文献情報
文献番号
201321005A
報告書区分
総括
研究課題名
HBVの感染初期過程を評価する系の開発とそれを用いた感染阻害低分子化合物およびレセプター探索
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
下遠野 邦忠((独)国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 落谷 孝広((独)国立がん研究センター 研究所)
- 杉山 真也((独)国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター )
- 長田 裕之(理化学研究所長田抗生物質研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
宿主の自然免疫機構を活性化したり、ウイルスポリメーラー遺伝子を阻害する薬剤の進展により、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を制御可能になってきた。しかし、それでも宿主免疫機構が十分に作用しない等の理由により、ウイルス排除が完全でない場合がみられる。HBV感染を根治するためには、宿主免疫機構を解明して宿主がウイルスを完全に排除できるようになるための人為的な操作を可能にする事、HBV複製の各過程に対する阻害物質を開発することなどが必要であると考えられる。後者を遂行するには、ウイルス複製を簡便に評価する系を開発することが重要である。本研究では蛍光遺伝子、蛍光発光遺伝子をゲノムに内蔵した組み換え体HBVを構築し、感染過程を簡便に評価する系の開発、それを用いた阻害剤探索への道を開くための研究を行った。
研究方法
(1) レポーター遺伝子を組み込んだウイルス粒子の産生と感染。
レポーター遺伝子を持つHBVゲノムを内包するDane粒子様粒子産生を行う。本粒子が産生される事が分かったら、それがHBVの感染、複製様式を反映するか否かを検証する。検証には、HBV感染細胞におけるウイルスDNAの変動とレポーター遺伝子産物の活性との間に相関があるかを、各種ウイルス阻害剤を用いて調べる。
(2) HBV感染培養細胞の樹立。
HBV感染過程を再現するために最適かつ安定な肝細胞の培養系を得る。既に肝臓細胞株から幹細胞への変化が生じる事を明らかになった4種のシグナル伝達阻害剤カクテルであるYPAC(PNAS, 2010)を用いたり、エピジェネティクス制御因子処理等により、HBVに感染し易くなる細胞の開発をおこなう。なお、近年明らかにされたHBV受容体候補因子(NTCP)を導入した肝細胞について、感染効率を解析する。
(3) 抗HBV剤スクリーニングのための化合物の整備とHBV阻害評価の予備実験を行う。
天然化合物の網羅的な収集し、細胞形態変化を指標とした作用機序解明をおこなう。また計画に先行してHBV様擬粒子を用いたパイロットスクリーニングを実施する。そのためにレポーター遺伝子を導入した組換えHBV粒子を肝初代肝細胞に感染させ、理研天然化合物バンクを用いてウイルス感染阻害活性を評価するパイロット実験を行う。
レポーター遺伝子を持つHBVゲノムを内包するDane粒子様粒子産生を行う。本粒子が産生される事が分かったら、それがHBVの感染、複製様式を反映するか否かを検証する。検証には、HBV感染細胞におけるウイルスDNAの変動とレポーター遺伝子産物の活性との間に相関があるかを、各種ウイルス阻害剤を用いて調べる。
(2) HBV感染培養細胞の樹立。
HBV感染過程を再現するために最適かつ安定な肝細胞の培養系を得る。既に肝臓細胞株から幹細胞への変化が生じる事を明らかになった4種のシグナル伝達阻害剤カクテルであるYPAC(PNAS, 2010)を用いたり、エピジェネティクス制御因子処理等により、HBVに感染し易くなる細胞の開発をおこなう。なお、近年明らかにされたHBV受容体候補因子(NTCP)を導入した肝細胞について、感染効率を解析する。
(3) 抗HBV剤スクリーニングのための化合物の整備とHBV阻害評価の予備実験を行う。
天然化合物の網羅的な収集し、細胞形態変化を指標とした作用機序解明をおこなう。また計画に先行してHBV様擬粒子を用いたパイロットスクリーニングを実施する。そのためにレポーター遺伝子を導入した組換えHBV粒子を肝初代肝細胞に感染させ、理研天然化合物バンクを用いてウイルス感染阻害活性を評価するパイロット実験を行う。
結果と考察
蛍光発色遺伝子を組み込んだHBV様粒子産生に成功した。HBV感染阻害剤を用いた評価実験から、この系は、ウイルス感染初期から転写反応までをレポーター活性測定で反映できる事が分かった。それを用いたレポーターアッセイにより、HBV感染過程を評価可能になった。粒子の集合や放出などの、生活環の後期過程を反映する系にはなっていないが、感染初期過程をレポーター活性で評価し、その過程を阻害する薬剤の開発に寄与すると期待される。
結論
蛍光発色遺伝子を組み込んだHBV様粒子産生に成功した。HBV感染阻害剤を用いた評価実験から、この系は、ウイルス感染初期から転写反応までをレポーター活性測定で反映できる事が分かった。それを用いたレポーターアッセイにより、HBV感染過程を評価可能になった。粒子の集合や放出などの、生活環の後期過程を反映する系にはなっていないが、感染初期過程をレポーター活性で評価し、その過程を阻害する薬剤の開発に寄与すると期待される。
NTCPを導入したヒト肝臓由来細胞でも組み換え体ウイルスが感染性を示すことを確認した。また、感染感受性を高めるヒト肝細胞の取得も進んだ。HBV感染阻害薬の探索源に資する多数の化合物(3万種類以上を目標)の整備が進んだ。上記組み換え体ウイルスを用いて、評価のパイロット実験をおこない、本研究で得られた、組み換え体ウイルスが、大規模スクリーニングに利用可能である事がわかった。
NTCPを導入したヒト肝臓由来細胞でも組み換え体ウイルスが感染性を示すことを確認した。また、感染感受性を高めるヒト肝細胞の取得も進んだ。HBV感染阻害薬の探索源に資する多数の化合物(3万種類以上を目標)の整備が進んだ。上記組み換え体ウイルスを用いて、評価のパイロット実験をおこない、本研究で得られた、組み換え体ウイルスが、大規模スクリーニングに利用可能である事がわかった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-