希少難治性てんかんに関する調査研究 

文献情報

文献番号
201324067A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性てんかんに関する調査研究 
課題番号
H24-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 廣瀬 伸一(福岡大学医学部 小児科学)
  • 小国 弘量(東京女子医大 小児科)
  • 井上 有史(静岡てんかん神経医療センター)
  • 柿田 明美(新潟大学脳研究所 神経病理学)
  • 須貝 研司(国立精神・神経医療研究センター 小児神経診療部)
  • 白石 秀明(北海道大学 小児科)
  • 中里 信和(東北大院医 てんかん科)
  • 山本 仁(聖マリアンナ医科大学 小児科学)
  • 亀山 茂樹(国立病院機構西新潟中央病院)
  • 高橋 幸利(静岡てんかん・神経医療センター)
  • 永井 利三郎(大阪大学大学院 小児神経学)
  • 小林 勝弘(岡山大学付属病院 小児神経学)
  • 馬場 啓至(国立病院機構長崎医療センター 脳外科)
  • 池田 昭夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 渡辺 英寿(自治医科大学脳神経外科)
  • 馬場好一(静岡てんかん・神経医療センター 脳外科)
  • 齊藤 祐子(国立精神・神経医療研究センター 臨床検査部)
  • 佐々木 征行(国立精神・神経医療研究センター 小児神経診療部)
  • 開道 貴信(国立精神・神経医療研究センター 脳神経外科診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
26,204,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 希少難治性てんかんの多くは、乳幼児・小児期にてんかん性脳症を来たし重篤な脳機能障害と発達の停止・退行など破局的な発達予後に至るため、破局てんかん(catastrophic epilepsy)とも呼ばれるが、一方適切な診断と早期のてんかん外科治療等により良好な予後が得られる場合もある。成因の多くは遺伝学的背景に基づく脳形成異常・神経機能異常と考えられるが、病因不明で既存の症候群分類にあてはまらない症例も少なくない。多くの症例が長期的には重度の発達障害など不良な予後をたどるため生涯にわたる社会経済学的負担は大きく、最新の画像診断と遺伝子診断を組み入れた診療体制の確立、外科適応例の早期発見、及び遺伝子解析に基づく疾患分類の見直しと新規治療法の開発が喫緊の課題と考えられる。
本研究班では、H21~23年度に行われた東アジア国際共同研究(FACE study)で構築されたweb症例登録システムを基に、全国規模の「稀少難治性てんかんレジストリ(仮称)」を発足させることを目的として研究が行なわれた。
研究方法
 対象とする疾患は、1.新生児期に発病するてんかん、2.大田原症候群(EIEE)、3.早期ミオクロニー脳症、4.West症候群、5.Doose症候群(MAE)、6.Dravet症候群(SMEI)、7.女児に限局する発達障害を伴うてんかん(EFME)、8.遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、9.Lennox-Gastaut症候群、10.睡眠時てんかん放電重積状態をもつてんかん脳症、11.Landau-Kleffner症候群、12.Tassinari症候群、13.進行性ミオクローヌスてんかん(PME)、14.片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群(HHE)、15. Aicardi症候群、16.Rasmussen症候群、17.Sturge-Weber症候群、18.傍シルビウス症候群、19.片側巨脳症、20.限局性皮質異形成、21.視床下部過誤腫、22.異形成性腫瘍、23.海馬硬化症、24.結節性硬化症、25.環状20番染色体てんかん症候群、26.GLUT1欠損症、27. Rett症候群である。
結果と考察
 H24~25年度においては、稀少難治てんかん27疾患の疾患概念と診断基準及び診療マニュアルを記載した「稀少難治てんかん診療の手引き」を刊行するとともに、WEB登録システム(RES-R: Rare Epilepsy Syndrome Registry)の基盤構築(説明同意書、登録票、追跡票、情報サイトの作成)を行った。レジストリへの登録は患者・家族の同意を得て医師(主治医)がWEB入力で行い、2年目以降の更新も、同意を得て医師が行うこととした。
 また各地方で行った予備調査の結果、27疾患の人口10万人あたりの患者数は、中部7県の調査で4.43人(県別で3.1~11.9人)、東北地方で3.7人、九州地方で8.2人であり、小児慢性特定疾患治療事業のデータ(代表3疾患で新規が年間380例、新規と継続を合わせ3025例か)ら推測すると、27疾患合計の患者数は、全国で5,000~10,000症例で、年間の新規登録数は500~1,000例程度と予測された。
