患者および患者支援団体等による研究支援体制の構築に関わる研究

文献情報

文献番号
201324056A
報告書区分
総括
研究課題名
患者および患者支援団体等による研究支援体制の構築に関わる研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 操(特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら 研修事業部)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
  • 井手口 直子(帝京平成大学薬学部薬学科)
  • 伊藤 史人(一橋大学情報統括化本部情報基盤センター)
  • 井村 修(大阪大学人間科学研究科)
  • 川口 有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学遺伝子医療センター)
  • 佐藤 達哉(立命館大学大学院文学部)
  • 執印 太郎(高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 高橋 美枝(医療法人高田会高知記念病院)
  • 立岩 真也(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
  • 中山 優季(公財)東京都医学総合研究所難病ケア看護室)
  • 松田 純(静岡大学人文学部)
  • 水島 洋(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難病患者登録サイトを運営し、2012年は対象疾患を7疾患(脊髄性筋萎縮症、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、多発性硬化症・視神経脊髄炎、進行性骨化性線維異形成症、フォン・ヒッペル・リンドウ病)、筋萎縮性側索硬化症として登録を勧め、・難病知恵袋・病のライフヒストリーなどの機能について登録を勧めてきたが、2013年は対象疾患の拡大(7疾患→134疾患へ)を図り、ウェブサイト上でのアンケートをおこない、病気の自然歴、臨床経過に対する患者自身、家族の自己評価と語りを収集し、時間軸にそった質的な内容分析(contentanalysis)を行う。団体組織に属さない患者のナラティブも収集し、WEB不使用患者・家族へはアンケート用紙を使用し収集をおこなう。
研究方法
医療相談フォーラム(WEB上と面接)として、患者・家族、患者支援団体、専門医、その他医療従事者、ピアカウンセラー等により情報を収集、キーワード分析により、必要最低限の登録項目、患者および医療者の関心の高い項目、項目の関連性、療養の質(QOL)に影響する項目を抽出する。
上記を統合し、 個人単位での療養の工夫、医師などの医療従事者の説明の仕方の問題点の抽出、患者・家族のQOL向上に寄与する項目の抽出を行う。患者ごとのレジストリを基本としつつ、疾患・症状・療養ごとのレジストリとしても検索・分析できるようにする。患者・研究者双方から閲覧可能なレジストリを提供する。これらにより治療研究・治験におけるPRO評価の方法を確立する。
結果と考察
現行のWe are here(登録サイト)の入寮項目は患者にかかる負担が多く,有効回答数が減少すること、障害によってはサイトへの入力方法を工夫するなどアクセシビリティに対するきめ細かい配慮が必要なことがわかった。質問項目の選定と精緻化、アクセシビリティに課題が残された。
難病患者登録サイトへより多くの人の自発的・積極的な参加、情報提供を得るためには、まずそれが知られることが必要であり、また、患者自らが情報を提供するとともに自らが得られる情報が常に多く新しくあることが望ましい。 
そしてその情報の多くは公開されるべきものである。
今年度は登録者数こそ伸びなかったものの、病気の自然歴、臨床経過に対する患者自身、家族の自己評価と語りを収集し、時間軸にそった質的な内容分析(contentanalysis)、団体組織に属さない患者のナラティブを収集し、WEB不使用患者・家族へはアンケート用紙を使用し収集をおこなうことができた。
結論
医療相談や情報を収集、キーワード分析により、必要最低限の登録項目、患者および医療者の関心の高い項目、項目の関連性、療養の質(QOL)に影響する項目を抽出することは、立命館大学大学院の「生存学」のサイトと連携し、今後も継続して行っていくことにする。
個人単位での療養の工夫、医師などの医療従事者の説明の仕方の問題点の抽出、患者・家族のQOL向上に寄与する項目の抽出は、次年度も研究を継続する。そして患者ごとのレジストリを基本としつつ、疾患・症状・療養ごとのレジストリとしても検索・分析できるようにしていく。
本研究班で試行した患者登録サイトの立ち上げと患者によるアウトカム評価に関する研究は、あとしばらくは公的資金を得て一定の独立性と恒常性を有する研究として継続していくことが望ましいが、外部資金を投入しさらに対象疾患を拡大し、活動の拡大拡張を図っていく方針である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324056B
報告書区分
総合
研究課題名
患者および患者支援団体等による研究支援体制の構築に関わる研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 操(特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら 研修事業部)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
  • 井手口 直子(帝京平成大学 薬学部薬学科)
  • 伊藤 史人(一橋大学情報統括化本部・情報基盤センター)
  • 井村 修(大阪大学人間科学研究科)
  • 川口 有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学遺伝子医療センター)
  • 佐藤 達哉(立命館大学大学院文学部)
  • 執印 太郎(高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 高橋 美枝(医療法人高田会高知記念病院)
  • 立岩 真也(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
  • 中山 優季(公財)東京都医学総合研究所・難病ケア看護室)
  • 松田 純(静岡大学人文学部)
  • 水島 洋(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班としては、・疾患の枠を越えた難病患者の「語り」の集積であること。・複数の患者会が連携し主導する研究であること。・疾患の枠を超えて共通する課題の集積と分類と検索を可能とすること。・医学モデルと生活モデルの両輪で患者が自らの疾患の情報を提供・参照できることを目指す。

