迅速・網羅的病原体ゲノム解析法を基盤とした感染症対策ネットワーク構築に関する研究

文献情報

文献番号
201318051A
報告書区分
総括
研究課題名
迅速・網羅的病原体ゲノム解析法を基盤とした感染症対策ネットワーク構築に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 博一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 齋藤 幸一(岩手県環境保健研究センター保健科学部)
  • 舘田 一博(東邦大学・医学部)
  • 片野 晴隆(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 梁 明秀(横浜市立大学大学院 医学研究科分子生体防御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 未知病原体や変異病原体による感染症疑いの不明症例の解明や、新興感染症の汎発流行に対し的確な対処法を立案・整備する上で、次世代ゲノムシーケーンサー(Next-generation DNA sequencer: NGS)による網羅的かつ迅速に配列解読することは最も的確なアプローチの一つと考えている。本計画は、臨床検体から網羅的に病原体を検出する次世代型病原体検査法へと発展させ、原因不明症例を不明のまま残さない抜本的な検査法の改革に貢献するのが目的である。現在、国立感染症研究所・病原体ゲノム解析研究センターで行政検査・依頼検査を遂行中であるが、これら技術を普及させるべく、迅速な現場対応を可能とする地研・大学病院との感染症対策ネットワークの構築を目指す研究班である。
研究方法
 感染症発生動向調査および食中毒事例において、迅速かつ網羅解析が必要な検体の収集および地研間の網羅解析ネットワークの構築
・ 通常業務内で依頼された集団および重症例の臨床検体(髄液、血清、咽頭拭い液、便、尿)を次世代シークエンサーにより網羅配列解読を行う(研究分担者:小澤・齋藤・調・佐多・舘田)。感染研では、各地研からの要望に応じて不明・重症例について適宜、網羅配列解読(研究代表者:黒田)および病理検体から新規、既知病原体の検索を行う(研究分担者:片野)
・ 得られた配列をネットワーク経由で感染研(代表者:黒田)に転送し、担当者相互で病原体検索にあたる。従来の鑑別診断結果と網羅配列解読法の結果が符合するのか照合し、一般検査法と網羅配列解読法の特異性・感度について検討する(研究代表者:黒田、研究分担者:小澤・齋藤・調・佐多・舘田)
結果と考察
 本年度は研究代表者として大学病院・地研でも次世代型検査法が運用可能になるよう、感染研・病原体ゲノム解析研究センター・webサイトにてネットワーク化に不可欠な解析サーバーMePIC (Metagenomic Pathogen Identification pipeline for Clinical specimen) の運用も開始し、次世代シークエンサーを有する研究分担者(地研・大学病院)が活用できるようシステム整備した。次世代シークエンサーを導入した群馬衛研、山口衛研、富山衛研、東邦大をはじめ、計9機関の検査担当者に技術研修を行い技術力向上に貢献した。
 各分担機関で懸案になっていた不明症例を中心に、本技術研修を通して網羅配列解読した結果、簡易微生物検査キットでは陰性だったロタウイルス症例を特定することに成功し、既存キットの“特異性”だけでなく“感度”においても問題点を指摘することができた。

・研究分担者(木村博一)
  培養困難かつRT-PCR法で主要構造蛋白・抗原遺伝子(VP1およびVP3)の検出が困難なヒトライノウイルスC(HRV-C)について、RT-PCR/NGSによるセミフルゲノム解析法を開発に成功し、HRV-C検査におけるゲノム分子基盤を策定した。
・研究分担者(小澤邦壽、調恒明、佐多徹太郎、舘田一博)
  次世代シークエンサーを導入し、臨床検体ゲノム解析を行う事を目的として、当所ウイルスグループ、細菌グループの研究員が国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターにて技術研修を行い、ライブラリー作成、配列解析技術を習得した。
・研究分担者(齋藤幸一)
  平成25年、岩手県内の某飲食店で会食した5グループ(参加者94名)のうち4グループの40名が、食中毒様症状を呈し、ノロウイルスを検出した。患者および従業員の便検体を網羅的病原体検索した結果、GII/2, GII/4のノロウイルスを検出できただけでなく、混合感染とおぼしきAichi virusの存在も確定した。
・研究分担者(片野晴隆)
  不明感染症疑いの病理組織22例につき、ウイルスの網羅的検索を行い、6例で原因ウイルスの同定に至った。心筋炎症例からコクサッキーウイルスを検出する例が複数見られ、心筋にウイルス抗原を検出する例も認められた。
・研究分担者(梁 明秀)
  新規の病原性ウイルスTSVのVP1抗原タンパク質をコムギ無細胞系により合成・精製を行った。またこのタンパク質を抗原としたモノクローナル抗体を作製した。
結論
 不明症例の解明はもとより、検査現場・感染研のネットワーク構築のため、臨床・網羅的検査・技術研修・インフラ整備の全体の底上げを図る予定である。逐次、ネットワークの効率が悪い律速段階をチェックし、臨機応変かつ重点的にエフォートを投じ、従来のレファレンス活動をより重厚なシステムへと補強していきたい。今後さらに重厚な感染研と連携ネットワークを構築し、迅速に病原体検出と行政対応が迅速に執り行えるよう、現場中心の検査体制の確立に貢献する。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
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収支報告書

文献番号
201318051Z