結論
 今後、詳細調査項目を組み込んだWEB入力画面およびデータ蓄積システムを完成させ、WEBにて匿名化されたデータは名古屋医療センター臨床研究センター(臨床中核病院)にて集積・管理・分析する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324067B
報告書区分
総合
研究課題名
希少難治性てんかんに関する調査研究 
課題番号
H24-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 須貝 研司(国立精神・神経医療研究センター 小児神経診療部)
  • 小国 弘量(東京女子医大 小児科)
  • 井上 有史(静岡てんかん神経医療センター)
  • 廣瀬 伸一(福岡大学医学部 小児科学)
  • 柿田 明美(新潟大学脳研究所 神経病理学)
  • 白石 秀明(北海道大学 小児科)
  • 中里 信和(東北大院医 てんかん科)
  • 山本 仁(聖マリアンナ医科大学 小児科学)
  • 亀山 茂樹(国立病院機構西新潟中央病院)
  • 高橋 幸利(静岡てんかん・神経医療センター)
  • 永井 利三郎(大阪大学大学院 小児神経学)
  • 小林 勝弘(岡山大学付属病院 小児神経学)
  • 馬場 啓至(国立病院機構長崎医療センター 脳外科)
  • 池田 昭夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 渡辺 英寿(自治医科大学脳神経外科)
  • 馬場好一(静岡てんかん・神経医療センター 脳外科)
  • 齊藤 祐子(国立精神・神経医療研究センター 臨床検査部)
  • 開道 貴信(国立精神・神経医療研究センター 脳神経外科診療部)
  • 佐々木 征行(国立精神・神経医療研究センター 小児神経診療部)
  • 兼子 直(湊病院北東北てんかんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 希少難治性てんかんの多くは、乳幼児・小児期にてんかん性脳症を来たし重篤な脳機能障害と発達の停止・退行など破局的な発達予後に至るため、破局てんかん(catastrophic epilepsy)とも呼ばれるが、一方適切な診断と早期のてんかん外科治療等により良好な予後が得られる場合もある。成因の多くは遺伝学的背景に基づく脳形成異常・神経機能異常と考えられるが、病因不明で既存の症候群分類にあてはまらない症例も少なくない。多くの症例が長期的には重度の発達障害など不良な予後をたどるため生涯にわたる社会経済学的負担は大きく、最新の画像診断と遺伝子診断を組み入れた診療体制の確立、外科適応例の早期発見、及び遺伝子解析に基づく疾患分類の見直しと新規治療法の開発が喫緊の課題と考えられる。本研究班では、H21~23年度に行われた東アジア国際共同研究(FACE study)で構築されたweb症例登録システムを基に、全国規模の「稀少難治性てんかんレジストリ(仮称)」を発足させることを目的として研究が行なわれた
研究方法
 対象とする疾患は、1.新生児期に発病するてんかん、2.大田原症候群(EIEE)、3.早期ミオクロニー脳症、4.West症候群、5.Doose症候群(MAE)、6.Dravet症候群(SMEI)、7.女児に限局する発達障害を伴うてんかん(EFME)、8.遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、9.Lennox-Gastaut症候群、10.睡眠時てんかん放電重積状態をもつてんかん脳症、11.Landau-Kleffner症候群、12.Tassinari症候群、13.進行性ミオクローヌスてんかん(PME)、14.片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群(HHE)、15. Aicardi症候群、16.Rasmussen症候群、17.Sturge-Weber症候群、18.傍シルビウス症候群、19.片側巨脳症、20.限局性皮質異形成、21.視床下部過誤腫、22.異形成性腫瘍、23.海馬硬化症、24.結節性硬化症、25.環状20番染色体てんかん症候群、26.GLUT1欠損症、27. Rett症候群である。
結果と考察
 H24~25年度においては、稀少難治てんかん27疾患の疾患概念と診断基準及び診療マニュアルを記載した「稀少難治てんかん診療の手引き」を刊行するとともに、WEB登録システム(RES-R: Rare Epilepsy Syndrome Registry)の基盤構築(説明同意書、登録票、追跡票、情報サイトの作成)を行った。レジストリへの登録は患者・家族の同意を得て医師(主治医)がWEB入力で行い、2年目以降の更新も、同意を得て医師が行うこととした。また各地方で行った予備調査の結果、27疾患の人口10万人あたりの患者数は、中部7県の調査で4.43人(県別で3.1~11.9人)、東北地方で3.7人、九州地方で8.2人であり、小児慢性特定疾患治療事業のデータ(代表3疾患で新規が年間380例、新規と継続を合わせ3025例か)ら推測すると、27疾患合計の患者数は、全国で5,000~10,000症例で、年間の新規登録数は500~1,000例程度と予測された。
