ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法の確立

文献情報

文献番号
201320003A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法の確立
課題番号
H23-肝炎-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
前原 喜彦(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 雅史(国立国際医療研究センター)
  • 江口 晋(長崎大学大学院)
  • 川岸 直樹(東北大学病院)
  • 具 英成(神戸大学大学院)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学大学院)
  • 古川 博之(旭川医科大学)
  • 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学)
  • 國土 典宏(東京大学大学院)
  • 島田 光生(徳島大学大学院)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学)
  • 藤原 俊義(岡山大学大学院)
  • 永野 浩昭(大阪大学大学院)
  • 調 憲(九州大学大学院)
  • 大段 秀樹(広島大学大学院)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部)
  • 赤澤 宏平(新潟大学)
  • 森田 智視(京都大学大学院)
  • 山中 竹春(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科)
  • 副島 雄二(九州大学大学院)
  • 池上 徹(九州大学病院)
  • 池田 哲夫(九州大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多施設から臨床データを集積することで、C型肝炎に対する生体肝移植成績、抗ウイルス治療の成績等を明らかにできる。多施設から提供された組織からIL28Bの遺伝子多型を解析することで、我が国の肝移植患者のIL28Bの遺伝子多型の分布割合、肝移植患者のキメラ的IL28B遺伝子多型、Interferon治療の効果の関係を解明できる。これによりC型肝炎に対する生体肝移植後 Interferon治療の効果をより予測し、その適応を判断できる。また、本課題を確立することで、難治性肝炎再発に対して新たな治療法の開発へと繋がる可能性がある。
研究方法
エビデンスの高い日本発の臨床研究結果を得るために多施設共同研究を行う。研究代表者、分担者所属施設から、C型肝炎に対する肝移植症例の臨床データは九州大学に、DNA含有組織、血液は第三者DNA抽出施設で回収、DNAを抽出し九州大学、国際医療センターへ送付し、シークエンスを行いDonor、RecipientのIL28BのSNPがMajor、Minorであることが判定可能となる。各施設より回収した Interferon治療効果のデータベースから、IL28BのSNPが治療効果とどのように相関するのかを多数症例にて判定する。
結果と考察
514例のC型肝炎に対する生体肝移植の後、366例にIFN治療が導入、216例がVR、157例がSVRに至った。VR率、SVR率は59.0%、42.9%。IFN製剤は60.4%の症例でPeg-IFNα2b、28.9%の症例で通常型IFN、10.7%の症例でPeg-IFNα2aが使用された。C型肝炎に対する移植後生存率は、5年、10年後でSVR例で94.1%、83.0%、非SVR例で79.7%、60.8%で、SVRが生存率に大きく関わる。対象患者では75.6%の症例がTT型のIL28B遺伝子多型をもち、それ以外のTG、GG型は23.5%、0.9%。Donor、RecipientのIL28B遺伝子多型がTTのものでは有意にSVR率が高率だったが、TG、GGのものではSVR率は非常に低値に留まった。一方我々はIFNλに注目した。IFNλ4のうちss469415590のSNPがアフリカ系住民に於いてIFN感受性と関係している。そこで我々は、集積症例でss469415590のSNP解析を行った。するとrs8099917におけるT/T, T/G, G/Gとss469415590におけるT/T, T/ΔG, ΔG/ΔGの相同性は99.0%であった。rs8099917の場合と同様ss469415590もT/Tのhaplotypeをもつものが最もSVR率が高率であった。生体肝移植後の胆汁鬱滞性肝炎は非常に重篤で、死亡率は約60-70%だ。九州大学における肝移植後胆汁鬱滞性肝炎に於いて、HCVRNAが2週間で7.2logIU/mlに増加することが発症のRisk Factorで、同疾患ではHCVRNAのgenetic distanceが極めて小さくなっている。肝移植後胆汁鬱滞性肝炎の病理学的特徴は肝細胞の領域を選ばないバルーニングだった。最後に新規薬剤のDirect acting agentを用いた治療を11例に導入。治療効果は激烈で、RVRが27.3%、EVR、SVRは90.9%。但し一例に治療9週でT54Aのmutaionが出現しviral breakthroughを発症。しかし興味深いことにこのmutated virusは薬剤中止後時間経過と共に消失。イポウ高度貧血と腎機能障害がTelaprevirを用いた治療の問題点だった。現在までに得られた成果の重要点は、C型肝炎に対する生体肝移植後の Interferonの治療効果予測にはDonor、Recipient両者のIL28BのtypeがMajor/Major(TT)である必要があることだ。肝移植後の生存率は、非代償性肝硬変のRecipientの状態が比較的良好状態で肝移植術を施行した方が高いが、Donorのリスクを考えると、肝移植後の肝炎制御率が肝移植の適応判断に関わる。IL-28BがMajor/Majorであれば、より積極的に肝移植を行い、Interferon治療を行うことが、患者QOLの向上、医療費抑制に繋がる。逆に、IL28BにMinor要素が含まれていた場合は、肝移植後 Interferon治療が困難になり、肝硬変で非常に悪い状態であっても、Donorのリスク、後のグラフト機能を考慮すると肝移植を適応としないという判断も行える。本研究で得た結果により、肝移植適応の判断材料となる指針が得られる可能性が高い。
結論
多施設共同研究から、Donor、RecipientのIL-28BのSNPを測定し、C型肝炎に対する肝移植後の Interferon感受性を概ね予測できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201320003B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法の確立
