文献情報
文献番号
201322005A
報告書区分
総括
研究課題名
RSウイルス気道感染予防によるアトピー型気管支喘息の発症抑制効果に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
望月 博之(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 吉原 重美(獨協医科大学 医学部)
- 岡田 賢司(福岡歯科大学 総合医学講座)
- 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,608,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳幼児期のRSウイルスによる下気道感染が、その後の喘鳴・喘息発症のリスクの増大に関与するという報告は数多い。一方、RSウイルスの感染により宿主がTh2優位に傾きアレルギー疾患が発症しやすくなることについても、多数の報告があり議論が続いている。抗RSウイルス抗体であるパリビズマブ投与群と非投与群の満3歳から満6歳までの反復性喘鳴の発症率等を比較し、RSウイルス感染とアトピー型喘息の発症との関連を評価する前向きの観察研究を計画した。
研究方法
パリビズマブ投与群 345例、パリビズマブ非投与群 95例からスタートし、「承認日」から2013年12月31日(対象児が満3歳(生後36ヵ月)から満6歳(生後72カ月)を迎える)までを研究期間として、全国51施設の研究協力者は参加者のデータ収集のための実際を行うこととした。主要評価項目は、登録時から満6歳の期間におけるアトピー型喘息の発症の有無、副次的評価項目として、反復性喘鳴発症までの経過日数(医師判断)、同(保護者判断)、さらに登録時から満6歳時期間における呼吸器関連疾患による受診回数、入院回数、アレルギー疾患の発症の有無、発育状況、身長、体重、BMIの推移の検討を計画した。方法として、調査期間中は、以下の手順でフォローアップを行うこととした。すなわち、①月1回(合計36回)の携帯電話(パソコン)回答システムによるアンケート調査(2010年7月~2013年12月)、②試験参加カード「SCELIAカード」による医師確認の喘鳴調査、③被験者が満6歳の誕生日を迎える月(2013年7~12月,±1ヵ月)での血液検査及び健康診断、を実施する。
結果と考察
本年度(2013年12月31日〆切)への返信は340名であった。主要評価項目である「医師判断による反復性喘鳴の発症(3回の喘鳴診断あり)」の結果は、投与児 45名(投与児全体の12.9%、非投与児 27名(非投与児全体の28.4%)でパリビズマブの明らかな反復性喘鳴に対する阻止効果がみられた。これにより、パリビズマブの反復性喘鳴の発症阻止効果は6歳まで認められることが証明された。
一方、副次評価項目の「保護者判断による反復性喘鳴の発症」、「医師判断による喘鳴の発症」、「保護者判断による喘鳴の発症」では2群間に有意な差はみられなかった。さらに、アトピー性喘息に関連するアトピーの発症・発現についての検討では、血清総IgE値、Dfの特異的IgE値とそのscore、他のアレルギー疾患の発症をパリビズマブ投与群と非投与群で比較したが、有意差はみられなかった。このことから、RSウイルス感染とアトピー発症の関連は少ないと考えられた。
しかしながら、呼気性喘鳴(医師判断)、呼気性喘鳴(保護者判断)が抑制されなかった(有意な差が認められなかった)ことは大変、興味深く、Steinらが示す初期喘鳴(Transient early wheezers)や非アトピー型喘鳴(Non-atopic wheezers、これはウイルス依存性の反応性気道疾患; Reactive airway diseases と同義と考えられる)との相違が明確になった。さらに、Steinらの3つの群、Transient early wheezres, Non-atopic wheezres, IgE-associated wheeze/asthma の比率が、およそ、1:1:1であることが明確になったと思われる。
一方、副次評価項目の「保護者判断による反復性喘鳴の発症」、「医師判断による喘鳴の発症」、「保護者判断による喘鳴の発症」では2群間に有意な差はみられなかった。さらに、アトピー性喘息に関連するアトピーの発症・発現についての検討では、血清総IgE値、Dfの特異的IgE値とそのscore、他のアレルギー疾患の発症をパリビズマブ投与群と非投与群で比較したが、有意差はみられなかった。このことから、RSウイルス感染とアトピー発症の関連は少ないと考えられた。
しかしながら、呼気性喘鳴(医師判断)、呼気性喘鳴(保護者判断)が抑制されなかった(有意な差が認められなかった)ことは大変、興味深く、Steinらが示す初期喘鳴(Transient early wheezers)や非アトピー型喘鳴(Non-atopic wheezers、これはウイルス依存性の反応性気道疾患; Reactive airway diseases と同義と考えられる)との相違が明確になった。さらに、Steinらの3つの群、Transient early wheezres, Non-atopic wheezres, IgE-associated wheeze/asthma の比率が、およそ、1:1:1であることが明確になったと思われる。
結論
本研究から、アトピー素因とは独立した乳幼児のRSウイルス感染による乳児喘息の発症について明確なエビデンスが得られ、乳幼児の喘鳴にはPhenotypeが存在し、3つの群(Transient early wheezres, Non-atopic wheezres, IgE-associated wheeze/asthma)を仮定すれば、各比率はおよそ1:1:1であることが推定された。このことから、①喘息発症の素因のある乳幼児に対して、RSウイルス感染の積極的な感染予防を含む喘息発症の予防措置・指導により、ウイルス感染による喘息発症を回避できる可能性がある。②さらに、乳児期にRSウイルスによる気道感染症を罹患した小児では、反復する喘鳴が生じる可能性より、予後予測に活用することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-