難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業の成果を基にした原因遺伝子変異データベースの構築

文献情報

文献番号
201324049A
報告書区分
総括
研究課題名
難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業の成果を基にした原因遺伝子変異データベースの構築
課題番号
H24-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松田 文彦(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 省次(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 松原 洋一(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター 再生医療センター)
  • 松本 直通(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 山田 亮(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
  • 寺尾 知可史(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
  • 日笠 幸一郎(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
95,954,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒト疾患の解析に全ゲノムシークエンスが利用可能となったことで、稀少難治性疾患の原因遺伝子変異の情報が加速度的に蓄積されると考えられるが、効率的な研究の実施、医科学的価値の高い成果の創出、患者の適切な診断治療においては、疾患遺伝子情報を共有するシステムの構築が不可欠である。本課題は、稀少難治性疾患研究拠点が連携し、疾患と関連する遺伝子変異情報を集約・共有するためのデータベースを構築することを目標とする。 
研究方法
 厚労省「難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業(難病関係研究分野)」の各研究班に検体が集積された疾患を対象に、拠点と一般研究班の緊密な連携のもと、遺伝子リファレンスライブラリーの構築をおこなう。そのために、運営委員会を設立し事業計画の策定や制度設計等を行う。データベースに登録する情報の種類やフォーマットは運営委員会で策定し、公開用システムの構築を進める。データベースには、日本人遺伝子リファレンス情報・稀少難治性疾患の遺伝子変異情報を蓄積し、情報を広く公開することで科学的価値の高い成果を創造し、精度の高い診断、迅速な治療方針の決定による質の高い「個の医療」の実現に資する。
結果と考察
 運営委員会で策定された事業計画と設計制度に沿って最終目標に至るまで円滑な事業の推進が達成され、2013年11月12日に遺伝子リファレンスライブラリデータベースの公開に至った。本データベースは、公開から3 ヶ月で717,654 回のアクセスを得ており、疾患ゲノム解析への関心の高さ、含まれるゲノム情報の有用性が証明された。今後、様々な疾患でエクソーム関連解析が増加すると予測されるが、そのような研究の基盤として、さらに検体数・情報量をふやし、データベースの価値を高めることが重要である。
 日本人健常者集団のゲノム変異情報の集積は、3,248人の健常者の一塩基多型頻度情報に加え、1,208検体のエクソーム解析による各種ゲノム変異の頻度情報の蓄積し、ゲノム上の遺伝子をコードする領域に存在する、日本人の標準的な遺伝子情報とその正常なバリエーションを明らかにした。このデータベースを研究者が活用することによって、日本人での遺伝病の原因遺伝子の発見や、見出された変異が疾患発症に関わる可能性の評価・解釈、種々の病気になりやすい遺伝的体質の解明が大きく進展するものと期待される。これらの情報に加えて、新規に同定された遺伝子変異の機能的役割を解釈する上で付加価値の高い、遺伝子変異と遺伝子発現量の関連解析(eQTL)情報を加えることができた。ゲノムワイド関連解析等で同定された疾患関連変異について、機能的な解釈を考察するうえでも、重要なリソースである。これにより本研究事業で構築されるデータベースがさらに利用価値の高いものとなり、目標以上にデータベースの内容を充実させることができたと考えている。
 本データベースに登録した288,025個の遺伝子変異のうち、156,622個(54.4%)は、欧米の既存のデータベースには存在しない日本人特異的な新たな変異であり、そのうち88.6%は、日本人集団における頻度が0.5%以下の低頻度変異であった。また、95,020個(60.7%)のバリエーションはアミノ酸変化を伴い、タンパク質の機能に影響を与える変異であったことから、これらの日本人特異的ゲノム変異は、遺伝子の機能に関わる重要な変異の可能性が高く、難病に関連する遺伝子変異の効率的な探索に有用なリソースである。
 また、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)運営委員会との定期的会議により、提供するデータフォーマットの策定を進め、事業終了後のデータベースの長期的維持と管理体制を整えることができた。
結論
 研究拠点と一般研究班の緊密な連携のもと、運営委員会で策定された事業計画と制度設計に沿って計画通りに事業を推進し、2013年11月12日に遺伝子リファレンスライブラリーデータベースを公開した。本データベースの利活用により、疾患の原因変異究明のプロセスが飛躍的に向上することが期待できる。今後、日本人ゲノム変異データベースの検体数を増やすとともに、難病の遺伝子変異のデータベース登録を難病研究班にうながし、新たなデータの蓄積、機能の向上、維持管理などを継続的におこない、より充実したデータベースとすることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324049B
