成人難治性白血病におけるバイオマーカーに基づく層別化治療法の確立

文献情報

文献番号
201314004A
報告書区分
総括
研究課題名
成人難治性白血病におけるバイオマーカーに基づく層別化治療法の確立
課題番号
H23-がん臨床-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
直江 知樹(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 薄井 紀子(東京慈恵会医科大学)
  • 大西 一功(浜松医科大学医学部附属病院)
  • 臼杵 憲祐(東京医療保健大学 血液内科)
  • 小林 幸夫(国立がん研究センター 血液腫瘍科)
  • 清井 仁(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 熱田 由子(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 伊藤 良和(東京医科大学 内科学第一講座)
  • 松村 到(近畿大学 医学部)
  • 今井 陽俊(札幌北楡病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、成人白血病に対して新たな分子診断による治療層別化を行い、化学療法、分子標的療法、同種造血幹細胞移植を含んだ新しい標準的治療法の確立を行うことと、白血病における包括的な前向き登録を実施し、我が国の白血病に関する診断と治療・アウトカムに関する実態を明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究の実施に当たっては、高い症例集積能力を有するJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)の全面的な協力を得て下記の臨床試験を実施した。
観察研究AML209-GS(UMIN-CTR:000003432)、第Ⅱ相試験AML209-FLT3-SCT(UMIN-CTR:000003433)、APL212(UMIN-CTR:000008470)、APL212G(UMIN-CTR:000008471)、第Ⅲ相試験CML212(UMIN-CTR:000007909)、MDS212(UMIN-CTR:000009633)、第Ⅳ相試験CBF-AML209KIT(UMIN-CTR:000003434)、コホート研究CS-11(UMIN-CTR: 000008371)、ALL-CS-12(UMIN-CTR:000007653) の登録を継続・推進するとともに、成人ALLを細胞表現系、Ph染色体の有無、年齢のアルゴリズムに基づき層別化したPh(-)B-ALL213(UMIN-CTR:000010619)、Ph(+)ALL213(UMIN-CTR:000012173)、T-ALL213(UMIN-CTR:000010642)試験を開始した。
臨床研究の質を高めるため、施設監査を行った。
結果と考察
急性骨髄性白血病(AML)においては、遺伝子変異の状態により、成人AMLの予後を3群に層別化可能であることを明らかにした。この結果を検証するためにAML209GS試験を実施し、1433例の検体と臨床情報を前方視的に集積した。成人core binding factor AMLに対するシタラビン大量療法のKIT遺伝子型別反応性を評価するCBF-AML209-KIT試験、FLT3/ITD変異陽性成人AMLを対象とした同腫造血幹細胞移植療法の有効性と安全性を評価するAML209-FLT3-SCT試験を実施し、各々174例、35例の症例登録を得た。
16歳以上65歳未満の急性前骨髄球性白血病(APL)患者を対象に、地固め療法として亜砒酸、ゲムツズマブ・オゾガマイシンを用いた3年無イベント生存率を主要評価項目とするAPL212試験、65歳以上のAPL患者を対象に、地固め療法として亜ヒ酸を用いた治療を行い、化学療法のみが施行された過去のJALSG成績と比較するAPL212G試験の登録を継続し、それぞれ81例、27例の症例登録を得た。国際的には亜ヒ酸とATRA併用が注目されており、我が国でも独自のレチノイドAm80を組み込んだ次世代治療を開発することが期待されている。
成人急性リンパ性白血病(ALL)に対しては、細胞表現系、Ph染色体、年齢に基づく層別化を行ったうえで、小児プロトコールや第二世代のチロシンキナーゼ阻害剤であるダサチニブの導入などによる治療成績の向上と安全性を評価するALL213試験を開始した。現在ALLではトランスクリプトーム解析も行われており、次期研究事業ではそれらを取り込んでいくことも期待される。
コホート研究であるCS-11、ALL-CS-12試験には2808例、202例の登録があった。
全ての臨床試験において、患者同意が得られた検体を中央保管し、試験計画に応じて遺伝子解析を実施し、有効性・副作用に関連するバイオマーカーおよび分子病態に基づく層別化システムの構築を図った。登録時のスクリーニング遺伝子解析は、検査会社に委託した。