結論
 今後、詳細調査項目を組み込んだWEB入力画面およびデータ蓄積システムを完成させ、WEBにて匿名化されたデータは名古屋医療センター臨床研究センター(臨床中核病院)にて集積・管理・分析する予定である。
 本研究班は、全国規模の「稀少難治てんかんレジストリ」を発足させることを目標としており、
本レジストリの発足により、希少難治性てんかんの病因解明と新規治療法の開発に関する基礎的・臨床的研究が促進され、将来の我が国発のエビデンスの構築が期待される。また今後患者会とも連携し、研究成果の情報公開を推進することで、稀少難治性てんかん患者に対する医療支援体制の充実と、重篤な障害に至る患者が減少することによる社会経済学的効果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201324067C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 てんかんの臨床研究ではコホート研究が重要な意義をもつが、これまで乳幼児の稀少難治てんかんの治療予後に関するコホート研究が行われたことは国内外とも例がない。従って、今回我々が行ったFACE study(314登録症例)で、切除外科手術が有意な発作及び発達予後改善因子であることが示されたこと、学術的に極めて重要なエビデンスであり、今後の乳幼児期発症の稀少難治てんかんの診療ガイドラインを作成する上で、国際的にも重要な役割を果たすものと思われる。
臨床的観点からの成果
 本研究により、稀少難治てんかんの早期診断と早期治療、特に外科治療を軸とした診療指針が作成される社会的意義は大きい。今後本研究の研究成果を広めることで、重篤な発達障害に至る小児患者に対する医療及び経済的支援体制の充実と、適切な外科治療で発作が完治し生活の自立が可能となる事による社会経済学的効果が期待される。
ガイドライン等の開発
 稀少難治てんかんの診療マニュアルが出版され、効率的に全国の小児神経医師が適切な診断と治療を行う助けとなっている。
その他行政的観点からの成果
 本研究班では、全国規模の「稀少難治てんかんレジストリ」を発足させることを目標としており、本レジストリの運用により、希少難治性てんかんの病因解明と新規治療法の開発に関する基礎的・臨床的研究が促進され、将来の我が国発のエビデンスの構築が期待される。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
68件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
27件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
NMDR抗体IgGサブクラス測定法の開発
詳細情報
分類:
特許番号: 2013-211813
発明者名: 高橋幸利、西村成子
権利者名: 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
取得年月日: 20151009

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oguni H, Otsuki T, Kobayashi K, et al.
Clinical analysis of catastrophic epilepsy in infancy and early childhood: Results of the Far-East Asia Catastrophic Epilepsy (FACE) study group.
Brain Dev , 35 (8) , 786-792  (2013)
原著論文2
Otsuki T, Honda R, Takahashi A, et al.
Surgical management of cortical dysplasia in infancy and early childhood.
Brain Dev , 35 (8) , 802-809  (2013)
原著論文3
Honda R, Kaido T, Sugai K, et al.
Long-term developmental outcome after early hemispherotomy for hemimegalencephaly in infants with epileptic encephalopathy.
Epilepsy Behav , 29 (1) , 30-35  (2013)

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324067Z