脳死ドナーにおける多臓器摘出に関する教育プログラムの確立

文献情報

文献番号
201322024A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死ドナーにおける多臓器摘出に関する教育プログラムの確立
課題番号
H24-難治等(免)-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古川 博之(旭川医科大学 医学部 外科学講座 消化器病態外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 満一(福島県立医科大学 医学部医学科 臓器再生外科学講座)
  • 近藤 丘(東北大学 加齢医学研究所 呼吸器外科)
  • 相川 厚(東邦大学 医学部 腎臓学教室)
  • 高原 史郎(大阪大学 大学院 医学系研究科 先端移植基盤医療学)
  • 仁尾 正記(東北大学 大学院 医学系研究科 小児外科学分野)
  • 國土 典宏(東京大学 大学院 医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科・人工臓器移植外科)
  • 福嶌 教偉(大阪大学 大学院 医学系研究科 重症臓器不全治療寄附講座)
  • 上本 伸二(京都大学 医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科学分野)
  • 吉田 一成(北里大学 医学部 泌尿器科教室)
  • 剣持 敬(藤田保健衛生大学 医学部 臓器移植科)
  • 伊達 洋至(京都大学 大学院 医学研究科 器官外科学講座 呼吸器外科学)
  • 小野 稔(東京大学 医学部 心臓外科・呼吸器外科)
  • 嶋村 剛(北海道大学病院 臓器移植医療部)
  • 谷口 雅彦(旭川医科大学 外科学講座 消化器病態外科学分野)
  • 水田 耕一(自治医科大学消化器・移植外科)
  • 江口 晋(長崎大学 大学院 医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科第二外科)
  • 上野 豪久(大阪大学 大学院 医学系研究科 外科学講座 小児成育外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,345,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植法改正後、臓器提供数が急速に増加しており、提供側・移植側での医療体制確立が求められる。我が国では1ドナーから多くの臓器が摘出される特徴があり、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓が同時に摘出される多臓器摘出となるため手術の難易度が高く、現場での教育が困難であり、一部の経験ある術者にしか手術の遂行が難しい現状がある。これに対して、本研究では安全かつ的確な多臓器摘出に向けての教育プログラムを確立する。
研究方法
新しいドナーの適応基準の確立のために、平成24年12月に脳死ドナー・データを第1例目から185例目まで日本臓器移植ネットワークの協力を得て調査が終了し、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓各臓器の担当者にグラフト機能に影響するドナー危険因子の分析を依頼した。
多臓器摘出手術手技の3DCGアニメーション作成するため、2度の臓器摘出デモンストレーションを実施し、立体ビデオカメラにて収録した。その後、8度の打ち合わせ会を開いて、肝臓単独摘出ならびに肝臓膵臓同時摘出のアニメーションの作成に沿ったシナリオと同時に、3DCGによる臓器のモデリングを進め、両手技については3DCGアニメーションが完成した。
多臓器摘出理解のためのe-ラーニング作成については、肝臓単独摘出について、3DCGアニメーションを見ながら、手技のコツとピットフォールを学べるように解説ノートと音声を付加した。
臓器摘出シミュレーションについては、平成24年度は肝臓摘出のみを行った。平成24年11月に、九州大学の動物実験施設で18人、自治医科大学のピッグセンターで33人を対象に行った。午前中講義を行い、午後から指導者がブタを用いた肝摘出のデモンストレーションを行った後に、参加者が5-6人毎のグループに分かれて、それぞれ3-4頭のブタを用いて肝摘出シミュレーションを行った。講義を行った際に確認テストを行い、終了時にアンケート調査を行った。平成25年度については、第1回の合同臓器摘出シミュレーションを平成25年8月、ジョンソンエンド・ジョンソン(株)MIT研究センターにて実施した。心臓・肺・肝臓・膵臓・(小腸)チームが合同で行う初めてのプロジェクトであり、全国より97名が参加した。午前中講義を行い、その後確認テストを施行した。肝摘出の手術手技の講義は、本研究で作成中のアニメーションを用いて行い、その後テストを行った。(肝テスト2013)午後より、1テーブル(ブタ1匹)を用いて各臓器の指導者が臓器摘出のデモンストレーションを行い、その後、参加者が9テーブル(ブタ9匹)に分かれで臓器摘出手技をシミュレーションを行った。終了時アンケート調査を行なった。
