より有効ながん医療政策の決定に資する、がん対策に対する医療経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
201314016A
報告書区分
総括
研究課題名
より有効ながん医療政策の決定に資する、がん対策に対する医療経済評価に関する研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小松 恒彦(帝京大学 医学部第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 湯地 晃一郎(東京大学医科学研究所附属病院 内科)
  • 眞鍋 文雄(医療法人桐友会まなべクリニック)
  • 斉藤 秀之(医療法人社団筑波記念病院 リハビリテーション部)
  • 鞍馬 正江(医療法人社団筑波記念病院つくば血液病センター)
  • 池澤 和人(医療法人社団筑波記念病院 消化器内科)
  • 児玉 有子(東京大学医科学研究所先端医療社会連携コミニュケーションシステム社会連携研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんに関わる予防、早期発見、治療における費用およびその効果と、通院等に関する非医療費用、がんによる経済的損失等の間接費用および精神社会的な費用を、国民の誰にもわかりやすい指標で、かつ医療施策決定にも資すことができる形で明示することである。本研究は、既にコンセンサスの得られているデータを活用することを前提とし、「がんとお金」の全体像を明確にし、「費用対効果に優れた望ましいがん医療」の形を示すことを目標とする。
平成25年度は、研究成果をがん医療に関わる施策決定に資すことが可能な形で、かつ持続可能な医療制度への礎とすべく完成させる。医療関係者以外にも理解しやすい身近な数値で示すことで国民に還元する。
研究方法
がん医療に要する費用区分を、1)がん予防、2)早期発見、3)根治的治療、4)非根治的治療、5)間接費用および非医療費用、6)精神社会的費用、の6つに区分する。がん罹患による不幸と損失を政策的に減らす手段として、がん予防と早期発見(具体的にはがん検診受診率向上)は特に重要と考えられる。
結果と考察
 対象とした10のがんに関する費用の全貌を明らかにすることができた。がんに要する費用は一般に、直接費用、間接費用、精神社会的費用に区分されるが、われわれは直接費用を、1)がんの予防に関する費用、2)根治的治療に繋がる検診法に関わる費用、3)根治的治療に関わる費用、4)非
根治的治療に関わる費用、5)非医療費用である通院費用、に区分した。既存のコンセンサスが
得られた報告やデータを対象とした調査を行い、費用区分毎のマトリックスを完成させた。
この成果により、医療政策に携わる者以外の広く国民一般にも、がんの関する費用が明確に、
分かりやすく提示された。 また「20歳のピロリ菌除菌」「14歳女子、ヒトパピローマウィルス全員接種」などのプロジェクトが仮に行われた場合の医療経済的な分析を、費用便益分析という他業種では一般的な分析法を用いることで、明確に採算が試算されることが明らかとなった。
 今後、日本のがん罹患・死亡を減らすためには、各々のがんの高リスク住民を抽出し、濃厚なフォーローアップや治療を施すことが必要と考えられた。

