研究マインドを持つ臨床医に対する疫学教育プログラムの開発と基盤整備

文献情報

文献番号
201315043A
報告書区分
総括
研究課題名
研究マインドを持つ臨床医に対する疫学教育プログラムの開発と基盤整備
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 理(聖ルカ・ライフサイエンス研究所 臨床疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院 院長)
  • 新保 卓郎(国立国際医療センター医療情報解析研究部 部長)
  • 松井 邦彦(山口大学大学院医学系研究科総合診療医学分野 教授)
  • 石田 也寸志(愛媛県立中央病院小児総合医療センター センター長)
  • 尾藤 誠司(国立病院機構東京医療センター臨床疫学研究室 室長)
  • 大出 幸子(聖ルカ・ライフサイエンス研究所 上級研究員)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EBMを支えているのは医療現場の疑問から発する臨床研究からの質の高いエビデンスであり、実際に診療を行っている医師がリサーチマインドを持ち臨床研究に関与することが重要である。本研究の目的は、忙しい臨床医が臨床を中断することなく、臨床研究の過程を理解し臨床研究を自ら行うリサーチマインドを持った臨床医の育成を行うことである。
研究方法
4つの分担研究を設定した。
1) 臨床研究e-learning教育プログラムの構築
開発する主な目的は研究プロトコルの作成である。学習方法は、ビデオなどの自己学習教育ツールだけでなく、学習者とメンターが1つのグループとして参加しグループ内・間で議論しながら学ぶ双方参加e-learningとした。UCSFのPRIMEカリキュラム作成グループと共同で開発する。
2) 臨床研究メンター手法の標準化
臨床研究サポートの経験のある臨床医を中心にメンター会議を定期的に開催し、臨床疫学・生物統計学のレクチャー法、コンサルテーションの仕方等具体的な手法について経験を共有し標準化を目指す。分担研究者がUCSFのMentor Development Courseに参加し米国での臨床研究メンタリング手法を視察する。メンターのためのワークショップ・シンポジウムを計画する。
3)支援ネットワークの構築
 臨床研究をサポートしている国内の医療施設・研究施設に所属するメンターの取り組みを調査し、リストを作成しネットワークを構築する。各メンターのリソースやフィールドをシェアして有効活用することを目指す。ホームページを作成し、研究者とメンター間でディスカッションできる場を提供する。メンターネットワークに加え、生物統計学者などの専門家の支援ネットワークを構築し知識・経験をシェアすることでリソースの有効活用を可能とする。
4) 女性医師復職支援と疫学教育・臨床研究
研究デザイン:質的研究、対象数は10例
目的:女性医師のキャリア継続の観点から、妊娠・出産時期の疫学教育や臨床研究が、女性医師の復職に有用であるための要因を抽出した。研究対象者:臨床業務に従事している卒後10年目以内の女性医師で、今後も臨床医として働く予定のある者。また、現在、育休・産休等で休職中の以前臨床業務に従事していた女性医師。実施手順:2013年9月から12月の間に、研究者が1対1の半構造化インタビュー(30分)を実施した。解析方法:逐語化されたデータは、修正版グラウンデッド・セオリーアプローチを用いた。
結果と考察
(結果)
1)臨床研究に必要な基礎知識を習得することを目的に前半が臨床疫学、後半は生物統計からなる、1本10分の講義を週に2本提供し期間は2か月とした。
2)臨床研究メンターが身に付けるべき能力について、UCSFらのグループが作成した原案を参考に日本での臨床研究メンター能力のリストを作成した。第一回メンター会議を2日間行い(参加者15名)、作成した日本における臨床研究メンター能力の修正加筆を行った。また、UCSFのメンタリングワークショップに参加し来年度に日本で開催予定のメンタリングワークショップの準備を整えた。
3)プロジェクトのグランドデザインを明文化し要件定義書を作成し、臨床研究に必要な様々なリソースを共有することを目的に臨床研究支援ネットワーク(eCRNet)を構築した。1人の臨床研究メンターに3人の臨床医メンティーを1グループとし、10グループを登録した。また、臨床疫学・生物統計学の専門家のリストを作成し、e-learning受講者がその後研究を行う上で自由に質問ができる環境を整備した。
4)所属臨床科の臨床・疫学研究に対する理解や、メンターの存在といった支援環境の整備の重要性が示唆された。また、女性医師復職・継続就労支援と臨床疫学研究のシンポジウムを開催し(参加者40名)どのような疫学教育体制・研究支援体制があれば、実施可能かどうかを討議した。アンケート回答者の95%がかなり価値ありと報告した。
(考察)
臨床医がリサーチマインドを持ち臨床研究に関与することがEBMの実践には必要である。しかし、いくつかの障害を克服する必要がある。これらを克服する一つの方策として、ネットワークを利用して、臨床医とほかの専門家や臨床研究リソースを共有し、e-learningを組み入れた臨床研究立案から論文発表までメンタリングをネット利用のみで行ったシステムを構築した。今後、1年間臨床研究支援プロジェクトを開始し比較的リソースの少ない一般病院や地域病院の忙しい医師が実際に臨床研究に携わることができるかを検討する。
結論
多忙な臨床医が、インターネットを通して臨床研究メンターによるメンタリングやその他のリソースを共有し、臨床研究立案から発表を行うための継続的支援を担うeCRNetの基盤整備を開始した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
6,188,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,812,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 40,201円
人件費・謝金 256,934円
旅費 1,361,539円
その他 2,530,127円
間接経費 2,000,000円
合計 6,188,801円

備考

備考
自己資金801円

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-