気管支喘息に対する喘息死の予防や自己管理手法の普及に関する研究

文献情報

文献番号
201322019A
報告書区分
総括
研究課題名
気管支喘息に対する喘息死の予防や自己管理手法の普及に関する研究
課題番号
H24-難治等(免)-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大田 健(東京病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院)
  • 棟方 充(福島県立医科大学付属病院)
  • 東田 有智(近畿大学医学部)
  • 檜澤 伸之(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 近藤 直実(岐阜大学医学部)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学系研究院)
  • 長瀬 洋之(帝京大学医学部)
  • 田中 明彦(昭和大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の申請者は「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」を2006年に作成し具体的な戦略を提示した。喘息死は2006年には2778人であったが、最新の2012年は1874人まで減少している。しかし、喘息死をゼロに近づけるためには、さらに有効な対策が必要である。本研究では、最新のガイドライン(JGL) をかかりつけ医が実行しやすくなるように「JGLのミニマムエッセンス」を作成する。さらに、喘息死の90%近くが高齢者であること、小児での喘息死はその多くは乳幼児であることを背景に、喘息の実態に関する調査、喘息でCOPD併存例への対策、成人と小児における喘息の重症化・難治化のフェノタイプを決定する因子の探索とクラスター解析などを研究する。最終的には、「JGLのミニマムエッセンス」「自己管理法を含む喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」、「治療アドヒアランスの改善のための指針」「日本人喘息患者における喘息のフェノタイプとクラスター」などを文書化する。
研究方法
 最新のJGL2012とアレルギー疾患ガイドライン、JAGL2013の内容から「JGLのミニマムエッセンス」を作成する。また、喘息死の現状を踏まえて、高齢者を含む成人喘息を実態調査する。質問表には呼気NO(FeNO)や強制オシレーション法(FOT)などの検査値も加える。また、乳幼児を中心に小児気管支喘息を実態調査する。高齢者ではCOPDへの対策に関する提言を作成する。また治療アドヒアランスの改善策を検討し実行計画を立案する。実態調査の結果を用いて、重症化・難治化を含む各種フェノタイプをクラスター解析する。なお、患者からの検体収集は三省合同「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、採血は倫理規定に基づき文書で同意を得て実行する。
結果と考察
 平成25年度(2年目)の成果として以下のような結果を得ている。1)「JGLのミニマムエッセンス」の作成を開始している。2) 成人喘息の実態調査では、抑うつの程度が服薬アドヒアランスや喘息コントロールに影響を及ぼすこと、コントロール不良喘息患者はFeNOの日内・週内変動が有意に大きいこと、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン特異的IgE抗体陽性群は喘息重症度との関連性を認めないことなどが示され、FEV1、ACT、FeNO、IgEなどが指標として重要であった。3) 小児気管支喘息では、呼気性喘鳴1回エピソードでもアレルギー家族歴がある場合は早期診断できる可能性が示唆された。さらに尿中ロイコトリエンE4の測定では、β2刺激薬に反応のある児(乳児喘息の疑い)では低値を示し、鑑別診断での有用性が示唆された。4) 治療アドヒアランスの検討では、ほぼ全ての薬剤師が、吸入指導は重要と回答したが、薬剤師自身が指導を受ける機会は少なく、患者にきちんと吸入指導が行える薬剤師は少数で、医薬連携体制の確立が必要である。5) クラスター解析では、アトピーの分類による4群が臨床的に特徴的な4つの喘息フェノタイプに対応することが明らかになった。小児期発症気管支喘息患者の検討では、喘息発症年齢、末梢血好酸球数、ダニ特異的IgE値、スギ特異的IgE値から7個のクラスターが得られた。研究班全体で、成人と小児で種々の指標を選択してデータを集積しクラスター解析している。成人喘息の予備検討では、発症年齢、血清総IgE、末梢血好酸球、ACTスコア、%FEV1,吸入ステロイド投与量などから3つのクラスターが得られた。
 本研究は、喘息の診断と喘息患者におけるコントロール状態と増悪の予知に有用な指標を明らかにし、自己管理の確立に寄与する。そして、これら成人と小児を対象とする研究成果は、喘息患者の実態調査に資する適切な調査指標の選択、さらにはクラスター解析によるフェノタイプの解明に寄与する。喘息の治療の基本は、吸入ステロイドの継続投与であり、治療のアドヒアランスは、治療の成否の鍵となるものである。本研究から、薬剤師における吸入療法の理解と指導力の醸成が不十分であることが明らかとなり、取り組むべき重要な課題が明らかとなった。医療連携システムの活用は、喘息の予後をさらに改善することが期待される。
結論
 最終的な成果となる「JGLのミニマムエッセンス」「自己管理法を含む喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針」、「治療アドヒアランスの改善のための指針」「日本人喘息患者における喘息のフェノタイプとクラスター」などの文書は、JGLを基盤とする適切な喘息治療の普及と実行に貢献し、自己管理法の確立、喘息死ゼロ作戦の推進、フェノタイプによる個別化医療の実現などを通じて、個人の負担のみでなく国の負担をも軽減し、国が求める喘息の医療体制の確立に資することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2014-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2014-07-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201322019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,301,091円
人件費・謝金 5,988,294円
旅費 793,990円
その他 923,257円
間接経費 0円
合計 15,006,632円

備考

備考
研究分担者 秋山一男(相模原病院) 補助金配分額1,000,000円、支出1,006,632円。
差額 6,632円は自己資金にて負担。

公開日・更新日

公開日
2014-06-01
更新日
-