文献情報
文献番号
201317026A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢黄斑変性に対する個別化医療実現のための前向き臨床研究にもとづくゲノムワイド関連解析
課題番号
H23-感覚-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 長久(京都大学 医学研究科 眼科学)
研究分担者(所属機関)
- 山城 健児(京都大学 医学研究科 眼科学 )
- 根木 昭(神戸大学 医学研究科 眼科学 )
- 米谷 新(埼玉医科大学 眼科学)
- 岩田 岳(東京医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
加齢黄斑変性(AMD)は先進国における社会的中途失明の最大の原因となっており、我が国でも近年急速に増加している疾患である。最近になって光線力学療法や硝子体注射薬といった治療方法が開発され、加療可能な疾患となってきたが、これらの治療方法の効果は視力を回復させるには十分ではない。患者ごとに各治療方法の効果が異なることから、これら複数の治療方法から各患者に最適な治療方法を選択することができれば、各患者における重症化の防止、QOLの向上・自立支援につながり、さらに医療費の抑制にもつながると考えられる。
近年、AMDの発症や治療結果に遺伝子(CFH, ARMS2等)の多型が関与することが分かってきたため、この遺伝子多型を用いて個別化医療を実現しようという気運が高まってきた。本研究では遺伝子多型を用いた個別化医療の精度の向上によって適切なAMDの治療を目指し、同時に不必要な治療や通院の抑制を測りたい。
近年、AMDの発症や治療結果に遺伝子(CFH, ARMS2等)の多型が関与することが分かってきたため、この遺伝子多型を用いて個別化医療を実現しようという気運が高まってきた。本研究では遺伝子多型を用いた個別化医療の精度の向上によって適切なAMDの治療を目指し、同時に不必要な治療や通院の抑制を測りたい。
研究方法
AMD個別化医療研究会参加施設(京大、神戸大、埼玉医大、東京医療センター)および協力施設(福島医大、群馬大、山梨大、東大、名市大、阪大、関西医大、島根大、聖隷浜松病院、大塚眼科、宮田眼科)で臨床研究を進めてきた。
これまで主力の治療方法であった光線力学療法および、平成22年春頃から使用が開始されてきた抗VEGF薬による治療後の反応・予後と相関する遺伝子多型をゲノムワイド関連解析の手法を用いて解明した。光線力学療法についてはこれまでに多数例の治療データが各施設に蓄積されているため、まず始めに後ろ向き研究を行うことで、相関遺伝子多型を解明した。抗VEGF薬治療については各施設から患者登録を行い、前向き研究を行い、ゲノムワイド関連解析の結果、抗VEGF治療の反応性を予測出来る可能性のある候補遺伝子の発見に成功した。各治療方法を行った際の反応・予後を予測するために有用な遺伝子多型を検出する迅速キットを作成し、キットを用いて各患者に最適な治療方法を選択し、実際に個別化医療を行ったうえで、その成果の検証を試みた。
これまで主力の治療方法であった光線力学療法および、平成22年春頃から使用が開始されてきた抗VEGF薬による治療後の反応・予後と相関する遺伝子多型をゲノムワイド関連解析の手法を用いて解明した。光線力学療法についてはこれまでに多数例の治療データが各施設に蓄積されているため、まず始めに後ろ向き研究を行うことで、相関遺伝子多型を解明した。抗VEGF薬治療については各施設から患者登録を行い、前向き研究を行い、ゲノムワイド関連解析の結果、抗VEGF治療の反応性を予測出来る可能性のある候補遺伝子の発見に成功した。各治療方法を行った際の反応・予後を予測するために有用な遺伝子多型を検出する迅速キットを作成し、キットを用いて各患者に最適な治療方法を選択し、実際に個別化医療を行ったうえで、その成果の検証を試みた。
結果と考察
【前向き研究;抗VEGF治療】
すべての施設での倫理委員会の承認を得た後、web上に作成した症例登録用ページに登録を開始し、256例を用いた研究で有力な候補遺伝子が発見できた。H25年度には再現性確認用に登録された200例を用いて再現性を確認したところ、7番染色体上の遺伝子について、統計学的に有意な関連は認めなかったが、同様の関連傾向を認めており、AMDの個別化医療に有用である可能性が高いと考えられる。
【後ろ向き研究;光線力学療法】
光線力学療法を施行済みの96例からDNAを抽出し、イルミナ社の2.5Mチップを用いた一塩基多型の検出が可能であった。現在、治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子を解明するために、ゲノムワイド関連解析を行っているが症例数が少なく、有意な遺伝子多型が発見出来なかった。抗VEGF治療の研究から得られた候補遺伝子についても有意な関連を認めなかった。
すべての施設での倫理委員会の承認を得た後、web上に作成した症例登録用ページに登録を開始し、256例を用いた研究で有力な候補遺伝子が発見できた。H25年度には再現性確認用に登録された200例を用いて再現性を確認したところ、7番染色体上の遺伝子について、統計学的に有意な関連は認めなかったが、同様の関連傾向を認めており、AMDの個別化医療に有用である可能性が高いと考えられる。
【後ろ向き研究;光線力学療法】
光線力学療法を施行済みの96例からDNAを抽出し、イルミナ社の2.5Mチップを用いた一塩基多型の検出が可能であった。現在、治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子を解明するために、ゲノムワイド関連解析を行っているが症例数が少なく、有意な遺伝子多型が発見出来なかった。抗VEGF治療の研究から得られた候補遺伝子についても有意な関連を認めなかった。
結論
抗VEGF治療の治療反応性・治療予後との相関を認める遺伝子の候補がみつかったと考えている。一方、光線力学療法については上述の遺伝子と治療反応性・治療予後との関連は認められなかったため、光線力学療法については既に知られているARMS2遺伝子の活用した個別化医療を行っていくべきであろう。
公開日・更新日
公開日
2015-05-20
更新日
-