文献情報
文献番号
201319004A
報告書区分
総括
研究課題名
APOBEC3分子のタンパク質レベルの機能性多型を基礎としたHIV-1複製抑制機構の分子基盤の解明
課題番号
H23-エイズ-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮澤 正顯(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 高折 晃史(京都大学 大学院医学研究科)
- 伊藤 暢聡(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
- 有吉 紅也(長崎大学 熱帯医学研究所)
- 木村 彰方(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,966,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
マウスAPOBEC3は、Vifの有無に関わらずHIV-1複製を阻害する。本研究は、ヒトAPOBEC3GのN-末端と相同なマウスAPOBEC3のZ2ドメインを大量発現させ、ウイルス及び細胞タンパク質との相互作用を解析、その結晶化を試みるとともに、構造・機能に対するexon 5の役割を明らかにして、ヒトAPOBEC3GにVifによる阻害を受けないHIV-1複製抑制能を付与する分子設計の基盤を築くことを目的とした。
研究方法
1)マウスAPOBEC3各対立遺伝子及びそれらの変異体と、マウスレトロウイルスの感染性分子クローンを共発現させ、上清中のウイルス粒子を精製して、構造タンパク質の発現量とプロセシング、及び成熟粒子の割合を解析した。同様の解析を、HIV-1構造タンパク質を発現するレンチウイルスベクターを用いて行い、マウスAPOBEC3の共発現がHIV-1タンパク質のプロセシングに与える影響を解析した。
2)標識APOBEC3をコムギ胚芽系で大量発現させ、試験管内転写翻訳系で発現させたレトロウイルスタンパク質やそのdeletion mutantsとの相互作用を、pull-down法により直接解析した。
3)乳がん患者の末梢血ゲノムDNAを用い、APOBEC3B遺伝子の有無を健常人と比較検討した。
4)タイ・ランパンコホートの凍結末梢血単核球検体を用い、Ⅰ型インターフェロン刺激によるAPOBEC3発現誘導とHIV-1曝露非感染状態との相関を解析した。また、APOBEC3H多型とHIV感染抵抗性との関係を解析した。
2)標識APOBEC3をコムギ胚芽系で大量発現させ、試験管内転写翻訳系で発現させたレトロウイルスタンパク質やそのdeletion mutantsとの相互作用を、pull-down法により直接解析した。
3)乳がん患者の末梢血ゲノムDNAを用い、APOBEC3B遺伝子の有無を健常人と比較検討した。
4)タイ・ランパンコホートの凍結末梢血単核球検体を用い、Ⅰ型インターフェロン刺激によるAPOBEC3発現誘導とHIV-1曝露非感染状態との相関を解析した。また、APOBEC3H多型とHIV感染抵抗性との関係を解析した。
結果と考察
1)マウスAPOBEC3分子はレトロウイルスタンパク質と直接結合し、構造タンパク質のプロセシングと粒子成熟を阻害することがわかった。両者の相互作用にはウイルス側タンパク質のC-末端側は不要で、APOBEC3多型がプロセシング阻害に関係した。また、HIV-1タンパク質のプロセシングも阻害された。
2)APOBEC3Bホモ欠損と乳癌の発症とは相関がなかった。
3)Ⅰ型インターフェロンによるAPOBEC3G発現誘導には細胞種による差と個体差があり、APOBEC3G高発現の個体群にはHIV-1感染者がなかった。また、APOBEC3HのディプロタイプとHIV-1感染抵抗性との間に相関が認められた。
2)APOBEC3Bホモ欠損と乳癌の発症とは相関がなかった。
3)Ⅰ型インターフェロンによるAPOBEC3G発現誘導には細胞種による差と個体差があり、APOBEC3G高発現の個体群にはHIV-1感染者がなかった。また、APOBEC3HのディプロタイプとHIV-1感染抵抗性との間に相関が認められた。
結論
マウスAPOBEC3は、レトロウイルス構造タンパク質と直接結合し、そのプロセシングと粒子成熟を阻害する。プロセシング阻害はHIV-1に対しても有効であり、多型の影響もあることから、マウスAPOBEC3とウイルス側タンパク質との結合部位を同定することは、新たな抗レトロウイルス薬開発の標的として有望である。
公開日・更新日
公開日
2015-07-03
更新日
-