文献情報
文献番号
201324088A
報告書区分
総括
研究課題名
小児新生児期における遺伝性血栓症(プロテインC異常症を含む)の効果的診断と治療予防法の確立に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-050
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,276,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児・周産期領域における遺伝性血栓症の臨床的意義を明らかにし、診療ガイドラインを作成する。周産母子と小児医療センターを拠点に母子の凝固線溶スクリーニングと遺伝子解析を行う。周産期医療関連施設を中心に血栓症を疑う神経眼病変患児のスクリーニングと遺伝子解析を行う。
研究方法
1)小児周産期領域の遺伝子解析情報
全国の総合・地域周産期母子医療センターの情報と3調査の結果から、遺伝子解析を積極的に継続する。同時に罹患家系の遺伝カウンセリングを遂行する。主治医と連携をとり家系の血栓予防を行う。新規症例発生ごとに順次実施する。
2)新生児と母体の診療管理
周産母子センター(母性、新生児)に入院した血栓性素因を疑う妊婦と児にスクリーニングと遺伝子診断を行い適切に診療する。必要に応じて家族解析を行う。
3)小児科における解析
新生児医療後方支援病院小児科の記録から、後方視的に血栓性素因疑い例を選定する。血栓性素因スクリーニングと遺伝子診断と家族解析を行う。TV会議などで診療連携を築く。新生児医療の支援施設である国立病院機構の協力を得る。
4)血栓性素因スクリーニング、遺伝子解析およびカウンセリング
PT, APTT, Fibrinogen, PIC, TAT, D-dimer, VIII:C, 抗Cardiolipin抗体, lupus-anticoagulant, PC・PS活性/抗原, AT活性, PIVKA, FⅦ・FⅧ活性, vWF活性, 血清脂質などをスクリーニングする。 PROS1 (15 exons), PROC (9 exons), SERPINC1 (7 exons)の翻訳とプロモーター領域を解析する。臨床遺伝医療部で遺伝カウンセリングを行う。
5)周産期領域の栓友病診療ガイドラインの作成
母子に効果的なスクリーニング項目を決定する。活性化PC・AT製剤補充の有用性を検討し、治療ガイドラインを作成する。
全国の総合・地域周産期母子医療センターの情報と3調査の結果から、遺伝子解析を積極的に継続する。同時に罹患家系の遺伝カウンセリングを遂行する。主治医と連携をとり家系の血栓予防を行う。新規症例発生ごとに順次実施する。
2)新生児と母体の診療管理
周産母子センター(母性、新生児)に入院した血栓性素因を疑う妊婦と児にスクリーニングと遺伝子診断を行い適切に診療する。必要に応じて家族解析を行う。
3)小児科における解析
新生児医療後方支援病院小児科の記録から、後方視的に血栓性素因疑い例を選定する。血栓性素因スクリーニングと遺伝子診断と家族解析を行う。TV会議などで診療連携を築く。新生児医療の支援施設である国立病院機構の協力を得る。
4)血栓性素因スクリーニング、遺伝子解析およびカウンセリング
PT, APTT, Fibrinogen, PIC, TAT, D-dimer, VIII:C, 抗Cardiolipin抗体, lupus-anticoagulant, PC・PS活性/抗原, AT活性, PIVKA, FⅦ・FⅧ活性, vWF活性, 血清脂質などをスクリーニングする。 PROS1 (15 exons), PROC (9 exons), SERPINC1 (7 exons)の翻訳とプロモーター領域を解析する。臨床遺伝医療部で遺伝カウンセリングを行う。
5)周産期領域の栓友病診療ガイドラインの作成
母子に効果的なスクリーニング項目を決定する。活性化PC・AT製剤補充の有用性を検討し、治療ガイドラインを作成する。
結果と考察
新生児・小児血栓症の診療指針の作成に関して、以下の点を明らかにした。
1)新規発症例の集積
全国から解析依頼をうけ、PC変異12人、PS変異2人およびAT変異6人を同定し、10歳までは未発症、16歳で発症したPCおよびPS複合へテロ変異例を各々確認した。従来の健常成人各因子活性から推定された日本人の3遺伝子変異保有率とは異なる割合で、小児期(とくに新生児期)のPC変異の重要性が示された(Haemophilia 19:378-84,2013)。新規診断例既報告例、疫学データを多面的に可能な限り照合し基盤データを整備した。
