アレルギー疾患の全年齢にわたる継続的疫学調査体制の確立とそれによるアレルギーマーチの発症・悪化要因のコホート分析に関する研究

文献情報

文献番号
201322027A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の全年齢にわたる継続的疫学調査体制の確立とそれによるアレルギーマーチの発症・悪化要因のコホート分析に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 小田嶋 博(国立病院機構 福岡病院)
  • 斎藤 博久(国立成育医療研究センター)
  • 足立 雄一(富山大学医学部小児科)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院)
  • 岡田 千春(国立病院機構本部医療部)
  • 今野 哲(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
  • 谷口 正実(国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター病態総合研究部)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態学・小児の免疫アレルギー疾患 )
  • 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患治療ガイドラインが作成され標準的治療が進み、一定の効果が見られた一方で、QOLの低下、症状のコントロール不良、アトピー性皮膚炎でのステロイド忌避、低アドヒアランス、危険な食物除去等医療者側からは見えにくい問題が起こっている。我々のこれまでの研究は、全年齢にわたるアレルギー疾患の継続的疫学調査を行い、多くの要因との関連性、治療内容、コントロール状態を評価してきた。さらに、調査効率のよいインターネットを利用した調査方法(web調査)についても開発してきた。こうした調査やアレルギーマーチの推移をコホート調査することは新たな治療法、予防方法の開発、ガイドラインの評価および無駄のない医療政策の策定に不可欠である。
研究方法
研究体制は、成人喘息・アレルギー性鼻炎調査チーム、小児喘息・アレルギー性鼻炎調査チーム、アトピー性皮膚炎調査チーム、食物アレルギー調査チームの設定をして研究を開始した。各疾患での調査項目は、対象者属性、有症率、生涯有症率、重症度、治療内容、症状評価、QOL等について行い、年齢別、性別、地域別、国際比較、さらに環境要因、社会的背景との関連性について検討を行った。
1.成人喘息・アレルギー性鼻炎
①各都道府県別の成人喘息の有症率・有病率、環境因子との関連性
2012年にweb調査で実施したECRHS調査、20から44歳の64,728名の結果の解析をおこなった。
②Web調査の妥当性の検証
従来の調査方法とインターネットを利用したweb調査の妥当性検証を実施する。         2.小児喘息・アレルギー性鼻炎
①喘息コントロール状態の調査
2012年にweb調査で実施し、喘息症状がありまたは、治療薬を使用している3,066名の喘息コントロール状態を解析した。
②花粉飛散数とアレルギー疾患有症率の関係の調査
2008年に実施したISAAC調査のデータとスギ花粉、ヒノキ花粉各々の平均飛散数を用いたて解析した。
3.アトピー性皮膚炎
①アトピー性皮膚炎有症率調査
Webを用いた調査体制の確立について大学新入生健診でWeb調査と紙媒体による調査で有症率調査を行い、調査の精度を検証する。
②ステロイド外用薬に対する患者認識の調査
国際的なステロイド外用薬に対する患者の認識調査尺度と、Web調査に適した独自の質問票を作成する。また、ステロイド忌避症例の実態把握する。
③慢性蕁麻疹、血管性浮腫の患者QOLの評価
CU-Q2oL、AE-Q2oLは、おのおの質問項目の日本語訳を作成した。CU-Q2oL、AE-Q2oLについてはその翻訳の妥当性を検証するために、現在逆翻訳を行っている。
4.食物アレルギー
相模原市におけるアレルギー性疾患コホート調査
アレルギー性疾患の推移を4か月健診時から定期的に調査を行い観察する。4ヶ月健診の会場でリクルートを行い、その後8ヶ月、1歳時に追跡調査を行う。
結果と考察
結果
1成人喘息・アレルギー性鼻炎
各都道府県別の成人喘息の有症率の中間値は13.7%、有病率の中間値は8.7%で、2年前との比較では、両者とも前値との比較で約10%の増加。都道府県別では1.8倍の開きがあった。地域の環境因子と成人喘息有症率・有病率の検討では、各地区の現喫煙率と喘鳴有症率、喘息診断有病率と有意に正の相関があり、さらにBMI30以上率も喘鳴率と有意な相関を認めた。
2小児喘息・アレルギー性鼻炎
喘息コントロール状態の調査では不良群14.6%、良好群85.4%であった。、出生体重、母の喫煙、ペット飼育の時期とコントロール状況との間に有意な関連を認めた。またアレルギー性鼻炎はコントロール不良のリスクとなっていた。6-7歳のアレルギー性鼻結膜炎有症率はスギ花粉、ヒノキ花粉飛散数ともに有意な正の相関を示した。さらに、6-7歳の気管支喘息有症率とスギ花粉飛散数と正の相関を示した(P=0.003)。
3アトピー性皮膚炎
調査を実施中である。
4食物アレルギー
相模原市におけるアレルギー性疾患コホート調査は、平成26年1月から開始した。
考察
アレルギー疾患の疫学調査は、実態の把握、経年的推移、発症原因の分析に不可欠であり、疾患の重症度、治療状況、予後、QOL評価についてのデータを分析することは、発症予防、医療資源の計画、医療費の削減につながる医療政策を考えることができる。
研究責任者らは2004年から継続してアレルギー疾患の疫学調査を実施してきた。調査手法として、将来的に有効性の高いweb調査を検討し、過去から将来にわたりアレルギー疾患の動向がわかるようにするための調査を計画することが必要である。
結論
記述疫学調査と要因分析を継続的に実施していくことが今後の治療ガイドライン作成、医療政策作成のうえで重要な資料となる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201322027Z