重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の病態解析・診断・治療に関する研究 

文献情報

文献番号
201318024A
報告書区分
総括
研究課題名
重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の病態解析・診断・治療に関する研究 
課題番号
H24-新興-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(国立大学法人 岡山大学 大学院 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 河岡義裕(東京大学医科学研究所)
  • 長谷川俊史(山口大学大学院医学系研究科)
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所)
  • 奥村彰久(順天堂大学医学部)
  • 伊藤嘉規(名古屋大学医学部附属病院)
  • 河島尚志(東京医科大学)
  • 新矢恭子(神戸大学大学院医学研究科)
  • 塚原宏一(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 莚田泰誠(理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
  • 竹田晋浩(日本医科大学付属病院集中治療室)
  • 中川聡(独立行政法人国立成育医療研究センター病院)
  • 池松秀之(九州大学 先端医療イノベーションセンター 臨床試験部門)
  • 松川昭博(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岡部信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 宮入烈(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
34,030,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年2月、中国で鳥インフルエンザAH7N9亜型のヒトへの感染の報告が続き、致命率は25~30%と報告されている。一旦終息していた流行が再び増加し、平成26年1月以降200例を超える発症があり、致命率も20%を超えている。このAH7N9亜型の疫学・ウイルス学・病理学・病態・臨床像・診断/治療法の開発および診療体制整備などは、喫緊の課題と考えられ、本年度の研究は、従来の季節性インフルエンザに加え、この亜型の研究を緊急に設定した。
研究方法
本研究組織の特徴として疫学・基礎ウイルス学・病理学・免疫学・小児及び成人の感染症学・小児神経学・小児及び成人の集中治療学の専門家が集まり、包括的な研究を進めた。特に、AH7N9ウイルスの特徴を動物実験などから明らかにした。
一方、インフルエンザ重症例の診療体制整備は本研究班の重要な課題であるため、本研究班と厚生労働省大石班で各関連学会に呼びかけ、診療の標準化と重症例の診療体制(特にECMO)に向けた合同会議を平成25年からスタートさせた。
結果と考察
・AH7N9のウイルス学的特徴を明らかにすることができた。特にマウス・フェレットなどに対する病原性はH5N1,H7N9,H1N1pdmの順で高く、また感染力は、H1N1pdm,H7N9,H5N1の順で高かった。重要な点は、本ウイルスに対するマウスにおける抗インフルエンザ薬の効果についてであり、現時点ではノイラミニダーゼ阻害薬の効果は低かったことである。
・世界の研究者からの情報では、AH7N9によるARDSなどに対してECMOの治療が行われ、効果を上げていることが判った。この知見から関連学会に呼びかけ「インフルエンザ重症例に対する診療の標準化を目指した合同会議」が平成25年度3回開かれた。今後ガイドラインの作成を目指し、情報を共有することが確認されている。
・H1N1pdmにおける重症肺炎の発症機序が明らかになった。すなわち、1.宿主側の素因として喘息などアレルギー疾患を有すること、2.肺炎患者は有意に高いIgEを示すこと、3.喘息モデルマウスにおいてH1N1pdmウイルスは、局所において炎症性サイトカインを強く産生し、肺の病原性も高まることが示され、4.これらは同ウイルスにより肺炎で入院した患児の急性期遺伝子発現(DNAマイクロアレイ解析)において、IgE関連遺伝子および酸化ストレス関連遺伝子が高発現していることなどが示された。
・インフルエンザ脳症ガイドラインにおいて、痙攣重積型脳症(二相性脳症)においては、サイトカインストームは著明ではなく、従ってステロイドパルスや大量γグロブリン療法の治療効果は低かった。最近、市販されたホスフェニトインがこの二相性脳症に有効であることが示唆されたことは非常に重要な成果である。
・従来同じ急性脳症の中でも、病因ウイルスにより少しずつ臨床像が異なることを今まで明らかにしてきたが、今回ロタウイルスによる痙攣重積とインフルエンザによる痙攣重積とは、急性期の遺伝子発現のプロファイルが異なることがDNAマイクロアレイの解析から明らかになった。このことは、インフルエンザ脳症以外の急性脳症の治療法を組み立てる上で非常に重要な知見である。
 以上のようにAH7N9について、非常に重要な成果が得られた。また、H1N1pdmによる肺炎の発症及び重症化について重要な知見が得られ、今後インフルエンザによる重症肺炎に対する治療に役立てることができると思われた。
結論
AH7N9をはじめとして、多くの分野で優れた研究業績を挙げることができた。特に、AH1N1pdmウイルスによる肺炎の病態・発症機序およびインフルエンザ脳症と重症肺炎の宿主側発症因子が異なること、また同じ神経症状を示す病態でもウイルスが異なれば発現が増強する宿主側因子が異なることなど治療にも関連した重要な成果を得た。平成26年度については、AH7N9について引き続き研究を継続していく。また同時に、小児科内科・集中治療における診療の標準化を目指して、ガイドラインの整備を行っていく。AH7N9の情報収集について国際間連携を深めていく。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
44,239,000円
(2)補助金確定額
44,239,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 24,449,934円
人件費・謝金 3,524,765円
旅費 4,784,056円
その他 1,275,514円
間接経費 10,209,000円
合計 44,243,269円

備考

備考
自己資金4,158円と利息111円を含んだため差異が生じました。

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-