文献情報
文献番号
201317077A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィー診療における医療の質の向上ための多職種協働研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-神経-筋-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 秀徳(独立行政法人国立病院機構 長崎川棚医療センター(臨床研究部) 医歯(薬)学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 荒畑 創(独立行政法人国立病院機構大牟田病院)
- 石川 悠加(独立行政法人国立病院機構八雲病院)
- 大江田 知子(独立行政法人国立病院機構宇多野病院)
- 大矢 寧(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
- 貝谷 久宣(社団法人日本筋ジストロフィー協会)
- 金子 英雄(独立行政法人国立病院機構長良医療センター4)
- 川井 充(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
- 木村 正剛(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院)
- 黒田 健司(独立行政法人国立病院機構旭川医療センター)
- 駒井 清暢(独立行政法人国立病院機構医王病院)
- 小森 哲夫(独立行政法人国立病院機構箱根病院)
- 今 清覚(独立行政法人国立病院機構青森病院)
- 斉田 和子(独立行政法人国立病院機構宮崎東病院)
- 齊藤 利雄(独立行政法人国立病院機構根山病院)
- 坂井 研一(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)
- 島崎 里恵(独立行政法人国立病院機構西別府病院)
- 諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院)
- 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
- 中山 可奈(谷田部 可奈)(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
- 西田 泰斗(独立行政法人国立病院機構熊本再春荘病院)
- 橋口 修二(独立行政法人国立病院機構徳島病院)
- 福田 清貴(独立行政法人国立病院機構広島西医療センター)
- 福留 隆泰(独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター)
- 藤村 晴俊(独立行政法人国立病院機構刀根山病院)
- 松村 隆介(独立行政法人国立病院機構奈良医療センター)
- 丸田 恭子(独立行政法人国立病院機構南九州病院)
- 三方 崇嗣(独立行政法人国立病院機構下志津病院)
- 三谷 真紀(独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院)
- 峯石 裕之(独立行政法人国立病院機構松江医療センター)
- 吉岡 勝(独立行政法人国立病院機構西多賀病院)
- 和田 千鶴(独立行政法人国立病院機構あきた病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、多職種の協働で筋ジストロフィー患者や家族の高年齢化に対応できる診療体制を構築・検討し,長期療養における「医療の質」の確保および在宅療養における患者や家族の「生活の質」を向上させる方策を開発していくことにある.
研究方法
平成25年度はプロジェクト課題として「気管内喀痰自動吸引システムの筋ジストロフィー療養に及ぼす効果の検討」「人工呼吸器の機種変更にともなう換気量の変化」「筋ジストロフィーにおける栄養評価法の開発」を設定し,多施設共同で研究を行った.その他に5つの課題研究についても研究を行った。
(倫理面への配慮) 本研究は各施設の倫理委員会で承認を受けて実施した.対象となる被検者には研究の内容を説明し,本人または代諾者より、文書により同意を得た
(倫理面への配慮) 本研究は各施設の倫理委員会で承認を受けて実施した.対象となる被検者には研究の内容を説明し,本人または代諾者より、文書により同意を得た
結果と考察
1)プロジェクト研究
(1)気管内喀痰自動持続吸引システムの導入は,10年以上人工呼吸器を装着している2症例を除き7症例中5症例で可能であった.1例で導入後に発熱みられ,肺炎の診断にて抗菌薬を使用した.2例で内部吸引チューブの閉塞がみられたが,加湿・吸引流量の調整にて改善した.1例で導入後閉塞トラブルがみられ,気管カニューレ交換を施行した.吸引・ナースコール回数が著明に減少し,患者の苦痛軽減につながったが,SF8の結果には反映されなかった.医療コストも軽減した.
(2)多施設で数種類の人工呼吸器について人工呼吸器に関連したインシデント(ID)レポートを解析し,IDの頻度,背景因子の解明を行った.7病院より呼吸器関連IDを652件収集し,解析した結果、人工呼吸器関連ID発生頻度は,100台・月について4.0件 (95%CI 3.7-4.2) で.ID発生は医療従事者の介入後で最も多く,特に患者の移動介助後に発生したIDは73件(17.8% )であった. IDの内訳では,回路に関するものが最も多く,358件(56.2%)で、回路はずれIDに有意に関連する因子は,ポータブルベンチレーター使用および加温加湿器不使用であり,回路破損IDに有意に関連する因子は,加温加湿器使用であった。
(3) DMDの栄養状態と摂取栄養量との関連性を検討する多施設共同研究を17施設で施行した.対象はDMD患者110例.栄養摂取量調査,血液検査所見,身体所見,栄養投与方法,推定基礎代謝量を,呼吸器なし群,夜間NPPV群,終日NPPV群,TIPPV群の4群に分けて評価した.VB1,Zn以外の各栄養素は呼吸状態が重症なほど減少し,呼吸障害進行につれ摂取困難となるものと考えられた. VB1,Znは,呼吸器なし群でも必要量を満たしておらず,栄養士が積極的に介入する必要があると考えられた.
2)課題研究
(1)筋ジストロフィー患者のインターネット・IT利用の活用に関する具体的事例調査(多施設共同研究:参加27施設)では22施設(回収率81%)から回答があり.パソコン使用の教育・ルール作り、ウイルス感染などのセキュリティー、管理運営の方法などに問題が潜在することが明らかとなった.