結果と考察
脳死臓器移植全体のドナー因子の分析では、高齢ドナーが3臓器(心臓、肺、肝臓)で、長時間の阻血が4臓器(心臓、肝臓、膵臓、腎臓)で、有意に術後の早期成績を悪化させる因子であることが判明した。また、「肝膵単独摘出術」と「肝膵同時摘出術」の2つの手技を対象に3DCGアニメーションを制作した。そのうち、「肝膵単独摘出術」については、e-learningを作成し、http://digital-way.co.jp/test/jst/にて閲覧可能となっている。平成24年度には肝摘出シミュレーション、平成25年度には、多臓器摘出シミュレーションが行われ、講義の際に確認テストを行ったが、アニメーションを講義に取り入れた2013年の成績は、2012年より優れていた。(正答率48.3%(2013年)vs 32.7%(2012年)p=0.0001)シミュレーション後のアンケート結果からは、2012年に比して、2013年は術者を多く経験できたが、多臓器摘出でもあり各臓器摘出に与えられた時間が短く、場所をせまいと感じた参加者が多かった。2012年、2013年ともに、医療技術習得・向上に関しは、ほぼ全員が役にたったと答え、臨床で同様の手技を行う準備は、多くができたと答えている。2013年の多臓器摘出に関して、他チームとの連携について9割が学ぶことができたと答えた。今後のシミュレーションの継続については、2012年、2013年とも全員が希望しているという結果であった。
結論
このプログラムにより教育を受けたドナー術者による的確な臓器の評価と正確な臓器摘出術の施行は、手術の安全性をたかめ、グラフト不全を減少させ、移植成績の向上につながる。転じて、再移植を減少させ、より多くの患者が移植の恩恵にあずかることができる。このような系統的なドナー手術の教育システムの構築は、世界でも例がなく今後、モデル・ケースとなって世界に発信していきたい。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201322024B
報告書区分
総合
研究課題名
脳死ドナーにおける多臓器摘出に関する教育プログラムの確立
課題番号
H24-難治等(免)-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古川 博之(旭川医科大学 医学部 外科学講座 消化器病態外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 満一(福島県立医科大学 医学部 医学科 臓器再生外科学講座)
  • 近藤 丘(東北大学 加齢医学研究所 呼吸器外科)
  • 相川 厚(東邦大学 医学部 腎臓学教室)
  • 高原 史郎(大阪大学 大学院 医学系研究科 先端移植基盤医療学)
  • 仁尾 正記(東北大学 大学院 医学系研究科 小児外科学分野)
  • 國土 典宏(東京大学 大学院 医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科・人工臓器移植外科)
  • 福嶌 教偉(大阪大学 大学院 医学系研究科 重症臓器不全治療寄附講座)
  • 上本 伸二(京都大学 医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科学分野)
  • 吉田 一成(北里大学 医学部 泌尿器科教室)
  • 剣持 敬(藤田保健衛生大学 医学部 臓器移植科)
  • 伊達 洋至(京都大学 大学院 医学研究科 器官外科学講座 呼吸器外科学)
  • 小野 稔(東京大学 医学部 心臓外科・呼吸器外科)
  • 江口 晋(長崎大学 大学院 医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科第二外科)
  • 嶋村 剛(北海道大学 大学院 医学研究科 消化器外科学分野)
  • 谷口 雅彦(旭川医科大学 外科学講座 消化器病態外科学分野)
  • 水田 耕一(自治医科大学 消化器・移植外科)
