文献情報
文献番号
201320017A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代シーケンシング・ゲノムワイド関連解析を用いたC型肝炎治療に伴う肝病態進展軽快、肝発癌に関わる宿主因子の解析
課題番号
H25-肺炎-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 直哉(北海道大学 医学研究科内科学講座消化器内科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 今西 規(東海大学 医学部基礎医学系分子生命科学)
- 遠藤 俊徳(北海道大学 大学院情報科学研究科)
- 五條堀 孝(国立遺伝学研究所 生命情報研究センター・遺伝情報分析研究室)
- 杉山 真也(国立国際医療センター、肝炎・免疫研究センター)
- 武冨 紹信(北海道大学 医学研究科 外科I)
- 夏井坂 光輝(北海道大学病院 消化器内科)
- 巽 智秀(大阪大学 大学院医学系研究科消化器内科学)
- 前川 伸哉(山梨大学大学院医学工学総合研究部・肝疾患地域先端医療システム学講座)
- 朝比奈 靖浩(東京医科歯科大学・消化器内科学)
- 上野 義之(山形大学・消化器病学)
- 中牟田 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター・消化器内科)
- 高後 裕(旭川医科大学・消化器内科)
- 宮西 浩嗣(札幌医科大学・消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究で我々は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の手法を用いてHCV感染の組織学的進展軽快、肝発癌に関わる宿主因子の解析を行うことにより、新規診断マーカーを探索し、肝病態の軽快を促進する新たな分子標的治療法の創出を目指す。その解析から疾患関連因子を抽出し、診断や治療に役立てる。
研究方法
(1) DNA検体、臨床情報の集積:
申請者らの施設はそれぞれ多施設共同研究を遂行しており、それらの症例の診療情報、DNA検体を集積する。
(2)バイオインフォマティクス解析:
GWAS解析に必要な大規模計算機解析とソフトウエア整備、さらに大量ゲノム配列データのデータベース構築を行う。特に、次世代シーケンサーによる大量ゲノム配列のマッピング解析、SNVやCNVの特定、各種モデルによるGWASの遺伝統計学的解析を実施する。
(3) C型肝炎の肝病態進展軽快に関わる宿主遺伝要因の解析:
住民検診、自然経過観察症例を用いて感染と病勢進展に関与する因子の絞り込みを解析し、病態進展に関連する候補遺伝子を見いだす。さまざまな慢性肝疾患患者の末梢血および肝組織DNAのメチル化修飾を網羅的に探索する。これらの情報と各種臨床パラメータとの関連を検討することにより、候補遺伝子の機能を明らかにする。
(4) 抗ウイルス治療効果・副作用に関わる宿主遺伝子の探索:
テラプレビル併用抗ウイルス療法約400例を対象に高密度マイクロアレイによるSNPs解析を実施し関連するSNPsを抽出する。同時にDNAメチル化領域やヒストンアセチル化領域を抗体等で回収し高速シーケンサーで解読する。それらのデータを組み合わせて,候補遺伝子の機能分類を行う。
(5) 肝発癌、癌幹細胞機能に関わるゲノム・エピゲノム情報の解析:
臨床的に分化度および予後が判明している担癌患者の体細胞ゲノム、エピゲノム情報を用いて、発癌、進行度、予後に関連する候補遺伝子を解析する。HCV感染が癌幹細胞に及ぼす影響を抗CD44抗体、抗CD133抗体を用いてFACSで解析する。肝移植症例、移植後再発C型肝炎症例を対象に、病態進展に関わるゲノム、エピゲノム情報を得る。
申請者らの施設はそれぞれ多施設共同研究を遂行しており、それらの症例の診療情報、DNA検体を集積する。
(2)バイオインフォマティクス解析:
GWAS解析に必要な大規模計算機解析とソフトウエア整備、さらに大量ゲノム配列データのデータベース構築を行う。特に、次世代シーケンサーによる大量ゲノム配列のマッピング解析、SNVやCNVの特定、各種モデルによるGWASの遺伝統計学的解析を実施する。
(3) C型肝炎の肝病態進展軽快に関わる宿主遺伝要因の解析:
住民検診、自然経過観察症例を用いて感染と病勢進展に関与する因子の絞り込みを解析し、病態進展に関連する候補遺伝子を見いだす。さまざまな慢性肝疾患患者の末梢血および肝組織DNAのメチル化修飾を網羅的に探索する。これらの情報と各種臨床パラメータとの関連を検討することにより、候補遺伝子の機能を明らかにする。
