文献情報
文献番号
201324071A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性不整脈疾患の遺伝子基盤に基づいた病態解明と診断・治療法の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-難治等(難)-一般-033
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
清水 渉(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 稔(滋賀医科大学 内科学講座(循環器・呼吸器))
- 青沼 和隆(筑波大学 医学医療系)
- 蒔田 直昌(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 萩原 誠久(東京女子医科大学 循環器内科)
- 福田 恵一(慶應義塾大学 循環器内科)
- 吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
- 堀米 仁志(筑波大学 医学医療系)
- 住友 直方(日本大学医学部 小児科学)
- 田中 敏博(東京医科歯科大学 疾患バイオリソースセンター)
- 森田 宏(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 牧山 武(京都大学大学院 医学研究科)
- 渡部 裕(新潟大学医歯学総合病院 循環器内科)
- 林 研至(金沢大学大学院 医歯保健研究域医学系)
- 鎌倉 史郎(国立循環器病研究センター 臨床検査部)
- 白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
- 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部)
- 相庭 武司(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 関根 章博(国立循環器病研究センター ゲノム遺伝学)
- 中野 由紀子(広島大学 医歯薬学総合研究科)
- 宮内 靖史(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1.遺伝性不整脈疾患で遺伝子診断を施行し、遺伝情報と臨床情報との関連を検討し、遺伝子基盤に基づいた患者管理と治療法を開発する。
2.遺伝性不整脈疾患患者からiPS細胞由来心筋細胞を作製し、その機能解析を行うことにより、患者ごとのテーラーメイド治療や新たな病態解明をめざす。
3.次世代シーケンサを用いた網羅的全ゲノム解析・全エクソン(Exome)解析、ゲノムワイド関連解析(GWAS)などの最新の方法を用いて、新たな原因遺伝子の同定や各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子を同定する。
2.遺伝性不整脈疾患患者からiPS細胞由来心筋細胞を作製し、その機能解析を行うことにより、患者ごとのテーラーメイド治療や新たな病態解明をめざす。
3.次世代シーケンサを用いた網羅的全ゲノム解析・全エクソン(Exome)解析、ゲノムワイド関連解析(GWAS)などの最新の方法を用いて、新たな原因遺伝子の同定や各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子を同定する。
研究方法
臨床的に診断の確定した、先天性QT延長症候群(LQTS)、Brugada症候群、進行性心臓伝導障害(PCCD)、家族性徐脈症候群、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)、QT短縮症候群(SQTS)、早期再分極症候群(ERS)、特発性心室細動(IVF)、心房細動(AF)を対象とした。
1. 遺伝子変異、多型の同定
患者から同意を得た後に、遺伝子異常同定法(direct sequence法)を用いて、異常塩基の同定を行いアミノ酸変化を確認した。
2. 電気生理学的機能解析、疾患モデル、iPS細胞由来心筋細胞を用いた致死性不整脈の発生機序解明
通常のパッチクランプ法を用いた遺伝子変異機能解析とともに、遺伝性不整脈患者の皮膚線維芽細胞や血液細胞よりiPS細胞由来心筋細胞を作製し、機能解析を行った。
3. 次世代シーケンサを用いた新たな原因遺伝子と遺伝的修飾因子の同定
家族集積性を認めるが変異が同定されていない遺伝性不整脈家系について、Exome解析により塩基配列を同定し、(1)未知の原因遺伝子、(2)各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子を探求した。また、遺伝性不整脈疾患群と対照群でGWASを施行し、未知の原因遺伝子を探求した。
1. 遺伝子変異、多型の同定
患者から同意を得た後に、遺伝子異常同定法(direct sequence法)を用いて、異常塩基の同定を行いアミノ酸変化を確認した。
2. 電気生理学的機能解析、疾患モデル、iPS細胞由来心筋細胞を用いた致死性不整脈の発生機序解明
通常のパッチクランプ法を用いた遺伝子変異機能解析とともに、遺伝性不整脈患者の皮膚線維芽細胞や血液細胞よりiPS細胞由来心筋細胞を作製し、機能解析を行った。
3. 次世代シーケンサを用いた新たな原因遺伝子と遺伝的修飾因子の同定
家族集積性を認めるが変異が同定されていない遺伝性不整脈家系について、Exome解析により塩基配列を同定し、(1)未知の原因遺伝子、(2)各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子を探求した。また、遺伝性不整脈疾患群と対照群でGWASを施行し、未知の原因遺伝子を探求した。