研究方法
患者ごとのレジストリを基本としつつ、疾患・症状・療養ごとのレジストリとして検索できるようにし、アンケート調査を実施した。期間:9月1日から継続中。目的:難病にかかっている人々の「語り」を集めて分析し、日常生活における多様なニーズを把握するとともに疾患の枠を越えて共有できる「患者主体の医療」のための指標(評価項目,PRO)を創造し、その指標をもちいて多様な難病患者の要望を整理し必要な支援を患者側から提案したり評価したりできるようにした。
本アンケート調査では、回答者の属性(疾患名,年齢,性別,既婚歴ほか),代理回答者の有無,および質問項目として10項目を設定した。なお,これらの質問項目の回答は,「はい・いいえ」の選択式となっており,「はい」と回答した場合には,自由記述による回答を要請した。
5)世界で標準化されつつあるPROの評価方法のうち日本に適用可能なものを翻訳した。
6)各種メーリングリストからの情報、新聞社・放送局の報道、研究報告・闘病記などを収集し、整理した上で、公開されるべきまた公開可能な情報を、HPに、メンバー限定の「患者情報登録サイト」と別に、時系列および各疾患別に掲載した。
結果と考察
自由記述によって得られた具体的な内容は、発症直後に関しては,「病気,医療機関に関する情報の不足」,「病気の進行に対する不安」,「仕事の継続,両立」に関する回答が多く寄せられたが,現在では「病気の進行と介護家族への負担」,「遺伝性疾患の子どもへの影響」,「医療費や生活費の問題」などが述べられた。「伝えたいことがある」と回答した者のうち「誰に」に関する回答は「同じ病気をもつ病者」が一番多く,次に「家族」,「社会(国)」が挙げられた。「何を伝えたいか」という回答については,病者に対しては,「治療方法や医療機関で受診する上での留意点」,「医療従事者との関係性」,「希望をもって生きること」などが挙げられた。家族に関しては,「感謝の気持ちや心遣い」,「病いとの向き合い方」などが挙げられた。社会(国)に対しては,「このような病気があることを認知してほしい」という意見が述べられた。
海外の登録サイトや医師主導型登録サイトと特に大きく異なる点は、生活上の工夫や自立を支援するための社会資源や制度についての情報交換や説明に対応する点、主観的QOL評価や薬歴チェック機能等、患者のニーズを組み込んでいく点であるが、これらは来年度より難病が法制化され、障害福祉の対象にもなることによる我が国の難病及び障害者施策の転換にも役立つ仕組みとなっていくはずである。
結論
自由記述を重視したアンケートでは短期間で多くの回答を得ることができ、SEI-QoLの結果と聞き取り調査、自由記述の分析等の結果、難病当事者は発病初期に困難感を持つ割合が高いが、長期にわたると困難感が減少する現象がみられた。疾患の進行によるADL悪化とQOL・生活困難度とは比例しない可能性がある。これは療養が長期にわたると有用な情報を収集できるようになり、希望も生まれ生活していける道を患者自らが探索できる可能性を示している。このことは既存のアウトカム評価では確認できない。そして「難治性疾患や障害が重度化していくこと(ADLの低下)とQOLは必ずしも比例しない」ことを衆知させ、難病医療に対する一般国民の理解を得ることは難病研究や難病政策を立案したり評価したりするうえでも大変に重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324056C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規の治療法や難病治療のアウトカム評価においては患者の報告するアウトカム評価(PRO評価)が重要である。当班では患者が登録した継続的個人的な体験をPROとして集積するシステムと、さらに医療の提供者がそれらの報告をPROとして理解し、難病におけるQOL概念の誤解を解く講義形式のプログラムを開発した。これにより、受講者は患者のQOL評価値が変化するレスポンスシフト現象の理解を深め、適切な臨床研究と臨床実践をおこなえるようになる。
臨床的観点からの成果
医師主導型登録サイトと違い、患者のPROを研究に活かすものとして患者自身が情報を登録することを想定して構築している。従来の国・医療従事者主体の登録システムでは断続的・間接的なデータ、個人情報保護のため手続きが煩雑な仕組み、客観的評価として正確性のあるデータであるという特徴に対して、患者主体の登録システムとして、連続的・直接的なデータ、情報の公開権限を患者が保有してること、主観的評価としてのデータ、であるという特徴があり、相互に補完する関係にある。
ガイドライン等の開発
とくになし
その他行政的観点からの成果
とくになし
その他のインパクト
「患者主体のQOL評価法「SEIQoL-DW」を学び活かす実習セミナー、「主観的評価が医療を変える
QOLの新しい実践」として、中島班と合同で各地で3回開催した。日本生命倫理学会、作業療法士学会、難病団体・患者会、ALS/MND INTERNATIONAL ALLIANCE等において日本の難病患者の登録サイトとして報告した。

発表件数

原著論文(和文)
34件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
57件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
77件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中山優季,井手口直子,川口有美子,橋本みさお,織田友理子
当事者と医療者による新しい医療の実践
日本難病看護学会誌 , 18 (2)  (2013)
原著論文2
中島孝
「治らない病気」と向き合える「告知」とは
日経ビジネス アソシエ , 12 (10)  (2013)
原著論文3
伊藤史人, 藤澤義之
オプティカルフローによる口文字盤支援システム
リハビリテーション工学研究会 , 28 (1) , 2-4  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2018-07-17

収支報告書

文献番号
201324056Z