結論
 今回の研究成果により、がんに要する費用が明示されたことで、国民自らが自分たちの生活設計を
立てることの一助になりうる。医療政策立案者においては、例えば予防や検診等、一時的にはさらな
る費用が生じる施策でも俯瞰的な立場から見ることで、将来的には大きな損失を回避できることが
容易に理解される。
 また費用便益分析という手法は「プロジェクトメイキング」に適している。「20歳のピロリ菌除菌
は30年後には大きな便益を生じるし、「14歳女子のHPVワクチン接種」は少なくとも40歳までは
大きな損益を生じる。医療は損得が全てではないが、持続可能な制度設計には経済的に成り立つこと
は必須である。それら政策立案者のマインドを替えることに繋がれば幸甚である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201314016B
報告書区分
総合
研究課題名
より有効ながん医療政策の決定に資する、がん対策に対する医療経済評価に関する研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小松 恒彦(帝京大学 医学部第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 湯地 晃一郎(東京大学医科学研究所附属病院 )
  • 眞鍋 文雄(医療法人桐友会 まなべクリニック )
  • 斉藤 秀之(医療法人社団筑波記念病院リハビリテーション部)
  • 鞍馬 正江(医療法人社団筑波記念病院つくば血液病センター)
  • 池澤 和人(医療法人社団筑波記念病院)
  • 児玉 有子(東京大学医科学研究所先端医療社会連携コミニュケーションシステム社会連携研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんに関わる予防、早期発見、治療における費用およびその効果と、通院等に関する非医療費用、がんによる経済的損失等の間接費用および精神社会的な費用を、国民の誰にもわかりやすい指標で、かつ医療施策決定にも資すことができる形で明示することである。本研究は、既にコンセンサスの得られているデータを活用することを前提とし、「がんとお金」の全体像を明確にし、「費用対効果に優れた望ましいがん医療」の形を示すことを目標とする。
研究方法
がん医療に要する費用区分を、1)がん予防、2)早期発見、3)根治的治療、4)非根治的治療、5)間接費用および非医療費用、6)精神社会的費用、の6つに区分する。がん罹患による不幸と損失を政策的に減らす手段として、がん予防と早期発見(具体的にはがん検診受診率向上)は特に重要と考えられる。(1)がん予防は、禁煙の啓蒙、肝炎ウィルスの治療や子宮頸癌ワクチン等が対象となる。(2)早期発見は、がん検診の有用性が示されている胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、前立腺がんを主たる対象とする。一例として、乳がん検診は受診率が50%を越えると死亡率が低下するとされており、欧米では既に受診率が80%を越え死亡率の減少も認められている。(3)根治的治療は、がん検診で発見された早期がんに対する手術・放射線・抗がん剤治療(術前・術後の補助療法を含む)を主たる対象とし、診療報酬等から要する費用を調査する。(4)非根治的治療は(3)の対象から外れたがんに対する延命目的の抗がん剤治療および在宅医療等に係る費用の費用対効果を検討する。(5)この区分には、がん罹患による失職等に伴う収入損失を現す間接費用と、通院等に関わる非医療費用が含まれる。間接費用は、がん罹患後の平均生存期間と厚労省国民生活基礎調査の概況等から推計する。非医療費用は、われわれが行ってきた患者動態調査の手法を用いて推計する。(6)精神社会的費用は、がんによる生活の質の低下による損失を定量的な数値指標で評価する。
 対象とするがんは日本人における罹患数を参考とし、A)肺がん、B)胃がん、C)大腸がん、D)肝がん、E)膵がん、F)乳がん、G)前立腺がん、H)子宮がん、I)悪性リンパ腫、J)多発性骨髄腫、の10種類のがんとした。費用区分を横軸とし、10種類のがんを縦軸としたマトリックス(7:流れ図を参照)毎に、費用およびその効果、障害調整生存年等の具体的な数値を示す。
結果と考察
 対象とした10のがんに関する費用の全貌を明らかにすることができた。がんに要する費用は一般に、直接費用、間接費用、精神社会的費用に区分されるが、われわれは直接費用を、1)がんの予防に関する費用、2)根治的治療に繋がる検診法に関わる費用、3)根治的治療に関わる費用、4)非
根治的治療に関わる費用、5)非医療費用である通院費用、に区分した。既存のコンセンサスが
得られた報告やデータを対象とした調査を行い、費用区分毎のマトリックスを完成させた。
この成果により、医療政策に携わる者以外の広く国民一般にも、がんの関する費用が明確に、
分かりやすく提示された。
結論
 今回の研究成果により、がんに要する費用が明示されたことで、国民自らが自分たちの生活設計を
立てることの一助になりうる。医療政策立案者においては、例えば予防や検診等、一時的にはさらな
る費用が生じる施策でも俯瞰的な立場から見ることで、将来的には大きな損失を回避できることが
容易に理解される。
 また費用便益分析という手法は「プロジェクトメイキング」に適している。「20歳のピロリ菌除菌
は30年後には大きな便益を生じるし、「14歳女子のHPVワクチン接種」は少なくとも40歳までは
大きな損益を生じる。医療は損得が全てではないが、持続可能な制度設計には経済的に成り立つこと
は必須である。それら政策立案者のマインドを替えることに繋がれば幸甚である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来医療における費用対効果は、QALYなどを算出する「費用効用分析」で行われていたが、数値の算出に主観的要素が必要で、かつ得られた数値が適正かの判断がそれ単独では行えない。われわれが行った「費用便益分析」では、がんに対する予防、または検診における費用対効果を客観的に示すことが可能で、かつ中長期的な視点でがん医療政策を検討することができる。
臨床的観点からの成果
対象とした10のがん(肺、胃、大腸、肝、膵、乳腺、子宮頸部、前立腺、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)における費用区分(予防、検診、根治的治療、非根治的治療、間接費用、精神社会的費用)ごとの費用を明確にした。当然ながら、がんは罹患しないことが最も費用が安く、次いで罹患しても根治的治療が可能な早期に発見されれば費用は少なく後遺障害も軽微である。これらの数値が示されることで国民が自主的にがんの予防や検診に積極的となることが期待される。
ガイドライン等の開発
審議会等で参考とされたことは現時点ではない。今後、がん医療政策としてがんの予防、検診におけるガイドライン等を策定する場合、その施策の経済的な持続可能性を検討する際に、極めて有用と考えられる。
その他行政的観点からの成果
審議会等で参考とされたことは現時点ではない。がんに関わるすべての費用が国民にもわかりやすい数値で示されたことで、がん医療政策の国民への説明が容易になる。一般的にがんの予防や検診などの施策の評価には長い時間を要するが、本研究で用いた「費用便益分析」の手法を用いることで企画段階で損益等の予測が可能となる。
その他のインパクト
米国臨床腫瘍学会の「Quality Care Symposium」でがん患者の外来化学療法の通院に関する時間と費用を発表し(San Diego, 2014)、欧州がん総会で胃がんにおけるピロリ除菌と子宮頸がんワクチンに関する費用便益分析の結果を個人レベルと国レベルで提示し発表した(Amsterdam, 2014)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
2件
European Cancer Congress 2014 @ Amsterdam ASCO's Quality Care Symposium 2014 @ San Diego
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201314016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,600,000円
(2)補助金確定額
3,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,649円
人件費・謝金 622,823円
旅費 1,149,600円
その他 1,819,953円
間接経費 0円
合計 3,602,025円

備考

備考
自己資金2,025円

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
-