  • 上野 豪久(大阪大学 大学院 医学系研究科 外科学講座 小児成育外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植法改正後、臓器提供数が急速に増加しており、提供側・移植側での医療体制確立が求められる。我が国では1ドナーから多くの臓器が摘出される特徴があり、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓が同時に摘出される多臓器摘出となるため手術の難易度が高く、現場での教育が困難であり、一部の経験ある術者にしか手術の遂行が難しい現状がある。これに対して、本研究では安全かつ的確な多臓器摘出に向けての教育プログラムを確立する。
研究方法
新しいドナーの適応基準の確立のために、平成24年12月に脳死ドナー・データを第1例目から185例目まで日本臓器移植ネットワークの協力を得て調査が終了し、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓各臓器の担当者にグラフト機能に影響するドナー危険因子の分析を依頼した。
多臓器摘出手術手技の3DCGアニメーション作成するため、2度の臓器摘出デモンストレーションを実施し、立体ビデオカメラにて収録した。その後、8度の打ち合わせ会を開いて、肝臓単独摘出ならびに肝臓膵臓同時摘出のアニメーションの作成に沿ったシナリオと同時に、3DCGによる臓器のモデリングを進め、両手技については3DCGアニメーションが完成した。
多臓器摘出理解のためのe-ラーニング作成については、肝臓単独摘出について、3DCGアニメーションを見ながら、手技のコツとピットフォールを学べるように解説ノートと音声を付加した。
臓器摘出シミュレーションについては、平成24年度は肝臓摘出のみを行った。平成24年11月に、九州大学の動物実験施設で18人、自治医科大学のピッグセンターで33人を対象に行った。午前中講義を行い、午後から指導者がブタを用いた肝摘出のデモンストレーションを行った後に、参加者が5-6人毎のグループに分かれて、それぞれ3-4頭のブタを用いて肝摘出シミュレーションを行った。講義を行った際に確認テストを行い、終了時にアンケート調査を行った。平成25年度については、第1回の合同臓器摘出シミュレーションを平成25年8月、ジョンソンエンド・ジョンソン(株)MIT研究センターにて実施した。心臓・肺・肝臓・膵臓・(小腸)チームが合同で行う初めてのプロジェクトであり、全国より97名が参加した。午前中講義を行い、その後確認テストを施行した。肝摘出の手術手技の講義は、本研究で作成中のアニメーションを用いて行い、その後テストを行った。(肝テスト2013)午後より、1テーブル(ブタ1匹)を用いて各臓器の指導者が臓器摘出のデモンストレーションを行い、その後、参加者が9テーブル(ブタ9匹)に分かれで臓器摘出手技をシミュレーションを行った。終了時アンケート調査を行なった。
結果と考察
脳死臓器移植全体のドナー因子の分析では、高齢ドナーが3臓器(心臓、肺、肝臓)で、長時間の阻血が4臓器(心臓、肝臓、膵臓、腎臓)で、有意に術後の早期成績を悪化させる因子であることが判明した。また、「肝膵単独摘出術」と「肝膵同時摘出術」の2つの手技を対象に3DCGアニメーションを制作した。そのうち、「肝膵単独摘出術」については、e-learningを作成し、http://digital-way.co.jp/test/jst/にて閲覧可能となっている。平成24年度には肝摘出シミュレーション、平成25年度には、多臓器摘出シミュレーションが行われ、講義の際に確認テストを行ったが、アニメーションを講義に取り入れた2013年の成績は、2012年より優れていた。(正答率48.3%(2013年)vs 32.7%(2012年)p=0.0001)シミュレーション後のアンケート結果からは、2012年に比して、2013年は術者を多く経験できたが、多臓器摘出でもあり各臓器摘出に与えられた時間が短く、場所をせまいと感じた参加者が多かった。2012年、2013年ともに、医療技術習得・向上に関しは、ほぼ全員が役にたったと答え、臨床で同様の手技を行う準備は、多くができたと答えている。2013年の多臓器摘出に関して、他チームとの連携について9割が学ぶことができたと答えた。今後のシミュレーションの継続については、2012年、2013年とも全員が希望しているという結果であった。
結論
このプログラムにより教育を受けたドナー術者による的確な臓器の評価と正確な臓器摘出術の施行は、手術の安全性をたかめ、グラフト不全を減少させ、移植成績の向上につながる。転じて、再移植を減少させ、より多くの患者が移植の恩恵にあずかることができる。このような系統的なドナー手術の教育システムの構築は、世界でも例がなく今後、モデル・ケースとなって世界に発信していきたい。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201322024C

収支報告書

文献番号
201322024Z