全例登録を基盤とした高リスク骨髄異形成症候群に対する標準治療の確立および予後マーカー探索の研究

文献情報

文献番号
201314037A
報告書区分
総括
研究課題名
全例登録を基盤とした高リスク骨髄異形成症候群に対する標準治療の確立および予後マーカー探索の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-がん臨床-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 幸夫(国立がん研究センター 中央病院)
  • 清井 仁(名古屋大学 大学院医学系研究科 )
  • 千葉 滋(筑波大学 血液内科)
  • 臼杵 憲祐(NTT東日本関東病院 血液内科)
  • 大竹 茂樹(金沢大学 医薬保健研究域 )
  • 南谷 泰仁(東京大学 医学部附属病院 )
  • 本田 純久(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 竹下 明裕(浜松医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アザシチジン(AZA)は骨髄異形成症候群(MDS)の予後を延長しうると証明された唯一の薬剤であり、現状では同種移植適応のない大多数の例が本剤による治療を受けている。しかし、AZAの最適投与法は世界的にも確立されていない。国内では著しい高齢化に伴う患者増加や、固形腫瘍に対する化学療法の普及に伴う二次性MDSも増加する中、AZAによる標準治療確立と治療反応予測因子、予後因子探索が急がれる。本研究では、(1)高リスク骨髄異形成症候群(MDS)に対するAZA標準投与法の確立ならびに予後マーカーの探索、(2)MDSの実臨床像の把握、(3)腫瘍細胞の分子異常に基づくAZA治療効果予測確立、(4)二次性MDSの実態把握を行う、総合的なMDS解明を目的とする。
研究方法
本研究はJapan Adult Leukemia Study Group (JALSG)と連携しつつ、高リスクMDSを含めた全例登録研究(CS11研究)と平行してAZA投与法に関する無作為比較試験(MDS212試験)を実施する。MDS212試験では患者試料を採取し腫瘍細胞の分子異常とAZA治療成績の関連を検討する。以前の高リスクMDS全例登録研究CS07研究ではAZA認可前の高リスクMDS症例が登録されており、その治療実態並びに予後解析を行う。CS07およびCS11研究から二次性MDS症例を抽出し調査を行う。収集された検体を用いた遺伝子解析を実施する。
 倫理面への配慮として、本研究の計画書はJALSGプロトコール審査委員会で審査され、参加施設の倫理委員会の審議と施設長の承認を得て実施される。試験はJALSGデータセンターによってモニタリングされ、JALSG施設審査・監査委員会によって監査される。
結果と考察
平成23年8月から参加施設で新たに診断される急性骨髄性白血病(AML)、MDS症例登録を開始し、現在、122施設が施設登録し、2753例が登録されている。登録開始後2年3ヵ月の時点のモニタリングでは、de novoの症例は2282例(83%)、治療関連AML/MDS 248例(9%)、造血異常が先行するものは223例(8%)であった。AMLの中では、M2が最も多く40%を占め、M1~M4がAMLの8割を占めた。MDSではRA/RARSとRAEB-1/2がほぼ同数であり、JALSG参加施設では従来の報告にくらべて高リスクが多かった。生死確認例の35%が死亡例であり、生存例のうち52%は非寛解であった。予想を上回る登録の進捗状況を鑑み、低リスクMDSにおける脱メチル化薬による生存の改善効果の有無を副次的評価項目として新たに加えて継続している。
MDS212試験には平成26年3月末までに45例が登録された。その内訳は、年齢43歳~84歳と高齢者が多く、男性31例、女性15例であった。2次性MDSは6例で、染色体異常ではgood群14例、intermediate群9例、poor群19例、分析不能3例であった。治療群はPermuted block法により、5日間投与群24例、7日間投与群21例に無作為に割り付けられた。参加施設は62施設である。
MDS212試験では患者検体の収集、サンプル調整とその保存、付随研究施行施設へのサンプル送付等についてシステムを構築し、順調に運用された。京都大学・小川誠司教授らとの共同研究で、MDSにおけるコヒーシン複合体遺伝子への変異集積を見出した。さらにAZA治療抵抗性と関連する遺伝子異常をエクソーム解析によって探索しており、候補遺伝子(14個)を選択した。
治療関連骨髄系腫瘍の検討では、JALSG試験登録例より治療関連白血病/MDS症例を抽出し、一次腫瘍に関する診断名、診断日、治療内容、治療期間、転帰などのデータ集積を開始した。さらに、急性前骨髄球性白血病(APL97)研究の再解析を行い、登録例全体の3.3%が二次性APLであり、APLに対する治療後には283例中11例(3.9%)に二次性造血障害がみられた。
本研究によって本邦のAML, MDSの全体像が明らかになる、高リスクMDSに対する至適AZA投与法が確立されると期待される。今後AZA治療成績に関連する分子病態が検討される予定であり、将来の治療戦略展開にも役立つ。近年、固形がんに対する化学療法の進歩に伴って増加が懸念される二次性造血器腫瘍の実態を明らかにして行くことは、がん治療全体に対して重要は情報を提供することになる。
結論
施設で診断されるAML, MDS全例登録を基盤とした高リスク骨髄異形成症候群に対する標準治療の確立のための研究を推進しており、試験の体制が整備されて症例が登録されている。二次性造血器腫瘍の研究、患者検体を用いたゲノム研究についても準備が進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高リスク骨髄異形成証拠群に対するアザシチジンの5日投与と7日投与との無作為比較試験で、全生存を主要評価項目とし5日投与試験の非劣性を示すことを目的として臨床試験を継続している。臨床試験に参加出来ない骨髄異形成症候群症例については、低リスク例を含めて全例登録の観察研究を実施しており、確実に症例登録が進んでいる。いずれも解析時期には至っていないが、試験を継続しているところである。
臨床的観点からの成果
今後、観察研究、前向き介入研究の結果がでれば、我が国における骨髄異形成症候群の臨床実態が明らかになると同時に、アザシチジン治療における標準療法の評価が可能となると期待される。
ガイドライン等の開発
本試験は平成25年度に開始されたばかりであり、試験結果は未だ発表されていない。本研究成果が得られた後には、その結果がガイドライン等に反映されると思われる。
その他行政的観点からの成果
高齢者に多い骨髄異形成症候群の臨床実態を明らかにすること、アザシチジンの標準的投与法を確立することは、今後の本疾患に対する治療戦略開発、薬物開発などの基礎的データを提供することになり、行政的な対応を考える上でも貴重な情報となることが予想される。
その他のインパクト
 次世代がん研究プロジェクトと連動して検体の収集がなされている。収集検体についてはゲノム解析が実施されており、治療反応性と関連する遺伝子異常の検討がなされる予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201314037Z