2)日本人小児における血栓性素因の遺伝的背景
全国調査から、5年間に小児血栓339人(後天性:先天性 4:1)を確認した。新生児は同時期に69人(NICU入院当たり0.063%)で過去5年から倍増し、先天性の6例は全てPC欠損症であった。PC欠損を伴う小児血栓症は、過去25年間に27 人(遺伝子診断は 1/3)で、遺伝子変異のない遅れて正常化する例を確認した。以上より、小児先天性血栓症の約70%は、3因子欠乏(PC 45%, PS 15%, AT 10%)で、成人血栓症の遺伝性素因と異なることを明らかにした。総合周産期センターに調査漏れが少ないことを確認した。
3)小児発症遺伝性血栓症の効果的診断
新生児から20歳までの307例に血栓性素因解析を行い、①血栓症は1歳未満が最も多い、②新生時期には頭蓋内病変によるPC異常症が多く、成人と異なる臨床像である、③各因子活性基準値の下限を年齢別4群に分けると効率的スクリーニングが可能である、ことを示した。
4)診療ガイドラインの作成
新生児血栓症の診療ガイドライン作成の基本骨子を作成し公聴会にて報告した。これを評価する全国ネットを確立した。補充療法に関する治療指針案を作成した。
三大抗凝固因子欠損症が血栓症の遺伝的素因として、臨床的に最も重要である。日本人小児を対象とすれば血栓症の遺伝的背景がより明確になると想定し、積極的に小児例に遺伝子解析を進め、2年間で予想以上に症例を集積した。小児患者から未発症の親が診断され新規家系が発見された。一方、変異がなく活性上昇の成熟機転が遅れる児が確認されたことは、新たな多元的要因が推定された。
1)新規発症例の集積
全国から解析依頼をうけ、PC変異12人、PS変異2人およびAT変異6人を同定し、10歳までは未発症、16歳で発症したPCおよびPS複合へテロ変異例を各々確認した。従来の健常成人各因子活性から推定された日本人の3遺伝子変異保有率とは異なる割合で、小児期(とくに新生児期)のPC変異の重要性が示された(Haemophilia 19:378-84,2013)。新規診断例既報告例、疫学データを多面的に可能な限り照合し基盤データを整備した。
2)日本人小児における血栓性素因の遺伝的背景
全国調査から、5年間に小児血栓339人(後天性:先天性 4:1)を確認した。新生児は同時期に69人(NICU入院当たり0.063%)で過去5年から倍増し、先天性の6例は全てPC欠損症であった。PC欠損を伴う小児血栓症は、過去25年間に27 人(遺伝子診断は 1/3)で、遺伝子変異のない遅れて正常化する例を確認した。以上より、小児先天性血栓症の約70%は、3因子欠乏(PC 45%, PS 15%, AT 10%)で、成人血栓症の遺伝性素因と異なることを明らかにした。総合周産期センターに調査漏れが少ないことを確認した。
3)小児発症遺伝性血栓症の効果的診断
新生児から20歳までの307例に血栓性素因解析を行い、①血栓症は1歳未満が最も多い、②新生時期には頭蓋内病変によるPC異常症が多く、成人と異なる臨床像である、③各因子活性基準値の下限を年齢別4群に分けると効率的スクリーニングが可能である、ことを示した。
4)診療ガイドラインの作成
新生児血栓症の診療ガイドライン作成の基本骨子を作成し公聴会にて報告した。これを評価する全国ネットを確立した。補充療法に関する治療指針案を作成した。
三大抗凝固因子欠損症が血栓症の遺伝的素因として、臨床的に最も重要である。日本人小児を対象とすれば血栓症の遺伝的背景がより明確になると想定し、積極的に小児例に遺伝子解析を進め、2年間で予想以上に症例を集積した。小児患者から未発症の親が診断され新規家系が発見された。一方、変異がなく活性上昇の成熟機転が遅れる児が確認されたことは、新たな多元的要因が推定された。
結論
治療に関する情報には、コンセンサスさえ得られていないものが多いことが明らかになった。海外でも小児と新生児の血栓症診療ガイドラインが最近出始めたが、成人のエビデンスレベルには到底及ばない。新生児・小児期に発症する血栓症の遺伝的素因に関して、日本の分子疫学と臨床像を初めて明らかにした。一方、臨床像と治療管理法の違いなどから、血栓症の多い新生児期と思春期にわけたガイドライン作成の必要性が明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-