悪性神経膠腫に対するTemozolomideの治療効果を増強した標準治療確立に関する研究 

文献情報

文献番号
201314011A
報告書区分
総括
研究課題名
悪性神経膠腫に対するTemozolomideの治療効果を増強した標準治療確立に関する研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳脊髄腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉山孝正 (山形大学医学部 脳神経外科 )
  • 隈部俊宏  (北里大学医学部 脳神経外科)
  • 倉津純一(熊本大学医学部 脳神経外科)
  • 杉山一彦(広島大学病院 がん化学療法科)
  • 永根基雄(杏林大学 脳神経外科 )
  • 西川亮(埼玉医科大学国際医療センター 脳・脊髄腫瘍科)
  • 別府高明(岩手医科大学 脳神経外科・高気圧環境医学 )
  • 村垣善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野)
  • 若林俊彦(名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科)
  • 角美奈子(国立がん研究センター中央病院 放射線治療科 )
  • 米盛勧( 国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在なお予後不良である膠芽腫に対し、標準治療となったTemozolomide (TMZ)併用化学放射線療法の効果をさらに増強する治療法を開発し、より効果的な標準治療を確立することを目的とする。
研究方法
20~75歳の初発膠芽腫患者を対象とし、初期治療として、手術後、放射線治療開始とともにTMZ 75mg/㎡/dayの服用を開始、同時に週3回300万IUのIFN-βの静脈内投与を開始する。放射線治療終了後、28日間の休薬期間を設け、その後、28日ごとに、5日間のTMZ(150から200mg/㎡/day)投与に、IFN-βの1回静脈内投与を併用する。これをTMZのみ併用の放射線治療・維持化学療法と比較するランダム化第II相試験を実施する。Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは無増悪生存期間、奏効割合、完全奏効割合、有害事象発生割合、重篤な有害事象発生割合とし、有効性・安全性が確認できれば、この両者を比較する第III相試験を行う。また、付随研究(JCOG0911-A)として膠芽腫に対する予後因子、効果予測因子となりうる既知、未知のバイオマーカーを探索的に検討する。
結果と考察
JCOG0305(ACNU vs ACNU+Procarbazine)およびEORTC/NCICのRT vs RT+TMZの臨床試験結果から、国内における膠芽腫に対する標準治療はRT+TMZにすべきという結論に至った。しかしながら、TMZを用いても膠芽腫の生存期間中央値は14.6ヵ月に過ぎず、さらにその効果を高める工夫が必要である。一方、O6-methylguanine-DNA methyltransferase (MGMT)は、ACNUなどのnitrosourea系抗癌剤の他、TMZ対するに耐性に関連する蛋白として知られている。INF-βはp53を介してMGMTの遺伝子発現を抑制する作用が知られており、RT+TMZを標準治療とし、RT+TMZ+IFN-βとのランダム化第Ⅱ相試験を実施するに至った。
JCOG0911として平成22年4月より登録を開始、平成24年1月に目標症例数の120例(実登録数122)の登録が完了し、平成26年1月に2年間の経過観察期間を終了した。平成25年9月のモニタリングレポートでは、重大な有害事象の発生はなく、両群あわせての生存期間中央値は20.4ヵ月と良好であった。また、付随研究として膠芽腫に対する予後因子、効果予測因子となりうる既知、未知のバイオマーカーを探索的に検討するため検体の回収を行っている。
結論
本試験の結果、RT+TMZ+IFN-βの有効性・安全性が確認されれば、RT+TMZ+IFNβの優越性デザインの第Ⅲ相試験を行い、膠芽腫に対する新たな標準治療が確立される可能性がある。また、各種バイオマーカーの検討により、さらに有効な治療法の開発へつながるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201314011B
報告書区分
総合
研究課題名
悪性神経膠腫に対するTemozolomideの治療効果を増強した標準治療確立に関する研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳脊髄腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉山孝正 (山形大学医学部 脳神経外科)
  • 隈部俊宏 (北里大学医学部 脳神経外科)
  • 倉津純一(熊本大学医学部 脳神経外科)
  • 杉山一彦   (広島大学病院 がん化学療法科)
  • 永根基雄(杏林大学 脳神経外科 )
  • 西川亮  (埼玉医科大学国際医療センター 脳・脊髄腫瘍科)
  • 別府高明  (岩手医科大学 脳神経外科・高気圧環境医学)
  • 村垣善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野)
  • 若林俊彦 (名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科 )
