C型肝炎を含む代謝関連肝がんの病態解明及び治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
201320011A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎を含む代謝関連肝がんの病態解明及び治療法の開発等に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡上 武(大阪府済生会吹田病院)
  • 西原利治(高知大学教育研究部医療学系医学部門臨床医学系)
  • 橋本悦子(東京女子医科大学)
  • 田中真二(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 植木浩二郎(東京大学 医学部附属病院 )
  • 芥田憲夫(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
  • 川口 巧(久留米大学医学部)
  • 松浦善治(大阪大学微生物病研究所 )
  • 勝二郁夫(神戸大学大学院医学研究科)
  • 森屋恭爾(東京大学 医学部附属病院)
  • 建石良介(東京大学 医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近増加している「代謝関連肝癌(MALC)」について、(1)C型肝炎肝発癌における代謝因子の解明と肝発癌抑制法の確立、(2)NASHの実態解明、病態解析と肝発癌抑制法の確立、(3)NASH、ASHの診断基準を満たさない非ASH非NASH非B非C型肝癌の実態解明、病態解析、高リスク群の設定、(4)糖尿病患者に発生する肝癌の病態解明と高リスク群の設定、を中心として臨床と基礎の両面から検討を行なう。危険群の設定と早期治療、新たな予防法の開発が期待される。本研究班における検討によって、上記の肝癌発生の高リスク群を設定し、高密度なフォローアップを行なうことで、肝癌の早期発見・治療が可能となり、肝癌患者の予後改善、医療費の削減が期待される。
研究方法
C型肝炎、NASH、非ASH非NASH非B非C型肝疾患に関連する肝癌を「代謝関連肝癌(Metabolism-associated liver cancer, MALC)」として、臨床と基礎の両面から解析を行ない、疾患の実態、病態を明らかにする。それを基に、高リスク群の設定、予防的治療法、新規肝癌治療法の開発へと結びつける。
1) C型肝炎肝発癌における代謝因子の重要性の解明と肝発癌抑制治療法の確立
2) NASHの実態解明、病態解析と肝発癌抑制治療法の確立
3) NASH、ASHの診断基準を満たさない非ASH非NASH非B非C型肝癌の実態解明、病態解析、高リスク群の設定による囲い込み
4) 糖尿病患者に発生する肝癌の病態解明と高リスク群の設定
を中心として、研究者ごと、あるいは班全体での研究を行ない、MALC発生の高リスク群を設定する。これらに対する高密度なフォローアップを行なうことで、肝癌の早期発見・治療が可能となり、肝癌患者の予後改善、医療費の削減を図る。
結果と考察
①NASHと病態が類似するC型肝炎においても、脂肪蓄積と線維化進展にPNPLA3の遺伝子多型が関与していることが明らかになった。この結果はC型肝炎の予後、特にPNALT症例の予後の検討に重要な意味を持つ可能性がある。
②MC4R遺伝子に異常を有する症例は幼児期より高度肥満を呈する。日本人では劣性遺伝形式を取ることが知られている。他方、フランス人では優性遺伝形式を示し、高度肥満者の1%にMC4R遺伝子異常を認める。MC4RKOマウスでは炎症細胞浸潤と著明な肝線維化の進展、肝細胞癌の合併が全例で観察され、MC4R/PPAR-α double KOマウスでは炎症細胞浸潤は軽微で、肝線維化や肝細胞癌の合併を認めなかったとの成績がヒトに外挿可能であれば、NASH治療に新たなbreakthroughをもたらす可能性がある。
③ERストレス終息シグナルと考えられるSdf2l1を肝臓特的にノックアウトすると、確かにERストレスの遷延と耐糖能障害・肝脂肪蓄積の増大が起きていることが明らかとなった。ヒト生検サンプルの検討でも、ERストレスシグナルの発現が低下しているほど、ERストレスが遷延し、耐糖能障害・NASHの進展が生じていると考えられた。
④アポリポ蛋白質の両親媒性αヘリックスがHCVの感染性粒子産生に関与していることが明らかとなった。両親媒性のαヘリックスとウイルス粒子の結合を特異的に阻害するような薬剤やペプチドは新規抗HCV剤の創薬標的と考えられる。
⑤近年、肥満人口の増加とともに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の肝細胞癌発癌への関与が注目されているが、成人日本人男性では、20g/日以下の飲酒者はむしろ少数派であり、飲酒と肥満のリスクを併せ持つ集団(C2)の同定が必要である。また、中等度飲酒と加齢以外に特段の危険因子を擁しない集団(C1)が同定されたため、今後これらの集団に隠れた危険因子が存在しないか精査する必要がある。
結論
①肝細胞癌は我が国の保健行政、医療の最大の問題の一つである。C型、B型肝炎に関連した肝癌が多くを占めるが、最近は両者陰性である『非B非C型肝癌』の増加傾向が見られ、対策確立が急務である。
②非B非C型肝癌の階層化クラスタリング解析よって、従来言われているNASHやアルコール性肝硬変以外に肝機能正常高齢男性や肥満と飲酒のリスクを併せ持つ集団など新たな背景集団を抽出することができた。C型肝炎、NASH、非ASH非NASHの非B非C型肝疾患に関連する肝癌を、「代謝関連肝癌(Metabolism-associated liver cancer, MALC)」として捉えて解析を行ない、その病態を探り、高リスク群を設定し、さらに肝発癌抑制法を開発し適用していくことで、これらの疾患の病態・肝発癌制御が可能になると考えられた。この様な認識をもって患者の管理・治療に当ることにより、患者の予後、QOLを大幅に改善することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320011Z