(4) 抗ウイルス治療効果・副作用に関わる宿主遺伝子の探索:
テラプレビル併用抗ウイルス療法約400例を対象に高密度マイクロアレイによるSNPs解析を実施し関連するSNPsを抽出する。同時にDNAメチル化領域やヒストンアセチル化領域を抗体等で回収し高速シーケンサーで解読する。それらのデータを組み合わせて,候補遺伝子の機能分類を行う。
(5) 肝発癌、癌幹細胞機能に関わるゲノム・エピゲノム情報の解析:
臨床的に分化度および予後が判明している担癌患者の体細胞ゲノム、エピゲノム情報を用いて、発癌、進行度、予後に関連する候補遺伝子を解析する。HCV感染が癌幹細胞に及ぼす影響を抗CD44抗体、抗CD133抗体を用いてFACSで解析する。肝移植症例、移植後再発C型肝炎症例を対象に、病態進展に関わるゲノム、エピゲノム情報を得る。
結果と考察
(1) エキソーム解析を行うことで肝癌に関連するヒトゲノム変異の探索を行う倫理審査、機器の整備に加え、シークエンスデータ解析に備えたデータの授受方法やファイル形式、解析手法について打合せた(坂本)。
(2) C型肝炎の肝病態進展軽快に関わる宿主遺伝要因の解析のため、申請者らの施設でそれぞれ遂行している肝炎診療に関する多施設共同研究で、ヒト遺伝子解析の追加プロトコル倫理審査を終了し、検体・臨床情報収集を開始した。
(3) 2000年から2010年までに当院で施行されたC型肝炎を背景とする肝細胞癌切除例を選定し、臨床情報データベースの整備を行った。
(1) 大規模ヒトゲノム・エキソーム解析のためのブレード型計算機を整備し、さらにデータ解析パイプラインの構築を行った。
(2) 公共のデータベースから多くのヒトゲノム情報や遺伝子多型情報を収集し、特に近年急速に研究が進む日本人特有の遺伝子多型情報を抽出して、本研究に使用できるように整備した。
(3) 先行研究の論文調査により、肝がん発症に関連する遺伝子多型の情報を収集し、整備を行った。
本研究の遂行により、今後迎える経口抗ウイルス薬による全例治癒の時代に備え、ウイルス排除後の肝発癌、生命予後などの自然経過とそれに関連する遺伝要因を明らかとすることができる。さらに新規治療薬の治療適応検討にあたり、従来非適応であった高齢者、肝硬変例のウイルス排除療法の予後改善効果とその関連因子を明らかとすることにより、医療経済学的検討のための科学的根拠が得られる。
(2) C型肝炎の肝病態進展軽快に関わる宿主遺伝要因の解析のため、申請者らの施設でそれぞれ遂行している肝炎診療に関する多施設共同研究で、ヒト遺伝子解析の追加プロトコル倫理審査を終了し、検体・臨床情報収集を開始した。
(3) 2000年から2010年までに当院で施行されたC型肝炎を背景とする肝細胞癌切除例を選定し、臨床情報データベースの整備を行った。
(1) 大規模ヒトゲノム・エキソーム解析のためのブレード型計算機を整備し、さらにデータ解析パイプラインの構築を行った。
(2) 公共のデータベースから多くのヒトゲノム情報や遺伝子多型情報を収集し、特に近年急速に研究が進む日本人特有の遺伝子多型情報を抽出して、本研究に使用できるように整備した。
(3) 先行研究の論文調査により、肝がん発症に関連する遺伝子多型の情報を収集し、整備を行った。
本研究の遂行により、今後迎える経口抗ウイルス薬による全例治癒の時代に備え、ウイルス排除後の肝発癌、生命予後などの自然経過とそれに関連する遺伝要因を明らかとすることができる。さらに新規治療薬の治療適応検討にあたり、従来非適応であった高齢者、肝硬変例のウイルス排除療法の予後改善効果とその関連因子を明らかとすることにより、医療経済学的検討のための科学的根拠が得られる。
結論
本研究の成果により疾患進展や発がんに関する高危険群を見いだすことが可能となり、積極的な医療介入が必要な患者群を割り出すことに貢献することが期待される。この研究により、適切な治療対象が絞り込まれ、より効率的な医療介入が期待され国民の福祉向上とともに適切な医療費管理などが見込まれる。本研究の成果で予後および薬物治療効果に関わる宿主遺伝子プロファイルが明らかとなることによりより、C型肝炎研究は推進され患者の予後を改善するのみならず、個別化医療の実現により治療の効率化が図れ、医療経済学的な効果に繋がり、社会の福祉に寄与することができる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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