全国リハビリテーション患者データベースを用いた維持期障害者に対する効果的な社会復帰支援に関する研究 

文献情報

文献番号
201317002A
報告書区分
総括
研究課題名
全国リハビリテーション患者データベースを用いた維持期障害者に対する効果的な社会復帰支援に関する研究 
課題番号
H23-身体-知的-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 尚久(横浜市立大学 附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 赤居 正美(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 生駒 一憲(北海道大学大学院 医学研究科 リハビリテーション医学講座)
  • 佐浦 隆一(大阪医科大学 リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,009,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はリハ医療を受けた患者に対して,維持期での障害状況,生活環境を基に,その後の社会復帰に対する自立訓練事業の実態調査を行い,どのような支援をどの程度の期間実施することが適切であるかを分析し,障害者の自立生活を支援するサービスに関して.標準的なサービス内容,標準的な利用期間等を提示し,全国のサービスの質の均一化を図るものである.本研究では急性期・回復期に評価したデータベースを発展させて,在宅での福祉制度利用の種類・期間についての実態調査を全国規模で施行し,その後の就労状況および地域での活動状況に関して調査を行い,福祉制度利用,特に自立訓練事業の内容・期間と社会復帰の関係を提唱することを目標とする.
研究方法
2013年度は2012年度に調査を行った入所型自立訓練施設でのデータと2013年度の経時的データを追加し、疾患別に自立訓練事業により改善する項目を明示し、効果を得るのに必要な期間の試算を行った。リハデータベースの利用に関しては2012年度同様に、日本リハ医学会のデータベースの脳卒中用、脊髄損傷用を用いた。リハ医学会データベースから得られる項目は麻痺の状況、ADLの総点および各動作項目、移動能力、合併症の有無、リハ訓練時間等である。さらに通所型自立訓練施設に対しても同様のデータベースを用いて、通所による機能維持・向上が可能かについて疾患別に検討を行った。維持期で在宅生活を行っている障害者とその中で訪問リハを行った患者群に対して同じデータベースから得られたデータと比較・検討し、通所型自立訓練施設の効果を訪問リハの効果と比較した。
結果と考察
本年度は①リハビリテーションデータベースに基づく全国通所型自立訓練施設における訓練効果(脳卒中、②リハビリテーションデータベースに基づく全国通所型自立訓練施設における訓練効果(脊髄損傷)、③脳卒中患者における全国通所型自立訓練施設と入所型自立訓練施設データとの比較、④訪問リハビリテーションデータベースに関する研究を行い、①では通所訓練で身体機能、ADLに 関する維持効果、社会生活のレベルアップに対する効果が期待できることが明らかとなった。②では通所訓練により身体機能、ADLに関する維持効果、社会生活のレベルアップに対する効果は期待できることが示された。③ではModified Rankin Scale、Brunnstrom Stage、HDS-R、認知症老人日常生活自立度では2群とも自立訓練前後で有意な差を認めす、一方、ADLに関してはBarthel Indexの総点で通所型では有意差を認めなかったのに対し、入所型では有意な改善を認め、通所型施設における訓練ではADLがほぼ自立している者に対しての社会生活訓練が適切であるのに対し、入所型施設ではADLの能力向上の入所適応があり、入所での自立訓練により、ADL、社会生活能力が向上することが期待された。④では項目としてリハ制度利用とその頻度、目的および内容、ADL、本人・家族のQOL、生活空間(LSA)などに関するものが必要であることが明らかとなった。