結論
計画された臨床試験の登録は予定通り順調に進んでおり、また付随研究の検体収集も順調に行われているため、後方視的に得られたバイオマーカーの検証を前方視的臨床試験のなかで検証していくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201314004B
報告書区分
総合
研究課題名
成人難治性白血病におけるバイオマーカーに基づく層別化治療法の確立
課題番号
H23-がん臨床-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
直江 知樹(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 薄井 紀子(東京慈恵会医科大学)
  • 大西 一功(浜松医科大学医学部附属病院)
  • 臼杵 憲祐(東京医療保健大学)
  • 小林 幸夫(国立がん研究センター 血液腫瘍科)
  • 清井 仁(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 熱田 由子(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 伊藤 良和(東京医科大学 内科学第一講座)
  • 松村 到(近畿大学 医学部)
  • 今井 陽俊(札幌北楡病院)
  • 竹内 仁(日本大学 医学部)
  • 宮崎 泰司(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 矢ケ崎 史治(埼玉医科大学国際医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、成人白血病に対して新たな分子診断による治療層別化を行い、化学療法、分子標的療法、同種造血幹細胞移植を含んだ新しい標準的治療法の確立を行うことと、白血病における包括的な前向き登録を実施し、我が国の白血病に関する診断と治療・アウトカムに関する実態を明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究の実施に当たっては、高い症例集積能力を有するJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)の全面的な協力を得て下記の臨床試験を実施した。
観察研究AML209-GS、第Ⅱ相試験AML209-FLT3-SCT、APL212、APL212G、第Ⅲ相試験CML212、MDS212、第Ⅳ相試験CBF-AML209KIT の登録を継続・推進するとともに、23年度は「全AML、全MDS、全CMML症例を対象とした5年生存率に関する観察コホート研究」CS-11を、24年度では「研究参加施設に新たに発生する全ての成人ALL症例を対象とした5年生存率に関する前向き臨床観察研究」ALL-CS-12を開始し、最終年度は、新たに成人ALLを細胞表現系、Ph染色体の有無、年齢のアルゴリズムに基づき層別化した、Ph(-)B-ALL213、Ph(+)ALL213、T-ALL213の3つの試験を開始した。
目標症例数に到達した第Ⅱ相試験ALL202-U、第Ⅲ相試験ALL202-O、第Ⅱ相試験Ph-ALL208-IMA、第Ⅲ相試験CML207、コホート研究(CS-07)は新規登録を終了し、臨床経過の観察と情報収集を継続するとともに、ALL202-Uについては解析を行った。第Ⅲ相試験APL204は臨床情報の固定化と解析を行った。
結果と考察
観察研究AML209試験では目的症例数1500例を上回る1547例が登録された。また再発・難治AML に対するgemtuzumab ozogamicin(GO)と化学療法との併用療法のプロトコールを策定した。
成人APLに対するAPL204試験については、ハイリスク者におけるタミバロテンのATRAに対する優位性が示された。付随研究ではAPL212およびAPL212G登録症例において検体保存を行い、PML-RARA亜型をはじめとする網羅的遺伝子解析と予後解析をあわせて行った。
成人未治療APLに対する次期プロトコール、ハイリスクMDSに対するアザシチジンによる臨床試験のプロトコール、初発慢性期のCMLに対するニロチニブとダサチニブのランダム化比較試験CML212は、いずれも2012年より登録を開始し合計233例登録された。第二世代TKIによるCML治癒に向けた世界で唯一のランダム化試験を計画し、実施した。また、これまでに報告のない、40例の初発時のCML細胞と頬粘膜DNAを用いての全エクソン解析を実施した。
BCR-ABL陽性成人急性リンパ性白血病(Ph+ALL)を対象としたimatinib併用化学療法による第Ⅱ相臨床試験については69例の登録があり試験登録を終了した。
JALSG参加施設における全ての初診AMLとMDS、CMMLを登録し5年間追跡するコホート研究CS-07は3329例の登録を得て終了した。コホート研究CS-11は2011年に、ALL-CS-12が2012年に開始し、症例は2808例、202例登録され、継続して実施中である。
