文献情報
文献番号
201322020A
報告書区分
総括
研究課題名
生命予後に関わる重篤な食物アレルギーの実態調査・新規治療法の開発および治療指針の策定
課題番号
H24-難治等(免)-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森田 栄伸(島根大学 医学部皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
- 相原 道子(横浜市立大学 医学部皮膚科)
- 秀 道広(広島大学 医学部皮膚科)
- 岸川 禮子(国立病院機構福岡病院 アレルギー科)
- 片山 一朗(大阪大学 医学部皮膚科)
- 塩飽 邦憲(島根大学 理事)
- 千貫 祐子(島根大学 医学部皮膚科学)
- 横関 博雄(東京医科歯科大学 医学部皮膚科)
- 松永 佳世子(藤田保健衛生大学 医学部皮膚科学)
- 藤枝 重治(福井大学 医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院臨床研究センター 診断・治療薬開発研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、本邦においてある特定の加水分解コムギを含有した石鹸の使用者が小麦摂取時に即時型アレルギーを呈する事例が多発した。本研究では、この加水分解コムギアレルギーの診断基準を作成し、実態調査を行うとともに予後調査、治療指針の策定を目的とした。併せて、本邦における重篤な食物アレルギーである食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)と口腔アレルギー症候群(OAS)の診断基準の作成、治療指針の策定を行うことを目的とした。
研究方法
1.加水分解コムギアレルギーの実態把握と予後調査
この課題については日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」および難治性疾患等克服研究事業(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)福富班と密接に連携し活動した。加水分解コムギアレルギーの診断基準は平成24年度作成の基準(平成24年度報告書に記載)を使用し、症例のオンライン登録を継続して行い、日本全国から症例を集積した。加水分解コムギアレルギーの感作状況の把握、予後調査、重症度に関与する要因を調査した。
2.加水分解コムギの抗原解析と発症機序の解析
当該石鹸に含有されていた加水分解コムギを患者血清を用いて抗原の性状を解析した。
3.FDEIAの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属施設を過去3年間に受診したFDEIA症例219例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準の作成に有用な情報を解析した。
4.OASの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属施設を過去3年間に受診したOAS症例204例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準の作成に有用な情報を解析した。患者血清を用いたELISA法や免疫ブロット法の診断における有用性を検討した。福井県下の耳鼻科医療施設を受診した患者のうち、OAS症例および対照患者の抗原特異的IgEおよびアレルゲンコンポーネント特異的IgEの測定を行った。
この課題については日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」および難治性疾患等克服研究事業(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)福富班と密接に連携し活動した。加水分解コムギアレルギーの診断基準は平成24年度作成の基準(平成24年度報告書に記載)を使用し、症例のオンライン登録を継続して行い、日本全国から症例を集積した。加水分解コムギアレルギーの感作状況の把握、予後調査、重症度に関与する要因を調査した。
2.加水分解コムギの抗原解析と発症機序の解析
当該石鹸に含有されていた加水分解コムギを患者血清を用いて抗原の性状を解析した。
3.FDEIAの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属施設を過去3年間に受診したFDEIA症例219例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準の作成に有用な情報を解析した。
4.OASの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属施設を過去3年間に受診したOAS症例204例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準の作成に有用な情報を解析した。患者血清を用いたELISA法や免疫ブロット法の診断における有用性を検討した。福井県下の耳鼻科医療施設を受診した患者のうち、OAS症例および対照患者の抗原特異的IgEおよびアレルゲンコンポーネント特異的IgEの測定を行った。
結果と考察
平成25年度は引き続き日本アレルギー学会特別委員会との協力により、加水分解コムギアレルギーの実態調査を行った。平成26年2月現在国内で2107名(女性2020名、男性87名)の患者が確認されたこと、県別の石鹸の出荷数と患者数は相関していたこと、小麦関連の血清中特異的IgEの値が症状の重篤度と関連があり患者の25%はアナフィラキシーショックを経験していたこと、石鹸の中止により患者のほとんどで血清加水分解コムギIgE抗体価、小麦関連抗原IgE抗体価および小麦抗原に対する好塩基球ヒスタミン遊離試験や好塩基球活性化試験の低下が見られていること、平成25年10月現在約26%の患者が略治の状態であることが明らかとなった。また、年齢30歳以下では治癒し易く、強感作例では治癒しにくいことが判明した。発症機序には加水分解コムギの分子量の大きさが関与していることを明らかにした。
併せて本年度は、FDEIAおよびOASの概念を定め、その診断基準の策定を試みた。そのための資料として、通常型のFDEIAおよびOASの症例を集積し、その症状、原因食物、抗原特異的IgE検査、プリックテストの陽性率を調査した。その実態は従来から認識されている実態と大きな相違はないと思われた。しかし、アレルゲンの同定に広く利用されている抗原特異的IgE検査の陽性率は、FDEIA、OASともに低く、今後感度の高い検査として原因アレルゲンの同定に基づく特異的IgE検査法の開発が望まれる。FDEIAのうち最も頻度の高い小麦によるFDEIAおよびOASのうち最も頻度の高いバラ科果物によるOASについてそれぞれ診断基準案を策定し、今回集積した症例において感度を検討した。その感度は、小麦によるFDEIAで73.7%、バラ科果物によるOASで92.5%であった。今回の検討では、特異度は検定できなかったが、その感度は臨床的には満足できるものと思われる。次年度はその精度を検定し、修正を行いたいと考える。
併せて本年度は、FDEIAおよびOASの概念を定め、その診断基準の策定を試みた。そのための資料として、通常型のFDEIAおよびOASの症例を集積し、その症状、原因食物、抗原特異的IgE検査、プリックテストの陽性率を調査した。その実態は従来から認識されている実態と大きな相違はないと思われた。しかし、アレルゲンの同定に広く利用されている抗原特異的IgE検査の陽性率は、FDEIA、OASともに低く、今後感度の高い検査として原因アレルゲンの同定に基づく特異的IgE検査法の開発が望まれる。FDEIAのうち最も頻度の高い小麦によるFDEIAおよびOASのうち最も頻度の高いバラ科果物によるOASについてそれぞれ診断基準案を策定し、今回集積した症例において感度を検討した。その感度は、小麦によるFDEIAで73.7%、バラ科果物によるOASで92.5%であった。今回の検討では、特異度は検定できなかったが、その感度は臨床的には満足できるものと思われる。次年度はその精度を検定し、修正を行いたいと考える。
結論
加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギーのアウトブレイク実態およびその予後を明らかにすることができた。また従来型のFDEIAおよびOASの概念の作成と診断基準案の作成を行い、その感度を検定した。診断基準案の修正と治療指針の策定が今後の課題である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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