ムンプスに関する重大なワクチンギャップを抜本的に解決するための研究

文献情報

文献番号
201318077A
報告書区分
総括
研究課題名
ムンプスに関する重大なワクチンギャップを抜本的に解決するための研究
課題番号
H25-新興-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木所 稔(国立感染症研究所ウイルス第三部第三室)
研究分担者(所属機関)
  • 庵原俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 中山哲夫(北里大学生命科学研究所)
  • 竹田 誠(国立感染症研究所ウイルス第三部)
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
  • 網 康至(国立感染症研究所動物管理室)
  • 加藤大志(国立感染症研究所ウイルス第三部第三室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在おたふくかぜ(以下ムンプス)ワクチンの定期接種化が求められている。しかし、国産ワクチンは有効性が高い反面、安全性に懸念があり、海外で汎用されるJeryl-Lynn株(以下JL株)は安全性が高い反面、有効性に疑義が生じている。一方で、ムンプスウイルスの過弱毒化しやすいという特性から、新規ワクチンの開発は容易ではない。こうしたムンプスワクチンのジレンマを克服して、短期間で確実に安全で有効なワクチンプログラムを実現するため、既存のワクチン(JL株と国産ワクチン株)の長所を生かした相互補完的免疫プログラム(JL株で基礎免疫を行い、追加免疫を国産ワクチン株で行う)の確立をめざす。その評価のためにマーモセットを用いた動物モデルの確立を検討する。同時に、リバースジェネティクス(以下RG)等の最新技術や、臨床的研究からの情報に基づいた新規ワクチンの開発も併せて検討する。
研究方法
上記目的ために、次の3つの課題に関する研究を行う。
1)初回免疫に安全性の高いJL株を用い、追加免疫に免疫原性の高い国産ワクチンを用いる『相互補完的ワクチンプログラム』の評価
2)ムンプスウイルス(以下MuV)の病原性発現機構の解析に基づく新規ワクチンの開発
3)上記を実現するために、ワクチンの有効性と安全性を適確に評価できるマーモセット感染モデル系の確立
 H25年度は基礎実験として、マーモセットにおけるムンプスワクチンの至適接種用量を検討し、併せて副反応の指標となるバイオマーカーの検索を行った。
 臨床的研究として、接種年齢と副反応発生頻度との関連についての調査を行った。
 また、新規ワクチン開発の基礎となるRG法によって大館株の組換えウイルスの作出を試み、得られた組換えウイルスrOdate株の中枢神経病原性を評価した。併せて、弱毒生麻しんワクチン株AIK-Cに、MuVの中和抗体誘導に関わるHNもしくはF遺伝子を導入した組換え2価ワクチンウイルスの性状解析(ウイルス粒子表面へのMuV抗原の発現確認)を行った。
結果と考察
 中和抗体価から、マーモセットにおけるJL株の至適接種用量は68PFU(約100PFU)/頭であることが判明し、マーモセットはヒトに比べて約100倍感受性が高いことが明らかとなった。この結果から、マーモセットが優れたムンプス感染モデルであることが示された。また、ワクチン接種後のバイオマーカーとして、血中LDHが利用できる可能性が示唆された。
 臨床的研究から、ムンプスワクチンの接種年齢が高くなるにつれ、副反応発生率が上昇することが明らかとなり、1才での接種が望ましいことが示唆された。
 強毒株由来cDNAから作出された組換えMuV,rOdateのラットに対する病原性は、元株同様に高く、親株の性状が組換えウイルスにも反映されていることが確認された。これにより、MuVのRG法が有効な技術であることが示された。
 また、RG法によってAIK-C株にMuV遺伝子を導入した組換えAIK-Cのウイルス粒子表面へのMuV抗原発現の有無を調べたところ、いずれのMuV抗原も粒子表面に発現されておらず、その結果、組換えAIK-C株の細胞指向性は組み込んだMuV遺伝子に影響されないことが示唆された。
結論
 マーモセットにおけるワクチンの至適用量は68PFU/頭であることが判明し、マーモセットのMuVへの感受性が高いことが証明された。ワクチン接種後のバイオマーカーとして、血中LDHが有効であることが示唆された。
 ムンプスワクチンの副反応頻度は接種年齢と共に上昇するため、1才での接種が望ましいことが示唆された。
 RG法で作成された組換えMuVは元株の性状を反映できることから、MuVのRG法が有効な技術であることが示された。また、MuVの遺伝子を導入したAIK-C組換え2価ワクチンは、組み込んだMuV遺伝子の影響を受けず、細胞指向性が変化せず、AIK-Cの安全性に影響しないことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318077Z