文献情報
文献番号
201312001A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)および乳幼児突発性危急事態(ALTE)の病態解明および予防法開発に向けた複数領域専門家による統合的研究
課題番号
H23-次世代-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
戸苅 創(公立大学法人 名古屋市立大学)
研究分担者(所属機関)
- 高嶋 幸男(国際医療福祉大学大学院)
- 市川 光太郎(北九州市立八幡病院)
- 平野 慎也(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター)
- 横田 俊平(横浜市立大学大学院 医学研究科)
- 中川 聡(独立行政法人国立成育医療研究センター)
- 加藤 稲子(埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター)
- 山口 清次(島根大学 医学部)
- 成田 正明(国立大学法人 三重大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
SIDSおよびALTEの発症率軽減を目指して、睡眠呼吸生理学的検討、神経病理組織学的検討、SIDSとALTEとの関連性、リスク因子の検討、標準化された診断基準に基づく診断方法を確立し、普及浸透させることを目的としている。
研究方法
わが国特有の問題である寝かせ方を巡る問題点について、オーストラリア・ニュージーランドのSIDS専門家を対象にSIDS予防キャンペーンの実態に関するインタビュー調査およびグループ討論を行った。またわが国の保育施設、乳児健診に来院した母親を対象として、北九州近郊都市において寝かせ方に関する意識調査を行った。ALTEの新定義に該当する症例について発症状況、発症因子についての検討を行った。SIDSの病態については、胎内感染や喫煙が発達過程に影響を及ぼす因子について、覚醒反応と自律神経調節との関連について検討した。SIDS・ALTEの鑑別診断に関してタンデムマスあるいはMetabolic autopsyによる代謝性疾患との鑑別について検討を行った。社会的啓発の重要性については両親学級参加者に対するアンケート調査を行いSIDS認知度について検討した。組織バンク構築に関して、大阪府監察医事務所での倫理委員会設置および米国での現状について調査した。
結果と考察
オーストラリアでは「Safe Sleeping」として、仰向けに寝かせること、頭と顔に物が被らないようにすること、出生の前も後も、禁煙の環境にすること、赤ちゃんは安全なベビーベッドに寝かせ、両親と同室にすること、母乳で育てること、の6項目の事項を守るよう提言していた。
保育園では午睡チェックはほぼ全施設で行われ、15分毎のチェックが多いが、5分毎、10分毎の施設も認められた。母親への調査からは睡眠体位は寝かせる時は必ず仰向け寝と答えたのは67%で、うつぶせ寝を見つけたら仰向けに体位変換するが60%弱に認められた。
新定義に該当するALTE 112例の退院時診断としては、胃食道逆流や気道感染症が多かった。症状を反復したのは19例(17%)で、反復例の約40%で感冒症状を呈していた。
睡眠ポリグラフによる心拍変動解析から、自律神経系調節の異常と覚醒反応異常との関連が示唆された。動物モデル実験からは、胎内ウイルス感染がSIDSの危険因子となる可能性が検討された。
鑑別疾患としてSIDS 167例、ALTE 196例のうち先天代謝異常と診断した症例はSIDSで3例、ALTEで8例であった。病理組織学的検討からミトコンドリア病に類似する微小な脂肪変性所見を認めた症例があった。
組織バンクについては、米国NICHD に関連するThe SUID Tissue Project関係者との情報交換を行い、倫理的・法的問題を含めて検討した。
両親のSIDSに対する社会的認知度については、テレビ、インターネットが主な情報源となっていることが判明した。
保育園では午睡チェックはほぼ全施設で行われ、15分毎のチェックが多いが、5分毎、10分毎の施設も認められた。母親への調査からは睡眠体位は寝かせる時は必ず仰向け寝と答えたのは67%で、うつぶせ寝を見つけたら仰向けに体位変換するが60%弱に認められた。
新定義に該当するALTE 112例の退院時診断としては、胃食道逆流や気道感染症が多かった。症状を反復したのは19例(17%)で、反復例の約40%で感冒症状を呈していた。
睡眠ポリグラフによる心拍変動解析から、自律神経系調節の異常と覚醒反応異常との関連が示唆された。動物モデル実験からは、胎内ウイルス感染がSIDSの危険因子となる可能性が検討された。
鑑別疾患としてSIDS 167例、ALTE 196例のうち先天代謝異常と診断した症例はSIDSで3例、ALTEで8例であった。病理組織学的検討からミトコンドリア病に類似する微小な脂肪変性所見を認めた症例があった。
組織バンクについては、米国NICHD に関連するThe SUID Tissue Project関係者との情報交換を行い、倫理的・法的問題を含めて検討した。
両親のSIDSに対する社会的認知度については、テレビ、インターネットが主な情報源となっていることが判明した。
結論
米国と豪州・ニュージーランドでは、我が国で発生している窒息裁判あるいは体位裁判は極めて希ににしか発生していない。その観点で改めてキャンペーンを見ると、これらの国ではSIDSの予防だけでなく窒息事故を含んだ全ての乳幼児の睡眠中の死亡を防ぐキャンペーンにシフトしてきた理由が理解される。我が国において行った保育施設での午睡環境の現状調査、および家庭における睡眠環境における母親の意識調査をさらに進めることを含め、我が国の特殊な事情(窒息裁判、体位裁判の存在)を考慮して、我が国の全ての国民が等しく受け入れることが出来る、適切な対策を講じる必要があると考えられた。
新定義に基づいたALTE症例について、今回の検討から主要な原因として胃食道逆流や気道感染症が多いことが判明した。今後はALTE発症時の鑑別診断の方法等について検討していく必要がある。
SIDS発症には自律神経系、セロトニン神経系の関与が示唆されているが、自律神経系異常とSIDS発症リスクとの関連、胎児環境の検討から、発症予測・リスク予測の可能性が示唆された。
鑑別診断については、SIDSあるいはALTEと診断される中に代謝疾患が関与している症例があることから、SIDS/ALTE発症例での検討から正確な診断をめざすとともに、早期発見および予防対策のために健康新生児でのスクリーニング体制を整えていく必要性が示唆された。
SIDSの予防・早期発見には適切な保育環境が重要である。今回の検討から両親ともに対する有効な啓発方法を考慮する必要があると考えられた。
我が国での組織バンク構築には米国の一元化されたシステムも参考にして登録システムなどと合わせて考えていく必要があると思われた。
SIDSを巡る問題には複数の因子の関与が示唆されているため、今後も複数領域専門家による各分野からのアプローチが必要と思われた。
新定義に基づいたALTE症例について、今回の検討から主要な原因として胃食道逆流や気道感染症が多いことが判明した。今後はALTE発症時の鑑別診断の方法等について検討していく必要がある。
SIDS発症には自律神経系、セロトニン神経系の関与が示唆されているが、自律神経系異常とSIDS発症リスクとの関連、胎児環境の検討から、発症予測・リスク予測の可能性が示唆された。
鑑別診断については、SIDSあるいはALTEと診断される中に代謝疾患が関与している症例があることから、SIDS/ALTE発症例での検討から正確な診断をめざすとともに、早期発見および予防対策のために健康新生児でのスクリーニング体制を整えていく必要性が示唆された。
SIDSの予防・早期発見には適切な保育環境が重要である。今回の検討から両親ともに対する有効な啓発方法を考慮する必要があると考えられた。
我が国での組織バンク構築には米国の一元化されたシステムも参考にして登録システムなどと合わせて考えていく必要があると思われた。
SIDSを巡る問題には複数の因子の関与が示唆されているため、今後も複数領域専門家による各分野からのアプローチが必要と思われた。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
-