ALL202の登録が2010年中に終了し、安全性や副作用に関してはその一部を発表した。ALLではトランスクリプトーム解析も行っている。
Ph(-)B-ALL213試験は12例、T-ALL211-O試験は1例、T-ALL211-U試験は2例、Burkitt-ALL213試験は0例、Ph+ALL213試験は0例登録された。
全ての臨床試験において、患者同意が得られた検体を中央保管し、試験計画に応じて遺伝子解析を実施し、有効性・副作用に関連するバイオマーカーおよび分子病態に基づく層別化システムの構築を図った。登録時のスクリーニング遺伝子解析は、検査会社に委託した。
結論
本研究事業では、JALSGの協力を得て数多くの臨床研究を行うと共に、最先端の白血病遺伝子研究の礎となる検体収集を行った。年度ごとに新たに計画、開始された臨床試験の登録は予定通り順調に進んでおり、また付随研究の検体収集および解析も順調に行われた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成人白血病の臨床研究に関わる研究者がJALSGと一体となって研究を進め、班会議には毎回200名を超える参加者があった。前向き登録(観察)研究、前向き治療介入研究、検体を用いた後ろ向き研究を総合的に推進できた。成果はインパクトの高い国際学術雑誌に30を超える論文を掲載され、その成果はエビデンスとして各種ガイドラインに掲載されるなど実際の医療現場に還元されている。
臨床的観点からの成果
我が国の白血病専門医が一堂に会する事により、情報の共有や医療技術の均てん化に貢献できた。特に臨床研究やゲノム検体の取り扱いを含めた倫理諸問題への対応では参加施設で大きな前進があったと思う。
ガイドライン等の開発
この三年間を含めた厚労省班研究成果は、『日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2013年度版』に数多く採用された。また研究代表者は、WHO Clinical Advisory Committee Meetingのメンバーに選ばれ、2016年夏に予定されているWHO分類改訂に向けた会議に参加した。
その他行政的観点からの成果
研究代表者は厚労省におけるがん研究に関わる委員会等に参加し、また白血病治療薬・マイロターグ症例登録など薬剤の適正使用に関する行政指導において協力を行ってきた。
その他のインパクト
研究成果はJALSGホームページ(http://www.jalsg.jp/topics/hpnew.html)で「これまでの治療成績」として、また現在進行している研究は「JALSG臨床研究」として公開している。また患者向けコーナーとして、病気の説明やセカンドオピニオンを載せている他、JALSG参加施設を公開するとともに各施設で進行している臨床研究一覧を見ることができるようにしている。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
78件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
105件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
その他成果(普及・啓発活動)
18件
25th Anniversary International Symposium of Japan Adult Leukemia Study Group (2011/6/23-24)東京国際フォーラム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tominaga-Sato S, Mano H,Miyazaki Y,et al.
Expression of myeloperoxidase and gene mutations in AML patients with normall karyotype: double CEBPA mutations are associated with high percentage of MPO positivity in leukemic blasts
Int J Hematol , 94 (1) , 81-89  (2011)
10.1007/s12185-011-0883-y
原著論文2
Ohnishi K,Takeuchi J, Naoe T.et al.
Long-term outcome of imatinib therapy, with assessment of its dosage and blood levels, for chronic myelogenous leukemia.
Cancer Sci , 103 (6) , 1071-1078  (2012)
10.1111/j.1349-7006.2012.02253.x
原著論文3
Atsuta Y,Morishima Y, Suzuki R,et al.
