文献情報
文献番号
201324129A
報告書区分
総括
研究課題名
コフィン・サイリス症候群の分子遺伝学的解析と診断・治療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-難治等(難)-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 紀子(横浜市立大学 医学部 遺伝学教室)
研究分担者(所属機関)
- 松本 直通(横浜市立大学大学院 医科学研究科)
- 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
コフィン・サイリス症候群(Coffin-Siris syndrome: CSS, MIM #135900)は、重度の知的障害、成長障害、特異的顔貌(疎な頭髪、濃い眉と睫毛、厚い口唇など)、手足の第5指の爪および末節骨の無~低形成を主徴とする疾患である。ほとんどが孤発例であるが、家族例や同胞例の報告も散見されるため、常染色体優性遺伝形式、常染色体劣性遺伝形式の両方が想定されている。2012年に我々は、常染色体優性遺伝形式のCSSの責任遺伝子としてSMARCA4, SMARCB1, SMARCE1, ARID1A, ARID1Bを同定した。更にSMARCA2変異がCSSの類似疾患であるNicolaides-Baraitser症候群 (以下NCBRS) に同定された。よって、これら一連の疾患はSWI/SNF複合体のシグナル異常により発症すると考えられている。SWI/SNF複合体遺伝子の内、今回同定した5遺伝子のヘテロ接合変異によりCSSの約8割は説明できるが、残りの2割の原因は不明である。そこで、我々は新規の疾患遺伝子を同定する為、本研究ではそれらの遺伝的要因を解明することを第一の目的とした。更に、疾患遺伝子ごとに表現型の相違が示唆されることから、遺伝子型・表現型の関連性を明らかにする。また、CSSの明確な診断基準は存在せず、診療ガイドラインも適切なものが存在しないため、遺伝子診断で確定した症例の知見から、CSSの診断基準や診療ガイドラインを作成することを第二の目的とした。
研究方法
1.症例集積
国内外から症例の集積を行った。その際、52項目の臨床症状のチェックリストの記載と写真(顔、手足の末端など)の提供協力を各診療医に依頼した。
2.ターゲットリシークエンスによる変異解析
SWI/SNF複合体を形成すると報告されていた21遺伝子を標的として、HaloPlex (Agilent)とMiSeq (Illumina) を用いてターゲットリシークエンスを行った。
3.全エキソームシークエンス (WES) を用いた新規責任遺伝子の特定
SureSelect All Human Exon kit (Agilent)でゲノム分画を行い、HiSeq2000 (Illumina)でWESを行った。まずは患者のみで全エクソーム解析を行い、既知の遺伝子内のバリアントの有無を確認した。バリアントがある場合には、Sanger法で検証を行った。更に、両親検体を解析しde novo変異であるか否かを検証した。新規遺伝子同定を目的に、変異陰性例に対してトリオ解析を行い2症例以上に共通してde novo変異を認める遺伝子を検索した。
4.遺伝子型・表現型関連性の検証と診断基準の確立
分担研究者・岡本により自験例および報告例のデータを詳細に分析した。
国内外から症例の集積を行った。その際、52項目の臨床症状のチェックリストの記載と写真(顔、手足の末端など)の提供協力を各診療医に依頼した。
2.ターゲットリシークエンスによる変異解析
SWI/SNF複合体を形成すると報告されていた21遺伝子を標的として、HaloPlex (Agilent)とMiSeq (Illumina) を用いてターゲットリシークエンスを行った。
3.全エキソームシークエンス (WES) を用いた新規責任遺伝子の特定
SureSelect All Human Exon kit (Agilent)でゲノム分画を行い、HiSeq2000 (Illumina)でWESを行った。まずは患者のみで全エクソーム解析を行い、既知の遺伝子内のバリアントの有無を確認した。バリアントがある場合には、Sanger法で検証を行った。更に、両親検体を解析しde novo変異であるか否かを検証した。新規遺伝子同定を目的に、変異陰性例に対してトリオ解析を行い2症例以上に共通してde novo変異を認める遺伝子を検索した。
4.遺伝子型・表現型関連性の検証と診断基準の確立
分担研究者・岡本により自験例および報告例のデータを詳細に分析した。
結果と考察
1.症例集積
本研究期間中に新たに国内外から43症例を集積し、計131症例を集積した。
2.ターゲットリシークエンスによる変異解析
本手法により、8例を解析したが、変異検出率が2/8(25%)と予想以上に低かった。非典型例も解析するようになったことが要因の一つと考えられた。WESの価格が低下してきたため、SWI/SNF複合体に限局せず網羅的な新規遺伝子検索を行う方が効率的であると考え、WESへ解析方法を移行した。
3.WESを用いた新規責任遺伝子の特定
ターゲットリシークエンスもしくはWESを行った106症例中65症例(61.3%)にCSSおよび類似疾患のNCBRSの既知の6遺伝子のいずれかに変異を認めた。変異陰性例に共通してde novo変異を有する遺伝子を検索し、CSSの新規遺伝子である遺伝子Aを同定した。
4.遺伝子型・表現型関連性の検証と診断基準の確立
変異の認めたられた遺伝子ごとに臨床像の違いを評価したところ、SMARCB1, SMARCE1, ARID1A変異陽性例は重症・最重症型を示す傾向があり、SMARCA4, SMARCA2, ARID1B変異陽性例は多様な表現型をとる傾向があることが分かった。また、更に症例を追加・評価し、CSSの診断と治療に有用な“Coffin-Siris症候群診療ガイドライン”を作成した。
本研究期間中に新たに国内外から43症例を集積し、計131症例を集積した。
2.ターゲットリシークエンスによる変異解析
本手法により、8例を解析したが、変異検出率が2/8(25%)と予想以上に低かった。非典型例も解析するようになったことが要因の一つと考えられた。WESの価格が低下してきたため、SWI/SNF複合体に限局せず網羅的な新規遺伝子検索を行う方が効率的であると考え、WESへ解析方法を移行した。
3.WESを用いた新規責任遺伝子の特定
ターゲットリシークエンスもしくはWESを行った106症例中65症例(61.3%)にCSSおよび類似疾患のNCBRSの既知の6遺伝子のいずれかに変異を認めた。変異陰性例に共通してde novo変異を有する遺伝子を検索し、CSSの新規遺伝子である遺伝子Aを同定した。
4.遺伝子型・表現型関連性の検証と診断基準の確立
変異の認めたられた遺伝子ごとに臨床像の違いを評価したところ、SMARCB1, SMARCE1, ARID1A変異陽性例は重症・最重症型を示す傾向があり、SMARCA4, SMARCA2, ARID1B変異陽性例は多様な表現型をとる傾向があることが分かった。また、更に症例を追加・評価し、CSSの診断と治療に有用な“Coffin-Siris症候群診療ガイドライン”を作成した。
結論
本年度内にCSS新規症例43症例を集積し、遺伝子解析の結果、総計106症例中65例に6つの既知遺伝子のいずれかに変異を同定した。変異陰性例の詳細な解析により、CSSの新規遺伝子Aを同定した。また、遺伝子変異と臨床症状のエビデンスを集積し、遺伝子型・表現型関連性をまとめることができた。更に、本研究班でCoffin-Siris症候群診療ガイドラインを策定し、今後最適な診断基準作成に向けての端緒ができたと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30