文献情報
文献番号
201312016A
報告書区分
総括
研究課題名
震災時の妊婦・褥婦の医療・保健的課題に関する研究
課題番号
H24-次世代-指定(復興)-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 州博(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 小笠原 敏浩(岩手県立大船渡病院)
- 藤森 敬也(福島県立医科大学 産婦人科学講座)
- 伊藤 潔(国立大学法人東北大学 災害科学国際研究所)
- 菅原 準一(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 佐藤 喜根子(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
- 星 和彦(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
宮城・岩手・福島では、津波による被害は共通点をもっているものの、福島県内の復興は、放射能の影響により全く手がつけられておらず、自ら今後の医療保健的対応は放射能による影響によって妊産婦のとった行動をもとに、種々の対策を考えなければならない。被災三県において、震災に遭われた妊産褥婦を同定し、アンケート調査を実施し、加えて実際の対面調査から、災害時の周産期医療・母子保健の問題点を明らかにする。また、震災後は行政のみならず医学界、看護師界等種々の団体で独自の復興努力を行っている。すなわち、被災者、それを支えた機関、両面から事態把握をする事が必要である。それらを網羅して医療介入の有効性を検証することから、大災害時に最も必要とされる医療及び保健的介入は何か、災害に晒されることにより生じる周産期疾病を防ぎ、広域に分散する産褥婦・新生児の健康を守る最適な対応策、更に不妊治療を含めた医療提供体制が震災後適切に行われているかを検証し、今後の母子保健・周産期医療のあり方について提言することを目的とする。
研究方法
東日本大震災による被災状況は、各県特有の問題点も有り、かつ震災以前の地域基盤となっている医療システム整備の進捗も異なっていたことから、本研究では各県での事業を個別に検証し、共有する事項については改めて議論する事とした。さらに平成24年度には医師、保健師、看護師、助産師、行政などの役割分担が不十分であった点、これらの職種と被災妊産褥婦との間での情報共有ができなかった点が問題点として浮き彫りになったので、「産科領域の災害時役割分担、情報共有のあり方検討Working Group」を設置し、関連学会の災害時の対応の評価とレビューを行った後、行政、助産師会、医師などの違う立場から議論を行った。また、事業の一般への周知とパブリックオピニオンを得るために市民フォーラム(岩手県遠野市にて2回、宮城県石巻市にて1回)を開催した。
結果と考察
1.被災状況と母子・保健医療への影響として、東日本大震災発生時、宮城県内に居住していた産褥早期の褥婦と妊婦を対象として調査を行った。救急搬送については宮城県、岩手県について調査。
2.妊産褥婦と父親、医療従事者の精神的負荷について調査実施。直接インタビューと市民フォーラムから意見を聴取し、災害フェーズごとの不安要因を明らかにした。
3.被災における母子健康手帳の役割の重要性を調べ、バックアップ体制を構築することを確認し、大震災におけるBusiness Continuity Planningの必要性を認めた。
4.福島県における放射能被害と妊娠成立について調査実施。平成23年10月から12月では震災前に比べ16%減少、平成24年に入り若干の回復傾向が見られた。不妊治療への影響は、平成24年度は全体的に治療数が増加。3県ともに人口は減少しているが、平成24年においては不妊治療の受療行動は活発になった。(3)災害時の危機回避対応方法として、ガラス化法の有用性を確認。
5.子宮頸がん検診の受診者数は、震災後の夏まで前年比で70-80%減少し、対前年比で約90%にまで回復した。
2.妊産褥婦と父親、医療従事者の精神的負荷について調査実施。直接インタビューと市民フォーラムから意見を聴取し、災害フェーズごとの不安要因を明らかにした。
3.被災における母子健康手帳の役割の重要性を調べ、バックアップ体制を構築することを確認し、大震災におけるBusiness Continuity Planningの必要性を認めた。
4.福島県における放射能被害と妊娠成立について調査実施。平成23年10月から12月では震災前に比べ16%減少、平成24年に入り若干の回復傾向が見られた。不妊治療への影響は、平成24年度は全体的に治療数が増加。3県ともに人口は減少しているが、平成24年においては不妊治療の受療行動は活発になった。(3)災害時の危機回避対応方法として、ガラス化法の有用性を確認。
5.子宮頸がん検診の受診者数は、震災後の夏まで前年比で70-80%減少し、対前年比で約90%にまで回復した。
結論
本年度の調査で東日本大震災における妊産褥婦の動向調査が医療機関の協力の下に行われた。さらに、妊娠成立に向けた動向、健診行動の変化についても調査を行った。その結果を踏まえて被災三県においてその方策は異なるものの医療機関、行政が必死の対応をして命を守る取組みが行われていた。特に、家族はもちろんの事、妊産褥婦を取り巻く地域のコミュニティの支援が特徴的である。妊産褥婦、子育てに対する支援は長期的な展望に立って策定されなければならない。今後、現在行われている地域に根ざした民間での支援と行政事業とのすりあわせを密接にする事により、被災地が子供を産み育てる環境を取り戻すような仕組み作りが肝要である。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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