(2)主に在宅療養中の筋ジストロフィー患者に提供する短期入院サービス(筋ジスポートサービス)を利用する患者に対して,多職種での評価結果や指導内容等を記載した報告書を郵送し,患者・家族の報告書に対する評価をアンケート調査し、この結果をもとに評価基準や在宅療養における指導内容を見直し,報告書の改訂を行った.
(3)長期人工呼吸用器機トラブル対応ネットワークシステムにおいて平成24年12月から平成25年10月までの不具合情報は25件,人工呼吸器の種類は9機種で,11施設からの情報提供があった.メモリーカード自主回収およびパワーパックバッテリー回収事例は,本ネットワークでの情報収集が緒となった.
(4)DMD/BMD 22名(5~15歳,平均11.5歳),健常群22名を対象に表情認知課題と心の理論課題を実施し,比較した.DMD/BMD低年齢群で表情の認識力と心の理論能力が低い傾向が認められた.
(5)筋ジストロフィー診療のデータベース構築:平成25年度の入院総数は2184例で,DMDは712例とさらに減少した.筋強直性ジストロフィー(MD)は375例であった。人工呼吸器装着率は, DMDで86.8%,MDで56.0%であった.経口摂取率は,DMDで65.7%,MDで52.9%,DMDの胃瘻栄養例は143例であった.今年度死亡例はDMD で44例,心不全が14例と最多,MDの43例では,呼吸不全・呼吸器感染症が最多の18例であった.
(1)気管内喀痰自動持続吸引システムの導入は,10年以上人工呼吸器を装着している2症例を除き7症例中5症例で可能であった.1例で導入後に発熱みられ,肺炎の診断にて抗菌薬を使用した.2例で内部吸引チューブの閉塞がみられたが,加湿・吸引流量の調整にて改善した.1例で導入後閉塞トラブルがみられ,気管カニューレ交換を施行した.吸引・ナースコール回数が著明に減少し,患者の苦痛軽減につながったが,SF8の結果には反映されなかった.医療コストも軽減した.
(2)多施設で数種類の人工呼吸器について人工呼吸器に関連したインシデント(ID)レポートを解析し,IDの頻度,背景因子の解明を行った.7病院より呼吸器関連IDを652件収集し,解析した結果、人工呼吸器関連ID発生頻度は,100台・月について4.0件 (95%CI 3.7-4.2) で.ID発生は医療従事者の介入後で最も多く,特に患者の移動介助後に発生したIDは73件(17.8% )であった. IDの内訳では,回路に関するものが最も多く,358件(56.2%)で、回路はずれIDに有意に関連する因子は,ポータブルベンチレーター使用および加温加湿器不使用であり,回路破損IDに有意に関連する因子は,加温加湿器使用であった。
(3) DMDの栄養状態と摂取栄養量との関連性を検討する多施設共同研究を17施設で施行した.対象はDMD患者110例.栄養摂取量調査,血液検査所見,身体所見,栄養投与方法,推定基礎代謝量を,呼吸器なし群,夜間NPPV群,終日NPPV群,TIPPV群の4群に分けて評価した.VB1,Zn以外の各栄養素は呼吸状態が重症なほど減少し,呼吸障害進行につれ摂取困難となるものと考えられた. VB1,Znは,呼吸器なし群でも必要量を満たしておらず,栄養士が積極的に介入する必要があると考えられた.
2)課題研究
(1)筋ジストロフィー患者のインターネット・IT利用の活用に関する具体的事例調査(多施設共同研究:参加27施設)では22施設(回収率81%)から回答があり.パソコン使用の教育・ルール作り、ウイルス感染などのセキュリティー、管理運営の方法などに問題が潜在することが明らかとなった.
(2)主に在宅療養中の筋ジストロフィー患者に提供する短期入院サービス(筋ジスポートサービス)を利用する患者に対して,多職種での評価結果や指導内容等を記載した報告書を郵送し,患者・家族の報告書に対する評価をアンケート調査し、この結果をもとに評価基準や在宅療養における指導内容を見直し,報告書の改訂を行った.
(3)長期人工呼吸用器機トラブル対応ネットワークシステムにおいて平成24年12月から平成25年10月までの不具合情報は25件,人工呼吸器の種類は9機種で,11施設からの情報提供があった.メモリーカード自主回収およびパワーパックバッテリー回収事例は,本ネットワークでの情報収集が緒となった.
(4)DMD/BMD 22名(5~15歳,平均11.5歳),健常群22名を対象に表情認知課題と心の理論課題を実施し,比較した.DMD/BMD低年齢群で表情の認識力と心の理論能力が低い傾向が認められた.
(5)筋ジストロフィー診療のデータベース構築:平成25年度の入院総数は2184例で,DMDは712例とさらに減少した.筋強直性ジストロフィー(MD)は375例であった。人工呼吸器装着率は, DMDで86.8%,MDで56.0%であった.経口摂取率は,DMDで65.7%,MDで52.9%,DMDの胃瘻栄養例は143例であった.今年度死亡例はDMD で44例,心不全が14例と最多,MDの43例では,呼吸不全・呼吸器感染症が最多の18例であった.
結論
人工呼吸器に関するプロジェクト研究では,呼吸管理を行う上での重要な事実が明らかとなった。多職種にわたる研究者が研究および研究班の班会議に参加し,筋ジストロフィー医療の質の向上と情報の共有に有用であった.
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-