結論
脳卒中に関する全国通所型自立訓練施設における訓練効果からは、通所訓練により身体機能、ADL
に関する維持的効果および社会生活レベルのアップが期待できることがわかり、在宅障害者に対する
身体機能およびADLの維持、社会生活レベルの向上に通所型自立訓練が有効であることが示された。脊髄損傷に関しても同様に身体機能およびADLの維持、社会生活レベルの向上に通所型自立訓練が有効であることが示された。通所型と入所型の比較では入所型ではADLの向上にも有効であるため、利用の棲み分けとしては入所型はADL能力の向上も目的とした利用者に適切で、通所型はADLがほぼ自立した利用者でさらに社会生活レベルを向上させる目的の利用者に適切であると思われた。訪問リハに関するデータベースでは項目としてリハ制度利用とその頻度、目的および内容、ADL、本人・家族のQOL、生活空間(LSA)などに関するものが必要であり、今後自立訓練施設の効果と訪問リハの効果を比較することが必要で、本データベースは訪問リハの質を高めていくための検討材料となると思われた。本研究の結果から、入所型に関しては、機能訓練、ADLの向上も必要な利用者に適し、一方通所型は機能維持と社会生活能力の向上が必要な利用者に適していることが示された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201317002B
報告書区分
総合
研究課題名
全国リハビリテーション患者データベースを用いた維持期障害者に対する効果的な社会復帰支援に関する研究 
課題番号
H23-身体-知的-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 尚久(横浜市立大学 附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 赤居 正美(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 リハビリテーション科)
  • 生駒 一憲(北海道大学 大学院医学研究科 リハビリテーション医学教室)
  • 佐浦 隆一(大阪医科大学 大学院医学研究科 リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はリハビリテーション医療を受けた患者に対して,維持期での障害状況,生活環境を基に、その後の社会復帰に対する自立訓練事業の実態調査を全国リハビリテーション患者データベースを用いて行い、どのような支援をどの程度の期間実施することが適切であるかを分析し,障害者の自立生活を支援するサービスに関して、標準的なサービス内容,標準的な利用期間等を提示し,全国のサービスの質の均一化を図ることを目的として施行した。
研究方法
H23年度には急性期・回復期における障害者のデータベースから,在宅での福祉制度利用の種類・期間についての実態調査を施行した。研究内容は就労年齢の維持期障害者に対する退院時機能と退院後生活状況の特徴、自立支援施設に対するアンケート等であった。H24年度には維持期の入所型自立訓練事業の効果に関する調査を全国リハビリテーション患者データベースにより疾患毎に施行し、脳卒中および脊髄損傷患者に対する入所訓練効果について検討した。また脳卒中患者の日本リハ医学会データベースにおける脳卒中患者のデータと入所型自立訓練施設データを比較検討した。H25 年度には入所型自立訓練施設でのデータから疾患別に自立訓練事業により改善する項目を示した。また通所型自立訓練施設に対しても疾患別に検討を行い、訪問リハを行った患者群のデータと比較・検討した。
結果と考察
脳卒中患者を対象とした就労年齢の維持期障害者に対する退院時機能と退院後生活状況の特徴では日常生活自立度について高齢ほど自立度が低く、日常生活自立度は脳卒中後の身体機能、ADLと関連があり、就労年齢における脳卒中患者において社会的リハビリテーションが必要な患者が多数存在し、これらの患者に対する社会的リハビリテーションの必要性が示唆された。49施設に対する入所型自立訓練事業に対する現況調査では、職員配置が生活支援員平均10.5人に対し、理学療法士、作業療法士は平均約1名で身体機能向上、ADL能力の向上に専門的立場からリハを行うには少ない結果であった。平均入所期間は38.6か月で、生活施設化の危惧もあるが、社会資源が不十分で地域に戻すことが困難な場合もあると思われた。また入所者に高次脳機能障害者が多く存在し、この対応が重要と思われた。入所型自立訓練施設での脳卒中患者に対する訓練効果ではModified Rankin Scale、Brunnstorm Stage、HDS-R、認知症老人日常生活自立度では入所時と退所時の差は認めなかった。ADLに関してはBarthel Index、FIMとも有意な改善を認め、細項目では難易度の高い項目での改善効果が示され、社会生活能力向上に対する訓練施設利用の有効性が明らかとなった。脳卒中患者に対する入所型自立訓練施設での自立訓練事業により改善する項目に関する検討では、身体機能、麻痺レベル、精神機能、高次脳機能に関しては改善を期待できず、ADLにおいては総点で改善が期待でき、特に移乗、トイレ動作、入浴、平地歩行、階段、更衣など比較的難易度の高い項目で改善が期待できる結果であった。通所型自立訓練施設に対する検討では、入所型施設と比較して通所者の身体機能、精神機能、ADLは高い結果となり、訓練効果については、短期間での訓練による効果は少なく、機能向上を必要とする場合には6か月以上の通所継続が必要と思われた。訪問リハを行った患者群との比較では通所型訓練施設通所者の方が身体機能、精神機能、ADLが有意に高値を示していた。
結論
全国リハビリテーション患者データベースを用いた維持期障害者に対する効果的な社会復帰支援に関する研究を行った。本邦における多施設間データを用いた維持期での障害状況,生活環境のデータを明らかにした上で、入所型自立訓練施設での訓練効果を示すことができた。また通所型自立訓練施設と入所型訓練施設の比較検討では障害に基づいた訓練施設の利用方法を明示した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201317002C

収支報告書

文献番号
201317002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,009,000円
(2)補助金確定額
4,009,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,909,121円
人件費・謝金 556,850円
旅費 562,442円
その他 980,587円
間接経費 1,202,000円
合計 5,211,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-