結果と考察
1. 遺伝子変異、多型の同定と遺伝的基盤に基づいた病態解明や診断・治療法の開発
先天性LQTS患者では、H25年度に症例登録を追加し、1123例のデータベースとなり、遺伝子型・遺伝子変異部位別のリスク階層化および最適な治療法について報告した。その他の疾患では、Brugada症候群500例、胎児・新生児期・小児期の先天性LQTS 221例、PCCD78例、家族性徐脈症候群73例、CPVT80例、SQTS12例 、ERS54例、IVF83例、AF120例のデータベースとなり、国内外の多施設共同研究により遺伝情報と臨床情報との関連を詳細に検討した。清水と堀江は、米国、欧州、アジアの3大陸の不整脈学会で作成する遺伝性不整脈の診断基準・治療のConsensus Statement作成メンバーに選出され、Statementは3大陸の不整脈学会誌 (Heart Rhythm、Europace、J Arrhythmia) に掲載された。また、「日本循環器学会の「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン2013年度改訂版作成班」を作成し、2014年に公開予定である。
2. iPS細胞由来心筋細胞を用いた致死性不整脈の病態解明と新しい治療法の開発
先天性LQTS、Brugada症候群などの患者の皮膚・血液から作製したiPS細胞由来心筋細胞の機能解析を行い、不整脈発生機序を証明した。本難治性疾患研究班は、H24年度から文部科学省の再生医療実現化プロジェクト「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」の共同研究拠点課題の一つである『iPS細胞を用いた遺伝性心筋疾患の病態解明および治療法開発』(代表研究者・小室一成)の協力研究機関に指定され、同プロジェクトとの連携も取りながら活動した。
3. 新たな原因遺伝子と遺伝的修飾因子の同定
家族集積性を認めるが変異が同定されていない先天性LQTS、Brugada症候群、PCCD、ERS患者において次世代シーケンサを用いたExome解析を施行し、PCCDの2家系で、原因遺伝子候補として結合織関連遺伝子X,Yを同定した。また、既報の原因遺伝子変異が同定されない先天性LQTS家系でも、新規の原因遺伝子候補が同定され、変異として妥当性を検討中である 。さらに、GWASを用い、Brugada症候群で新規の原因遺伝子候補としてSCN10AとHEY2を同定した。
先天性LQTS患者では、H25年度に症例登録を追加し、1123例のデータベースとなり、遺伝子型・遺伝子変異部位別のリスク階層化および最適な治療法について報告した。その他の疾患では、Brugada症候群500例、胎児・新生児期・小児期の先天性LQTS 221例、PCCD78例、家族性徐脈症候群73例、CPVT80例、SQTS12例 、ERS54例、IVF83例、AF120例のデータベースとなり、国内外の多施設共同研究により遺伝情報と臨床情報との関連を詳細に検討した。清水と堀江は、米国、欧州、アジアの3大陸の不整脈学会で作成する遺伝性不整脈の診断基準・治療のConsensus Statement作成メンバーに選出され、Statementは3大陸の不整脈学会誌 (Heart Rhythm、Europace、J Arrhythmia) に掲載された。また、「日本循環器学会の「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン2013年度改訂版作成班」を作成し、2014年に公開予定である。
2. iPS細胞由来心筋細胞を用いた致死性不整脈の病態解明と新しい治療法の開発
先天性LQTS、Brugada症候群などの患者の皮膚・血液から作製したiPS細胞由来心筋細胞の機能解析を行い、不整脈発生機序を証明した。本難治性疾患研究班は、H24年度から文部科学省の再生医療実現化プロジェクト「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」の共同研究拠点課題の一つである『iPS細胞を用いた遺伝性心筋疾患の病態解明および治療法開発』(代表研究者・小室一成)の協力研究機関に指定され、同プロジェクトとの連携も取りながら活動した。
3. 新たな原因遺伝子と遺伝的修飾因子の同定
家族集積性を認めるが変異が同定されていない先天性LQTS、Brugada症候群、PCCD、ERS患者において次世代シーケンサを用いたExome解析を施行し、PCCDの2家系で、原因遺伝子候補として結合織関連遺伝子X,Yを同定した。また、既報の原因遺伝子変異が同定されない先天性LQTS家系でも、新規の原因遺伝子候補が同定され、変異として妥当性を検討中である 。さらに、GWASを用い、Brugada症候群で新規の原因遺伝子候補としてSCN10AとHEY2を同定した。
結論
遺伝性不整脈疾患の遺伝子診断を施行し、遺伝情報と臨床情報を含むデータベースを蓄積した。先天性LQTS、Brugada症候群などの患者からiPS細胞由来心筋細胞を作製し、不整脈発生機序を証明した。先天性LQTS、Brugada症候群、PCCD、ERS患者では、Exome解析を施行し、新規の原因遺伝子候補が同定した。また、Brugada症候群でGWASを施行し、新規の原因遺伝子候補としてSCN10AとHEY2を同定した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-