文献情報
文献番号
201324006A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性免疫不全症候群に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
原 寿郎(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 有賀 正(北海道大学 大学院医学研究科)
- 野々山 恵章(防衛医科大学校 医学研究科)
- 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院発達病態小児科学)
- 今井 耕輔(東京医科歯科大学 大学院小児・周産期地域医療学)
- 小島 勢二(名古屋大学 大学院発育・加齢医学)
- 谷内江 昭宏(金沢大学 大学院医学系研究科)
- 平家 俊男(京都大学 大学院医学研究科)
- 小林 正夫(広島大学 大学院病態情報医科学)
- 布井 博幸(宮崎大学 医学部)
- 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究センター)
- 峯岸 克行(徳島大学 疾患プロテオゲノム研究センター)
- 小野寺 雅史(国立成育医療センター研究所 成育遺伝研究部)
- 金兼 弘和(富山大学 大学院医学薬学研究部)
- 加藤 善一郎(岐阜大学 大学院医学系研究科)
- 笹原 洋二(東北大学 大学院医学系研究科)
- 河野 肇(帝京大学 医学部)
- 小原 收(財団法人かずさDNA研究所 ヒトゲノム研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
36,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、患者登録などによる患者実態の把握、診断や治療に関する患者や主治医からの相談に対する専門的情報提供、診断スクリーニング法の開発や遺伝子解析システムの整備、最新の分子遺伝学的・免疫学的手法を駆使した病因・病態解析、治療ガイドラインの作成、治療法の改良、遺伝子治療を含めた新規治療法の開発等を介して原発性免疫不全症候群患者のQOLと医療水準の向上に貢献することを目的とする。
研究方法
本調査研究では、以下の重点目標を掲げ研究を行う。
1. 全国調査:全国疫学調査解析を継続し、治療成績やQOL向上への要因を探る。患者登録を推進し、データベース構築を推進する。
2. 新規診断法、迅速診断法の開発:新生児スクリーニング法や、FCM等を用いた新たな迅速診断法を開発する。
3. Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ)プロジェクト:On lineで患者登録を行い、依頼された遺伝子解析や蛋白解析、生体試料の保存を行う。
4. 責任遺伝子の同定や病態の解明:エキソーム解析やRNA Seq法等、最新の技術を駆使して新規責任遺伝子を同定する。iPS細胞やヒト化マウスを用いて病態解析を行う。
5. 新規治療法の開発:最適な治療法等を提示し、公開する。遺伝子治療の実用化に向けた研究を推進する。
6. 患者家族や医療者への継続的情報提供:最新の情報を研究会、ホームページなどで医師、患者家族に提供する。患者家族会との講演会、相談会を実施する。
1. 全国調査:全国疫学調査解析を継続し、治療成績やQOL向上への要因を探る。患者登録を推進し、データベース構築を推進する。
2. 新規診断法、迅速診断法の開発:新生児スクリーニング法や、FCM等を用いた新たな迅速診断法を開発する。
3. Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ)プロジェクト:On lineで患者登録を行い、依頼された遺伝子解析や蛋白解析、生体試料の保存を行う。
4. 責任遺伝子の同定や病態の解明:エキソーム解析やRNA Seq法等、最新の技術を駆使して新規責任遺伝子を同定する。iPS細胞やヒト化マウスを用いて病態解析を行う。
5. 新規治療法の開発:最適な治療法等を提示し、公開する。遺伝子治療の実用化に向けた研究を推進する。
6. 患者家族や医療者への継続的情報提供:最新の情報を研究会、ホームページなどで医師、患者家族に提供する。患者家族会との講演会、相談会を実施する。
結果と考察
1. 全国調査
STAT1機能獲得型変異による慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)患者の臨床像を検討した結果、カンジダ症以外に、細菌感染症や反復性ヘルペス感染症などのウイルス感染症、自己免疫疾患細胞性免疫不全などの多彩な臨床像を呈することを明らかにした。
2. 新規診断法、迅速診断法の開発
CMCDの迅速診断法、タンデムマスを用いたADA欠損症の新しいスクリーニング法を開発した。造血幹細胞移植後の免疫不全状態で問題となる接合菌感染症の新たな診断法として、PCRを用いた血清診断法を確立した。FHLの診断で、NK細胞やCTLの脱顆粒機能解析、蛋白発現解析の有用性を明らかにした。原発性免疫不全症候群の免疫能評価方法として10カラーFACSによる解析法を樹立した。
3. Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ)プロジェクト