Comparison of unrelated cord blood transplantation and HLA mismatched unrelated bone marrow transplantation for adults with leukemia.
Biol Blood Marrow Transplant , 18 (5) , 780-787  (2012)
10.1016/j.bbmt.2011.10.008
原著論文4
Mizuta S, Ohnishi K, Naoe T,et al.
Pre-transplant imatinib-based therapy improves the outcome of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for BCR-ABL-positive acute lymphoblastic leukemia.
Leukemia , 25 (1) , 41-47  (2011)
10.1038/leu.2010.228
原著論文5
Yanada M,Kobayashi Y, Naoe T, et al.
Phase 2 study of arsenic trioxide followed by autologous hematopoietic cell transplantation for relapsed acute promyelocytic leukemia.
Blood , 121 (16) , 3095-3102  (2013)
10.1182/blood-2012-11-466862
原著論文6
Usuki K, Kurosawa S, Uchida N, et al.
Comparison of Autologous Hematopoietic Cell Transplantation and Chemotherapy as Postremission Treatment in Non-M3 Acute Myeloid Leukemia in First Complete Remission.
Clin Lymphoma Myeloma Leuk , 12 (6) , 444-451  (2012)
10.1016/j.clml.2012.07.004
原著論文7
Wakita A,Ohnishi K, Naoe T, et al.
Randomized comparison of fixed-schedule versus response-oriented individualized induction therapy and use of ubenimex during and after consolidation therapy for elderly patients with acute myeloid leukemia: the JALSG GML200 Study
Int J Hematol , 96 (1) , 84-93  (2012)
10.1007/s12185-012-1105-y
原著論文8
Ito Y, Ohnishi K, Naoe T,et al.
Phase 1 trial of gemtuzumab ozogamicin in combination with enocitabine and daunorubicin for elderly patients with relapsed or refractory acute myeloid leukemia: Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG)-GML208 study.
Int J Hematol , 96 (4) , 485-491  (2012)
10.1007/s12185-012-1165-z
原著論文9
Yanada M, Usuki K, Kobayashi T, et al.
Effect of related donor availability on outcome of AML in the context of related and unrelated hematopoietic cell transplantation.
Bone Marrow Transplant , 48 , 390-395  (2013)
10.1038/bmt.2012.159
原著論文10
Kihara R, Kiyoi H, Naoe T,et al.
Comprehensive analysis of genetic alterations and their prognostic impacts in adult acute myeloid leukemia patients.
Leukemia , 28 (8) , 1586-1595  (2014)
10.1038/leu.2014.55.
原著論文11
Ono T,Kiyoi H, Naoe T,et al.
Expression of CD56 is an unfavorable prognostic factor for acute promyelocytic leukemia with higher initial white blood cell counts.
Cancer Sci , 105 (1) , 35-43  (2014)
10.1111/cas.12319.
原著論文12
Yasuda T,Kiyoi H, Naoe T, et al.
Leukemic evolution of donor-derived cells harboring IDH2 and DNMT3A mutations after allogeneic stem cell transplantation.
Leukemia , 28 (2) , 426-428  (2014)
10.1038/leu.2013.278
原著論文13
Fujita H,Miyazaki Y, Naoe T,et al.
Role of hematopoietic stem cell transplantation for relapsed acute promyelocytic leukemia: a retrospective analysis of JALSG-APL97.
Cancer Sci , 104 (10) , 1339-1345  (2013)
10.1111/cas.12230.
原著論文14
Yanada M,Kiyoi H, Naoe T,et al.
The demarcation between younger and older acute myeloid leukemia patients: a pooled analysis of 3 prospective studies.
Cancer , 119 (18) , 3326-3333  (2013)
10.1002/cncr.28212
原著論文15
Iriyama N, Miyazaki Y,Naoe T,et al.
CD56 expression is an independent prognostic factor for relapse in acute myeloid leukemia with t(8;21).
Leuk Res , 37 (9) , 1021-1026  (2013)
10.1016/j.leukres.2013.05.002.

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201314004Z