文献情報
文献番号
201324079A
報告書区分
総括
研究課題名
腎・泌尿器系の希少難治性疾患群に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-041
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 一誠(神戸大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 森貞 直哉(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野こども急性疾患学部門)
- 中西 浩一(和歌山県立医科大学小児科)
- 関根 孝司(東邦大学医学部小児科)
- 塚口 裕康(関西医科大学第2内科)
- 野津 寛大(神戸大学医学部附属病院小児科学)
- 貝藤 裕史(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)
- 五十嵐 隆(国立成育医療研究センター)
- 竹村 司(近畿大学小児科)
- 四ノ宮 成祥(防衛医科大学校分子生体制御学講座)
- 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
- 仲里 仁史(熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
希少難治性腎・泌尿器系疾患群(以下、本疾患群)は、包括的な遺伝子診断ネットワークがないために、正確な診断を受けていない患者が多数存在し、その病態は不明な点が多く、原因遺伝子不明な疾患も存在し、大半は有効な管理・治療法がない。本研究班では、本疾患群の①全国疫学調査、②新規原因遺伝子同定、③包括的な遺伝子診断ネットワークの構築、④遺伝子型―表現型関連解析等の病態解析、⑤各疾患のiPS細胞作製等を行うことで、その病態を解明し治療法開発につなげることを目的とする。
研究方法
本研究の対象疾患とその担当は以下のとおりである。
① 先天性腎尿路奇形症候群
BOR 症候群、Renal-coloboma 症候群、Townes-Brocks 症候群:森貞
② 希少難治性糸球体疾患
Alport 症候群:中西、野津
Epstein 症候群:関根
Galloway-Mowat 症候群:塚口
Fibronectin 腎症:貝藤、飯島
③ 希少難治性尿細管疾患
尿細管性アシドーシス、Dent 病、Lowe 症候群:五十嵐
ネフロン癆:竹村
腎性低尿酸血症(尿酸トランスポーター異常症):四ノ宮
Batter/Gitelman症候群:貝藤
① 先天性腎尿路奇形症候群
BOR 症候群、Renal-coloboma 症候群、Townes-Brocks 症候群:森貞
② 希少難治性糸球体疾患
Alport 症候群:中西、野津
Epstein 症候群:関根
Galloway-Mowat 症候群:塚口
Fibronectin 腎症:貝藤、飯島
③ 希少難治性尿細管疾患
尿細管性アシドーシス、Dent 病、Lowe 症候群:五十嵐
ネフロン癆:竹村
腎性低尿酸血症(尿酸トランスポーター異常症):四ノ宮
Batter/Gitelman症候群:貝藤
結果と考察
平成25年度は、前年度に確立した研究班のホームページ(http://www.med.kobe-u.ac.jp/sgridk/)を介した遺伝性腎疾患相談及び遺伝子解析ネットワークが本格的に稼働し、小児腎臓専門医のみならず腎臓内科医からも多数の依頼を受けた。CAKUTとアルポート症候群に関する相談及び遺伝子解析依頼が最も多く、これまでの累計でそれぞれ150例を超える相談、遺伝子解析を行った。また、腎・泌尿器系の希少遺伝性疾患の79個の原因遺伝子に関して、次世代シークエンサーを用いて蛋白コーデイング全領域を網羅的に解析するシステムの設計・構築を行った。アルポート症候群については、診断精度向上を目指した新たな診断基準を作成した。また、各研究分担者により、各疾患の遺伝子型―表現型関連に関する多くの知見が得られた。なかでもアルポート症候群及びEpstein症候群に関しては、明らかな遺伝子型―表現型の関連が見いだされ、将来、分子治療法の応用も期待される。Galloway-Mowat症候群の原因遺伝子及び腎性低尿酸血症の新規原因遺伝子に関しては、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析などの最新の手法を用いて候補遺伝子を同定した。さらに、これまでGalloway-Mowat症候群、Alport症候群、4p monosomy、先天性ネフローゼ症候群のiPS細胞を作成することに成功しており、現在、6疾患についてiPS細胞樹立準備中である。Galloway-Mowat症候群に関しては、神戸大学、熊本大学、慶応大学の共同研究として、iPS細胞から神経系細胞に分化させ、形態や機能異常について検討中である。
結論
平成25年度の研究目的は、ほぼ達成できたと考えている。特に、遺伝性腎疾患相談及び遺伝子解析ネットワークの充実や疫学研究の成果は、臨床現場で直接活用される研究成果であり、研究班ホームページを介し本疾患群に対する一般医家や一般の方の認識や理解が深まることは、臨床現場や行政施策に間接的に活用される研究成果である。また、アルポート症候群などでは、遺伝子型―表現型の関連解析結果から分子治療法の開発につながるような知見を得ており、臨床現場や行政施策に直接的・間接的に反映する研究成果であると思われる。今後、未だに原因不明な疾患の原因遺伝子同定に重点的に取り組むとともに、さらなる遺伝子型―表現型関連解析やiPS細胞を用いた病態解析等の研究から得られた知見を新たな治療法開発につなげたい。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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