国内の原発性免疫不全症候群患者のon line登録、診断や治療に関する相談受付、遺伝子解析を、理化学研究所、かずさDNA研究所と共同で継続して行った。本年度は531例が登録された。遺伝子診断法として、次世代シーケンサーを用いたパネル化遺伝子検査法を確立し、導入した。
4. 責任遺伝子の同定や病態の解明
細網異形成症患者由来iPS細胞を樹立し、その代謝プロファイルと血球分化能を解析した結果、ピルビン酸からTCAサイクルへの流入パターンの異常を明らかにした。高IgE症候群のマウスモデルにハプテン反復塗布を行う事で皮膚炎を再現し、その病態を明らかにした。抗体産生不全症患者10名で、PIK3CD遺伝子の機能獲得型変異を同定し、CVIDの新たな責任遺伝子であることを解明した。エキソーム解析によって、国内初のRTEL1遺伝子変異によるHoyeraal-Hreidarsson症候群、新規SLC46A1変異による重症複合免疫不全症を伴う先天性葉酸吸収不全、IL2RG遺伝子変異による非典型的な病像を呈した複合免疫不全症等を同定し、病態解析を行った。また、TCRシグナル伝達系におけるWASPの機能を明らかにした。CAPS患者にみられるNLRP3変異によって、ASC蛋白のSpeckle形成がおこる事を明らかにし、病態解明や診断に有用であることを明らかにした。XIAP欠損症において血清IL-18が持続的に高値であり、病態の特徴であることを明らかにした。ヘテロ遺伝子変異によって女性に発症したXIAP欠損症患者を初めて同定した。
5. 新規治療法の開発
CD40リガンド異常による高IgM症候群に対する造血幹細胞移植療法の後方視的検討を行い、最適な造血幹細胞移植法を提示した。これまでの造血幹細胞移植成績を評価し、最適な造血幹細胞移植法や遺伝子治療についてESIDなど海外の情報を継続して収集した。
6. 患者家族や医療者への継続的情報提供
患者や主治医の登録は継続してon lineで行い、最新の情報を研究会、ホームページなどで医師、患者家族に提供している。また患者家族会との連携を深め、講演会・相談会を実施した。
STAT1機能獲得型変異による慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)患者の臨床像を検討した結果、カンジダ症以外に、細菌感染症や反復性ヘルペス感染症などのウイルス感染症、自己免疫疾患細胞性免疫不全などの多彩な臨床像を呈することを明らかにした。
2. 新規診断法、迅速診断法の開発
CMCDの迅速診断法、タンデムマスを用いたADA欠損症の新しいスクリーニング法を開発した。造血幹細胞移植後の免疫不全状態で問題となる接合菌感染症の新たな診断法として、PCRを用いた血清診断法を確立した。FHLの診断で、NK細胞やCTLの脱顆粒機能解析、蛋白発現解析の有用性を明らかにした。原発性免疫不全症候群の免疫能評価方法として10カラーFACSによる解析法を樹立した。
3. Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ)プロジェクト
国内の原発性免疫不全症候群患者のon line登録、診断や治療に関する相談受付、遺伝子解析を、理化学研究所、かずさDNA研究所と共同で継続して行った。本年度は531例が登録された。遺伝子診断法として、次世代シーケンサーを用いたパネル化遺伝子検査法を確立し、導入した。
4. 責任遺伝子の同定や病態の解明
細網異形成症患者由来iPS細胞を樹立し、その代謝プロファイルと血球分化能を解析した結果、ピルビン酸からTCAサイクルへの流入パターンの異常を明らかにした。高IgE症候群のマウスモデルにハプテン反復塗布を行う事で皮膚炎を再現し、その病態を明らかにした。抗体産生不全症患者10名で、PIK3CD遺伝子の機能獲得型変異を同定し、CVIDの新たな責任遺伝子であることを解明した。エキソーム解析によって、国内初のRTEL1遺伝子変異によるHoyeraal-Hreidarsson症候群、新規SLC46A1変異による重症複合免疫不全症を伴う先天性葉酸吸収不全、IL2RG遺伝子変異による非典型的な病像を呈した複合免疫不全症等を同定し、病態解析を行った。また、TCRシグナル伝達系におけるWASPの機能を明らかにした。CAPS患者にみられるNLRP3変異によって、ASC蛋白のSpeckle形成がおこる事を明らかにし、病態解明や診断に有用であることを明らかにした。XIAP欠損症において血清IL-18が持続的に高値であり、病態の特徴であることを明らかにした。ヘテロ遺伝子変異によって女性に発症したXIAP欠損症患者を初めて同定した。
5. 新規治療法の開発
CD40リガンド異常による高IgM症候群に対する造血幹細胞移植療法の後方視的検討を行い、最適な造血幹細胞移植法を提示した。これまでの造血幹細胞移植成績を評価し、最適な造血幹細胞移植法や遺伝子治療についてESIDなど海外の情報を継続して収集した。
6. 患者家族や医療者への継続的情報提供
患者や主治医の登録は継続してon lineで行い、最新の情報を研究会、ホームページなどで医師、患者家族に提供している。また患者家族会との連携を深め、講演会・相談会を実施した。
結論
原発性免疫不全症候群患者のQOLと医療水準の向上に向け活発な活動を展開できたものと考える。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30