈管開存;FIP:院外出生;MRI:母体へのステロイド未投与、前期破水、サーファクタント投与、胎便排泄遅延であった。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30