  • 角美奈子(国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
  • 米盛勧(国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在なお予後不良である膠芽腫に対し、標準治療となったTemozolomide (TMZ)併用化学放射線療法の効果をさらに増強する治療法を開発し、より効果的な標準治療を確立することを目的とする。
研究方法
20~75歳の初発膠芽腫患者を対象とし、初期治療として、手術後、放射線治療開始とともにTMZ 75mg/㎡/dayの服用を開始、同時に週3回300万IUのIFN-βの静脈内投与を開始する。放射線治療終了後、28日間の休薬期間を設け、その後、28日ごとに、5日間のTMZ(150から200mg/㎡/day)投与に、IFN-βの1回静脈内投与を併用する。これをTMZのみ併用の放射線治療・維持化学療法と比較するランダム化第II相試験を実施する。Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは無増悪生存期間、奏効割合、完全奏効割合、有害事象発生割合、重篤な有害事象発生割合とし、有効性・安全性が確認できれば、この両者を比較する第III相試験を行う。また、付随研究(JCOG0911-A)として膠芽腫に対する予後因子、効果予測因子となりうる既知、未知のバイオマーカーを探索的に検討する。
結果と考察
JJCOG0305(ACNU vs ACNU+Procarbazine)およびEORTC/NCICのRT vs RT+TMZの臨床試験結果から、国内における膠芽腫に対する標準治療はRT+TMZにすべきという結論に至った。しかしながら、TMZを用いても膠芽腫の生存期間中央値は14.6ヵ月に過ぎず、さらにその効果を高める工夫が必要である。一方、O6-methylguanine-DNA methyltransferase (MGMT)は、ACNUなどのnitrosourea系抗癌剤の他、TMZ対するに耐性に関連する蛋白として知られている。INF-βはp53を介してMGMTの遺伝子発現を抑制する作用が知られており、RT+TMZを標準治療とし、RT+TMZ+IFN-βとのランダム化第Ⅱ相試験を実施するに至った。
JCOG0911として平成22年4月より登録を開始、平成24年1月に目標症例数の120例(実登録数122)の登録が完了し、平成26年1月に2年間の経過観察期間を終了した。平成25年9月のモニタリングレポートでは、重大な有害事象の発生はなく、両群あわせての生存期間中央値は20.4ヵ月と良好であった。また、付随研究として膠芽腫に対する予後因子、効果予測因子となりうる既知、未知のバイオマーカーを探索的に検討するため検体の回収を行っている。
結論
本試験の結果、RT+TMZ+IFN-βの有効性・安全性が確認されれば、RT+TMZ+IFNβの優越性デザインの第Ⅲ相試験を行い、膠芽腫に対する新たな標準治療が確立される可能性がある。また、各種バイオマーカーの検討により、さらに有効な治療法の開発へつながるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
膠芽腫に対して、放射線治療にTemozolomideを併用することの有用性は既に証明されているが、それにInterferonを追加することの効果はいまだに不明である。今回のphase II 試験により、その疑問が解決されることは極めて意義深い。
臨床的観点からの成果
膠芽腫に対する標準治療であるTemozolomide併用の放射線治療での生存期間中央値は14.6ヵ月に過ぎず、さらに効果的な治療開発が望まれている。Interferonによる上乗せ効果を検証したが、全生存期間、無増悪生存期間ともにTmozolomide単独と比べ有意差なく、phase III試験へ進めることを断念した。
ガイドライン等の開発
現在、日本癌治療学会のがん診療ガイドラインのひとつとして、悪性脳腫瘍のガイドラインの第1版が作られている。本試験の結果は、その改訂時に反映されるものと考えられる。
その他行政的観点からの成果
膠芽腫に対し、術後、Temozolomide併用放射線治療にInterferon betaを加えることによる上乗せ効果は認められなかった。
その他のインパクト
新規標準治療として一般化することができないと判断した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Wakabayashi T, et al: Journal of Neuro-Oncology. https://doi.org/10.1007/s11060-018-2831-7
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2018-06-08

収支報告書

文献番号
201314011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,600,000円
(2)補助金確定額
11,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 53,520円
人件費・謝金 3,680,998円
旅費 3,077,390円
その他 2,112,092円
間接経費 2,676,000円
合計 11,600,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
-