がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究

文献情報

文献番号
201320009A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究
課題番号
H24-肝炎-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 梅村 武司(信州大学 医学部)
  • 宮寺 浩子(東京大学大学院医学研究科)
  • 是永 匡紹(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 木村 公則(東京都立駒込病院)
  • 大隈 和(国立感染症研究所)
  • 調 憲(九州大学大学院医学研究院)
  • 内田 茂治(日本赤十字社 中央血液研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、がん化学療法及び免疫抑制療法中のHBV再活性化予防対策法の確立を目指す。今年度は各種疾患群におけるHBV再活性化率の把握と、臨床指標以外の再活性化リスク要因(HBV遺伝子変異、宿主遺伝子、免疫因子)の絞り込みを行うことを目的とした。
研究方法
各種疾患群を対象とした4つ多施設共同前方視的研究(①リツキシマブ+ステロイド併用化学療法中の悪性リンパ腫例、②固形がん例、③自己免疫疾患例、④造血幹細胞移植例を対象)によって、HBV再活性化、肝炎発症・劇症化の臨床リスク因子を同定する。上記臨床研究におけるHBV再活性化率、肝炎発症率、劇症化率を明らかにし、HBVモニタリング方法、抗HBV薬によるPreemptive therapyの有用性と費用対効果を明らかにする。また、臨床研究登録例の検体を用いて、ウイルス要因・宿主遺伝子、免疫因子の検索を網羅的に行い、臨床情報以外の再活性化リスク要因を同定する。
結果と考察
平成25年12月現在、4つの多施設共同前方視的研究が進行中である。①リツキシマブ+ステロイド併用化学療法中の悪性リンパ腫を対象とした多施設共同前方視的研究(全国68施設が参加、UMIN000001299)では、平成20年8月より平成23年7月までに既往感染例275症例が登録され、平成26年1月末でフォローアップ完了予定である。平成25年12月現在(試験開始5年4ヶ月経過)、275例中25例の再活性化例を認めたが(8.0%)、全例、肝障害を認めない時点で抗HBV薬を開始した。②固形がん領域(全国9施設が参加、UMIN000005369, 5370)でのHBV再活性化は既往感染例350例中7例(2.0%)であった。③関節リウマチを中心とした自己免疫疾患例、特にTNF阻害剤を含む生物学的製剤使用例(UMIN000002859)での再活性化率の予測値は2.7%(治療開始後48ヶ月時点)と推計された。④造血幹細胞移植例での後方視的解析によると、既往感染からのHBV再活性化は同種移植で37例中5例(13.5%)、自家移植で6例中0例(計5例、11.6%)であった。全例が再活性化時に核酸アナログが開始され、劇症肝炎例は認めなかった。造血幹細胞移植はHBV再活性化の高リスクであり、HBVワクチン投与による再活性化予防効果の評価を行う目的で、多施設共同前方視的試験を平成25年9月から開始した(UMIN000011543)。
上記4つの臨床試験登録症例、肝移植例から遺伝子解析用の検体を採取するため、各施設においてゲノム研究の臨床試験を申請し、倫理委員会等で承認を得ている。申請者らの検討により、B型肝炎慢性化に関連するHLA領域が明らかになっており、同領域の頻度を各疾患における再活性化例、非活性化例で比較検討する予定である。また同領域強制発現細胞を樹立しており、HBV遺伝子領域にT細胞エピトープを探索する予定である。
結論
各種疾患におけるHBV再活性化率を踏まえて、費用対効果に優れ、かつ効率的な再活性化予防対策を確立するためには、再活性化に関与する宿主遺伝子、ウイルス因子、免疫因子の更なる解析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201320009Z