病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究

文献情報

文献番号
201318035A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究
課題番号
H24-新興-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 棚林 清(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 大野 秀明(国立感染症研究所 真菌部)
  • 向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター感染制御部)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所 ウイルス第一部 第三室)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所 ウイルス第一部 第一室)
  • 前田 秋彦(京都産業大学 総合生命科学部動物生命医科学科)
  • 西村 秀一(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 臨床研究部ウイルスセンター)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部 第五室)
  • 加藤 康幸((独)国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 奥谷 晶子(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 篠原 克明(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 高田 礼人(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 安田 二朗(長崎大学熱帯医学研究所 新興感染症学分野)
  • 駒野 淳(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部ウイルス課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
35,313,000円
研究者交替、所属機関変更
H25年度においては分担研究者の変更および追加がなされた.H24年度(一年目)に研究分担者であった宮崎義継(国立感染症研究所真菌部部長)および杉山和良(同バイオセーフティ管理室長)から,それぞれ大野秀明(同真菌部室長)および棚林清(同バイオセーフティ管理室長)に替わった.また,安藤秀二(国立感染症研究所ウイルス第一部室長)が新たに研究分担者として本研究班に加わった.

研究報告書(概要版)

研究目的
 科学的エビデンスに基づき,しかも,効率的な病原体管理システムを構築するための基盤を整備し,バイオセーフティ及びセキュリティの向上に貢献することを目的とする.その目的のために、ヒトに病原性を有する病原体でリスク分類されていないもの,新規に発見されている病原体の管理を安全面から評価するためのシステムを整備する.現在の「国立感染所病原体等安全管理規定」に規定されていない病原体の迅速なリクス分類等を迅速かつ適切に行うことを可能にする.また,大量且つ迅速にサンプルを処理するシステムや病原体の登録,保管,輸送,廃棄の一括管理システム及びそれらの情報を統括する総合システム(ICBSシステム)を整備する.
研究方法
(1) 病原体管理システム(改良型ICBSシステム)におけるサンプル処理における効率化と省力化を通じた実用化を図る.サンプル情報を一括管理し,情報のデータベース化を行い,既存システムや既存データベースと連携し,広範囲なサンプルの一元管理を可能とする.保管庫のロックシステムと管理アルゴリズムを開発し,保管庫セキュリティを強化する.統一化された病原体管理情報は,国際的な情報の共有化,緊急時の病原体管理における迅速対応に有用である.
(2) 「国立感染所病原体等安全管理規定」に規定されていない病原体のリスク評価する.また,新規病原体の出現とそのバイオセーフティレベルを網羅的に評価する.
(3) 上記の目的のためとバイオセーフティ・セキュリティ向上に貢献するマニュアルを作成する.
(4) バイオセーフティ・オセキュリティおよびデュアルユースリサーチとバイオセキュリティの関連に関する国際的動向について調査する.
結果と考察
 病原体管理システム(改良型ICBSシステム)を改良し,実用性を強化した.具体的には,1)ICBSシステムプロトタイプ(Ver.1)を基に,作業の効率化と情報セキュリティ能力を強化し,ICBSシステムVer.2からVer2.3へと改良を行った,2)個々のユーザーの利用形態に応じたアプリケーションの改良と検証を行った,3)フリーザーロック機構と管理データの整合性(アルゴリズム)の検討を行い,実機(既存ロックシステム)との連携試験を継続した,4)本システムに必要なハードウェアの構成と最新技術及び各国の病原体管理の実情について情報収集と解析を行った.
 九州ブロックの地方衛生研究所の担当者および本研究班の分担研究者が一同に会して、ICBSシステム使用講習会を開催し、その実用的運用方法について訓練と意見交換がなされた。
 病原体リスク評価に関する研究では,「病原体等のBSL分類等」に含まれない病原体(新規呼吸器ウイルス,節足動物媒介性ウイルス,国内では発生していないが国内伝播リスクのある病原体,抗酸菌,細菌性ズーノーシス,新規ウイルス性出血熱の原因ウイルス(重症熱性血小板減少症候群ウイルスとHeartlandウイルスを含む),ヒトに中枢神経感染症を引き起こす可能性のある神経系ウイルス等による感染症,新興真菌感染症,新興寄生虫感染症感染症,既知および新規のリケッチア感染症ついて情報収集した.また,それらの病原体のリスク評価を試みた.
 バイオセーフティ,バイオセキュリティ,デュアルユースリサーチに関する世界的な動向について,Global Health Security Action Group Laboratory Network会議,日米バイオディフェンス会議等いくつかの国際会議に出席して調査した.
 日本バイオセーフティ学会と本研究班が共催して,「バイオセーフティ・バイオセキュリティの現状について–病原体の適正な取扱いと安全管理-」と題する公開シンポジウム[平成25年9月26日,北海道大学学術交流館(札幌)]を開催した.
結論
 本ICBSシステムは,個々の病原体サンプルに対して取扱い者のアクセスの制限とその履歴を管理することができ,バイオセキュリティ強化に寄与できると期待される.さらに,本システムを用いて各病原体サンプルを共通コード化することにより,施設内外でのサンプル情報の共有にも有用であると考えられる.したがって本ICBSシステムの導入は実際の現場における病原体管理作業の効率化と省力化,緊急時の病原体管理に大いに貢献できるものと考える.
 新興感染症の原因となっている新規病原体のリスクを評価することにより、病原体の取扱い、保管、管理、いわゆる個々の病原体の安全な取扱い方法を評価するためのマニュアル整備が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318035Z