網膜色素変性治療をめざした経強膜ウノプロストン徐放法の開発

文献情報

文献番号
201324105A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜色素変性治療をめざした経強膜ウノプロストン徐放法の開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-067
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 俊明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 徹(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 西澤 松彦(東北大学 大学院工学研究科)
  • 梶 弘和(東北大学 大学院工学研究科)
  • 永井 展裕(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
55,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、血管新生を伴う網膜疾患に対し薬剤の硝子体内注射が有効であることが判明し、網膜疾患も薬剤治療の対象に考えられるようになった。しかし、頻回な硝子体内注射は合併症などが問題となっている。仮に有効な薬剤が発見されても慢性の経過をとる網膜疾患に対して現状の眼内投与法では実用化が難しい。一方我々は初期バーストなしに長期間、網膜に薬剤徐放可能なデバイスを開発した。デバイス移植は眼内ではなく結膜下(強膜上)であるため安全性も高く、問題が生じた場合はすぐに摘出できる。アドヒアランスの問題点も解決し、適切な薬剤さえあれば様々な網膜疾患や眼疾患以外にも利用できる利点がある。今回は、このデバイスにBKチャンネル活性化による網膜保護の可能性があるウノプロストン(UNO)を持続的に徐放し網膜色素変性の進行抑制の非臨床POC取得をめざす。
研究方法
24年度の継続と26年度内に非臨床POC取得し、27年度は医師(企業)治験を開始することを目指す。東北大学内臨床研究推進センター、治験センター、PMDA等より評価を受ける。
①デバイス規格決ー24年度からの継続(阿部、永井、西澤):デバイスからのウノプロストンの徐放量等はほぼ決定しているが、歩度まりを100%にできる条件を探すとともに、保存状態、滅菌方法を決定する。
②毒性試験、局所刺激試験:24年度にこれらの一部はNon-GLPであるが外部委託でおこなった。今年度は長期間のデバイス移植を行い、眼科学的検査を行うが、特に網膜機能(網膜電図(ERG))と形態(光干渉断層計(OCT))で網膜への副作用の可能性を確認する。
③24年度は網膜変性抑制の薬効は光障害網膜変性と遺伝子変異網膜変性モデル(S334terSDラット)で検討したが、今年度は大型動物として遺伝性網膜変性ウサギ(ロドプシンの変異(Pro347Leu))を利用して保護効果を確認する。網膜変性の機序はそれぞれ異なると考えられる。
④眼球や網膜構造が小動物とは異なる大型動物として遺伝性網膜変性ウサギでの検討を予定し、本デバイスのヒトへの効能確認に近づける。(阿部、永井、大浪)。
結果と考察
①デバイスの大まかな規格決定(阿部、永井、西澤):24年度の検討でデバイスの歩留まり率100%の作製条件は、デバイスはTEG100%、薬剤徐放膜・薬剤ペレット化はPEG/TEG40%でウノプロストン濃度は最大500mg/mlと考えられた。今年度は保存と滅菌の検討を加えた。PBS中保存では37℃で目的の濃度の薬剤徐放が確認できた。23℃保存ではわずかな徐放が見られたが、4℃保存でデバイスからの徐放はほぼ見られなかった。蛋白質なしのPBS中では温度の上昇とともに徐放速度が変化するのが判明した。保存は室温以下が望ましいと考えられる。一方、デバイスの滅菌はEOGガス滅菌、電子線、γ線を試みたが、いずれでも滅菌が可能であった。しかし、電子線、γ線はデバイスの色に変化が見られたためにEOGガス滅菌が最適と判断された。また、どの滅菌方法を使用しても滅菌後のUNO徐放量は非滅菌に比較して変化はなかった。
②デバイスはヒト用デバイス前段階として大型動物であるウサギを利用して移植を行った。今年度は3ヶ月移植時点での網膜内でのウノプロストン濃度が測定できた。6ug/日徐放デバイス移植3か月の時点でのウノプロストン濃度はそれ以前に測定した網膜内濃度よりも減少していたが、ウノプロストン点眼2時間後と同レベル以上の濃度が維持されていた。
また、正常ウサギに同デバイスを移植後6カ月まで経過観察したが、ERGとOCTに移植眼との差は見られなかった。その他の眼科的検査でもデバイス非移植眼との差は見られなかった。
③次に遺伝性網膜変性ウサギに6ug/日徐放デバイス移植を行った後に網膜電図とOCTで経過観察を行った。生後5週のラットに移植後3ヶ月の時点で(網膜変性早期)有意にERG振幅低下がおさえられていた。
以上よりデバイスの保存方法と滅菌方法が決定し、デバイスの大まかな規格が決定したと言える。また、25年度の経過から考察すると、UNOを網膜に送達できれば、遺伝性網膜変性の進行を遅らせる可能性があることを示すことができたと考えられる。またデバイス移植は、高齢者は点眼を忘れることや、点眼などができない人への対応もできアドヒアランス向上につながることが予測される。
UNOは抗緑内障薬であるが、BKチャンネル活性化による中枢神経保護が動物実験で報告されたために、本薬剤をうまく網膜に作用させることができれば、様々な網膜疾患や神経疾患に適応できると考える。
結論
我々のデバイスは本来薬剤が持つ効果を局所で有効・安全に使用でき、UNOを徐放できればこれまで治療法のなかった網膜色素変性の新しい治療法開発になりえると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324105Z