報告書区分
総合
研究課題名
難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業の成果を基にした原因遺伝子変異データベースの構築
課題番号
H24-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松田 文彦(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 省次(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 松原 洋一(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター 再生医療センター)
  • 松本 直通(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 山田 亮(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
  • 寺尾 知可史(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
  • 日笠 幸一郎(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒト疾患の解析に全ゲノムシークエンスが利用可能となったことで、稀少難治性疾患の原因遺伝子変異の情報が加速度的に蓄積されると考えられるが、効率的な研究の実施、医科学的価値の高い成果の創出、患者の適切な診断治療においては、疾患遺伝子情報を共有するシステムの構築が不可欠である。本課題は、稀少難治性疾患研究拠点が連携し、疾患と関連する遺伝子変異情報を集約・共有するためのデータベースを構築することを目標とする。
研究方法
 厚労省「難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業(難病関係研究分野)」の各研究班に検体が集積された疾患を対象に、拠点と一般研究班の緊密な連携のもと、遺伝子リファレンスライブラリーの構築をおこなう。そのために、運営委員会を設立し事業計画の策定や制度設計等を行う。データベースに登録する情報の種類やフォーマットは運営委員会で策定し、公開用システムの構築を進める。データベースには、日本人遺伝子リファレンス情報・稀少難治性疾患の遺伝子変異情報を蓄積し、情報を広く公開することで科学的価値の高い成果を創造し、精度の高い診断、迅速な治療方針の決定による質の高い「個の医療」の実現に資する。
結果と考察
 研究拠点の代表者による運営委員会を早期に設立し、具体的に提供されるデータフォーマットの標準化、データ提供方法・時期、公開範囲、公開の時期等について検討したことにより、一般研究班との連携がスムーズに確立されただけでなく、各研究班の実務担当者による協議も進み、運営委員会で策定された事業計画と設計制度に沿って最終目標まで円滑な事業の推進が達成され、2013年11月12日に遺伝子リファレンスライブラリデータベースの公開に至った。
 本データベースには、日本人遺伝子リファレンス情報(3,248人の健常者のSNP頻度情報、1,208検体のエクソーム解析情報)、稀少難治性疾患の遺伝子変異情報(12疾患、215変異)が集約され、公開から3 ヶ月で約72万回のアクセスを得ており、疾患ゲノム解析への関心の高さ、含まれるゲノム情報の有用性が証明された。
 このデータベースを研究者が活用することによって、日本人での遺伝病の原因遺伝子の発見や、見出された変異が疾患発症に関わる可能性の評価・解釈、種々の病気になりやすい遺伝的体質の解明が大きく進展するものと期待される。これらの情報に加えて、新規に同定された遺伝子変異の機能的役割を解釈する上で付加価値の高い、遺伝子変異と遺伝子発現量の関連解析(eQTL)情報を加えることができた。ゲノムワイド関連解析等で同定された疾患関連変異について、機能的な解釈を考察するうえでも、貴重なリソースである。これにより本研究事業で構築されるデータベースがさらに利用価値の高いものとなり、目標以上にデータベースの内容を充実させることができたと考えている。
 本データベースが難病研究の中核として機能することは疑いなく、遺伝子リファレンス情報・疾患遺伝子情報を手がかりとして当該疾患領域の医療・研究が加速され、難病研究領域の全体的なレベルアップに繋がるとともに、希少難治性疾患の遺伝子診断における標準化が進むなど、臨床に直結する基盤情報が提供される。今後、様々な疾患でシークエンスデータに基づく関連解析が増加すると予測されるが、そのような研究の基盤として、利用価値が高い。
結論
 研究拠点と一般研究班の緊密な連携のもと、運営委員会で策定された事業計画と制度設計に沿って計画通りに事業を推進し、2013年11月12日に遺伝子リファレンスライブラリーデータベースを公開した。本データベースの利活用により、疾患の原因変異究明のプロセスが飛躍的に向上することが期待できる。将来に向けて、本事業で得られた成果やバイオリソースなどを、研究者コミュニティが広く活用できるような仕組みを発展させることが重要である。今後は、日本人ゲノム変異データベースの検体数を増やすとともに、難病の遺伝子変異のデータベース登録を難病研究班にうながし、新たなデータの蓄積、機能の向上、維持管理などを継続的におこない、より充実したデータベースとすることが望まれる。本事業によって達成された大規模研究成果のデータベース化と公開により、難病研究、ゲノム医学研究が今後大きく発展する礎になれば幸いである。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324049C

収支報告書

文献番号
201324049Z