課題番号
H23-肝炎-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
前原 喜彦(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 雅史(国立国際医療研究センター)
  • 江口 晋(長崎大学大学院)
  • 川岸 直樹(東北大学病院)
  • 具 英成(神戸大学大学院)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学大学院)
  • 古川 博之(旭川医科大学)
  • 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学)
  • 國土 典宏(東京大学大学院)
  • 島田 光生(徳島大学大学院)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学)
  • 藤原 俊義(岡山大学大学院)
  • 永野 浩昭(大阪大学大学院)
  • 調 憲(九州大学大学院)
  • 大段 秀樹(広島大学大学院)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部)
  • 赤澤 宏平(新潟大学)
  • 森田 智視(京都大学大学院)
  • 山中 竹春(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科)
  • 副島 雄二(九州大学大学院)
  • 池上 徹(九州大学病院)
  • 池田 哲夫(九州大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多施設から臨床データを集積することで、C型肝炎に対する生体肝移植成績、抗ウイルス治療の成績等を明らかにできる。多施設から提供された組織からIL28Bの遺伝子多型を解析することで、我が国の肝移植患者のIL28Bの遺伝子多型の分布割合、肝移植患者のキメラ的IL28B遺伝子多型、Interferon治療の効果の関係を解明できる。これによりC型肝炎に対する生体肝移植後 Interferon治療の効果をより予測し、その適応を判断できる。また、本課題を確立することで、難治性肝炎再発に対して新たな治療法の開発へと繋がる可能性がある。
研究方法
エビデンスの高い日本発の臨床研究結果を得るために多施設共同研究を行う。研究代表者、分担者所属施設から、C型肝炎に対する肝移植症例の臨床データは九州大学に、DNA含有組織、血液は第三者DNA抽出施設で回収、DNAを抽出し九州大学、国際医療センターへ送付し、シークエンスを行いDonor、RecipientのIL28BのSNPがMajor、Minorであることが判定可能となる。各施設より回収した Interferon治療効果のデータベースから、IL28BのSNPが治療効果とどのように相関するのかを多数症例にて判定する。
結果と考察
514例のC型肝炎に対する生体肝移植の後、366例にIFN治療が導入、216例がVR、157例がSVRに至った。VR率、SVR率は59.0%、42.9%。IFN製剤は60.4%の症例でPeg-IFNα2b、28.9%の症例で通常型IFN、10.7%の症例でPeg-IFNα2aが使用された。C型肝炎に対する移植後生存率は、5年、10年後でSVR例で94.1%、83.0%、非SVR例で79.7%、60.8%で、SVRが生存率に大きく関わる。対象患者では75.6%の症例がTT型のIL28B遺伝子多型をもち、それ以外のTG、GG型は23.5%、0.9%。Donor、RecipientのIL28B遺伝子多型がTTのものでは有意にSVR率が高率だったが、TG、GGのものではSVR率は非常に低値に留まった。一方我々はIFNλに注目した。IFNλ4のうちss469415590のSNPがアフリカ系住民に於いてIFN感受性と関係している。そこで我々は、集積症例でss469415590のSNP解析を行った。するとrs8099917におけるT/T, T/G, G/Gとss469415590におけるT/T, T/ΔG, ΔG/ΔGの相同性は99.0%であった。rs8099917の場合と同様ss469415590もT/Tのhaplotypeをもつものが最もSVR率が高率であった。生体肝移植後の胆汁鬱滞性肝炎は非常に重篤で、死亡率は約60-70%だ。九州大学における肝移植後胆汁鬱滞性肝炎に於いて、HCVRNAが2週間で7.2logIU/mlに増加することが発症のRisk Factorで、同疾患ではHCVRNAのgenetic distanceが極めて小さくなっている。肝移植後胆汁鬱滞性肝炎の病理学的特徴は肝細胞の領域を選ばないバルーニングだった。最後に新規薬剤のDirect acting agentを用いた治療を11例に導入。治療効果は激烈で、RVRが27.3%、EVR、SVRは90.9%。但し一例に治療9週でT54Aのmutaionが出現しviral breakthroughを発症。しかし興味深いことにこのmutated virusは薬剤中止後時間経過と共に消失。イポウ高度貧血と腎機能障害がTelaprevirを用いた治療の問題点だった。現在までに得られた成果の重要点は、C型肝炎に対する生体肝移植後の Interferonの治療効果予測にはDonor、Recipient両者のIL28BのtypeがMajor/Major(TT)である必要があることだ。肝移植後の生存率は、非代償性肝硬変のRecipientの状態が比較的良好状態で肝移植術を施行した方が高いが、Donorのリスクを考えると、肝移植後の肝炎制御率が肝移植の適応判断に関わる。IL-28BがMajor/Majorであれば、より積極的に肝移植を行い、Interferon治療を行うことが、患者QOLの向上、医療費抑制に繋がる。逆に、IL28BにMinor要素が含まれていた場合は、肝移植後 Interferon治療が困難になり、肝硬変で非常に悪い状態であっても、Donorのリスク、後のグラフト機能を考慮すると肝移植を適応としないという判断も行える。本研究で得た結果により、肝移植適応の判断材料となる指針が得られる可能性が高い。
結論
多施設共同研究から、Donor、RecipientのIL-28BのSNPを測定し、C型肝炎に対する肝移植後の Interferon感受性を概ね予測できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201320003C

収支報告書

文献番号
201320003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 27,458,383円
人件費・謝金 0円
旅費 776,940円
その他 1,764,677円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-